第36話キクイタダキその2

 

 遅くなりましたが、キクイタダキの顔を正面から見ると、まず大きな黒い目、その周りにアイマスクのような形の白い部分があり、嘴は見え辛いもののその両端からは顎線と呼ばれる黒い線が入っています。そして緑の頭にちょっとだけ黄色があるのです。


「可愛い目の、にわかせんべい(福岡の銘菓です)にへの字口」


なのでユーモラスで可愛く見えます。



さて昨日家に帰ると主人が


「二時間待ったのに・・・」


と悔し気な一言を発しました。しかし今年初確認のツグミも撮っていたので、私は満足でした。

そして今日、同じように私もキクイタダキは空振りでしたが、エナガ、シジュウカラ、コゲラ、メジロ、ヤマガラという、冬になると種類の垣根を超えた集団を作る鳥たち、混群に出会うことができました。

エナガもとても小さくてかわいい鳥です。しかもキクイタダキと真反対で目がとても小さい、本当に「目が点」のようです。体の大きさはキクイタダキと変わらないか、それより小さいようにも見えるのですが、尻尾が長く、個体差もかなりあるために、最小の鳥の仲間入りは出来ないようです。

彼らはある程度止まってはくれるのですが、枝の向こう側だとピントが合わず、撮ったものをこの後何枚も消さなければならないでしょう。


 私はキクイタダキ単独の群れしか見たことが無いのですが、彼らがこの「混群」にも混ざることがあるそうです。またキクイタダキはヨーロッパまで広く分布しているために、「渡ってくる冬鳥」という人もいます。ただこれも、誰かが足環や探知機を付けたわけではないので良くはわかっていないのです。

私の住んでいる所では、夏の前まで見かけます。高い松の木の上の方で動いているのを、本当に証拠写真として何度か撮りました。


 実はキクイタダキは、私がバードウオッチングを始めてどうしても「見て見たい」と思った鳥でした。珍しい鳥ではないと本に書いてあるため、主人と一緒に探しましたが、

「今年はそんなにいないね」という先輩たちの言葉に、落胆するしかありませんでした。

しかし、公園の大きな松の上の方で小さな鳥が動いているのを、珍しく私が見つけ主人に


「あれ、違うのかな? 」

「メジロやろう」

「メジロよりも小さいみたいだけど」

「上の方におるから小さく見えるんやろう、それにあんな所やったら真っ黒にしか映らんし」

「そうね」


で、諦めるべきではなかったのです。

そう、この松こそが「キクイタダキのよくいる所」だったのです。


 昔はまつむしり、とか、まつむしと呼ばれていたこともあったようです。主人が見た光景を、昔の人はそのままキクイタダキに名付けたのでしょう。平安時代頃までは、まだこの美しい名前ではなかったようです。

またヨーロッパでミソサザイが「鳥の王」になる話があります。日本の昔話の

「十二支のネズミ」のような事をミソサザイがするというものですが、これがキクイタダキの間違いではないのか、という説も存在します。

キクイタダキは王冠をかぶった小さな鳥、ミソサザイはちょっと地味目で(実際に見るととても綺麗です)極小なのに大きな鳴き声の鳥。

今、年の納めの九州場所では小兵力士たちが奮闘しています。

どの世界でも、体の大きなものを小さなものが打ち負かすのは、痛快な事なのでしょう。

 

それともう一つ、今日撮影をしてみてわかりました。


「ヤマガラの真正面も可愛い! 」


ジョウビタキも今年はたくさん来ているようです、もしかしたら寒い冬になるのかもしれません。



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