第28話好きな写真


鳥の季節がやってきました。

今、海沿いではシギ、チドリの仲間が日本を休憩場所にしています。もっと後になれば日本で越冬するものがやってきますが、今の時期しか見られないものがあるので、今度の休みには海に行く予定です。


去年の夏、主人は「ダイゼン」という鳥を海辺の岩場で撮りました。ダイゼンが横向きで目をぱっちり開けて、後ろでは波しぶき。

しかもその日は天気が良く、きれいに映っていました。ダイゼンの夏羽は背中が黒、お腹が白、海の色にとても生えるのです。これが冬になると茶色味を帯びてしまうから本当に不思議です。一週間後私も見に行きましたが、もう飛び去った後の様でした。


「これコンテストに出したら? 」

「嫌、俺コンクールは嫌い」

「どうして、格好いいじゃない」

「嫌」


 というのは半年に一度ぐらいで交わされる我が家の会話です。私は芸術性がないのか、なかなか上手く撮れませんが、そこは男の主人、

「もっといい写真を」といつも考えているようです。

五月のコマドリフィーバーの時にも、ある先輩バードウオッチヤーがおっしゃっていました。


「確かにあの場所は近寄っては来るけれど、風景が味気ない」


人が作った階段の上では、その方の美意識にはそぐわなかったのでしょう。

「自然の中の鳥」それこそが確かに美しいものであるとは思います。

しかしこれがなかなか上手くいかない。先日海辺で主人が撮った写真も、たくさんのプラスチックごみにあふれていました。

「海外からの漂着物」とも言われますが、質の良い透明なプラスチックは、どう見ても日本の物です。本当に心が痛みます。

 しかしその中を、小さな鳥たちはちょこちょこ歩きながら砂浜をつついています。


「これ、これよ、なんやと思う? 」


「え! 見たことない、明らかに目が大きいよね」

足の長い薄茶色の鳥、嘴が少し太めで長く、他の鳥よりも目だけではなく、体も大きいのです。


鳥の判別は難しいのですが、シギ、チドリ類はまたことのほか難しいと言われています。ほんの小さな違い、しかしそれがしっかりと種類を分けています。


「今日はこれを調べる日やな」


という休みの主人の言葉を聞いて、私は出社しました。



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