第30話相性の問題

 

 今日は久々に暑い一日でした、その上、海ですからまた一段と日差しが強烈に感じました。


「トウネン、トウネン、メダイチドリ」


と現地に着くまで楽しみでしたが、いつもこの海辺で一番最初に行く、河口の岩場をまずはご挨拶に覗いてみることにしました。


「あれはイソシギか・・・」


留鳥のイソシギ君がお出迎えですが、岩場に小さな鳥が見えました。


「トウネンやないか? 」


「え! ここで! 」


トウネンというのは小型のシギで、スズメより二回りほど大きいでしょうか、去年主人は撮っているのですが、私は初めてです。


「ここで会えるなんて! 」と岸から離れた岩場で遠かったのですけれど、十分でした。


「とにかく浜辺に行こうか」


と主人の言葉に従い、ウキウキした気分でついて行きました。


が、結果は去年と全く同じ。


海辺の砂浜に、一羽の鳥もいないのです。彼らの好物であるカニはたくさんいるのに、遠くで私たちと同じバードウオッチヤーも見えるのに・・・


「どうもお前と来ると、海は空振る」


主人の結論とともに、暑いので浜辺を早々に後にしました。

そしていつものように、海辺の整備された遊歩道を行くと、途中に小山があって中に神社があります。遠くからそこを見ていると


「タカ柱が立ってるね」


トビがここにたくさんいて、旋回しているのはよく見るのですが、どうも動きが違う鳥が混じっています。双眼鏡で確認すると


「一番上のやつは違う! お腹が白いけどミサゴじゃない! 」


「あ! ほんとだ! でもここからじゃ遠すぎる、あそこまで行こう! ハイタカかもしれない」


しかしながら、近づいた時にはもうトビ君たちしかいませんでした。


「私は海と相性が悪すぎる・・・」


落ち込んで神社の階段下にいると、「ギー」と聞きなれた鳴き声がしました。

コゲラ、小さなキツツキです。

英語ではジャパニーズピグミーウッドペッカー「日本の小さなキツツキ」でしょうか、ほぼ日本全国で姿を見ることができます。全体が白黒で、目がクリっとして可愛い鳥です。


「ああ、そう言えばあんまりあなたたちを撮ってなかったね」


と私が撮り始めると


「あ! 違うのが来た! 」と主人が叫びました。


コゲラはキツツキですから、枝をつつきながら移動します。しかし葉っぱの中を隠れるように素早く動く鳥がいます。しかもどうも薄緑色・・・


「ムシクイの仲間だ! 」


ウグイス科に属する数種類のうちの一つのようです。


綺麗なオレンジ色の嘴と羽の薄緑色は、海辺で見たせいか、とてもきれいで、まるでその色の透明な飴を連想させました。


「早い! 早い! 」


もし撮ることができれば、私の新しいコレクションになるはずなのですが、FZをほとんど使ったことのない私には、そう簡単にはいくはずもありませんでした。






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