第26話カイツブリの変化(へんげ)
去年の梅雨前、近くの公園の池にカイツブリが泳いでいました。カイツブリは日本全国の池などにいる、とても小さな鴨型の水鳥です
「あそこ巣がある、卵もあるみたい」
「え? 本当か? 」いぶかる主人に
こればっかりは最大160倍になるサザビーの力で私が確認しました。池の上にこんもりと盛られた巣の上に、まだら模様の小さな卵が5,6個あるようでした。
「ズーっと温めているわけではないんだね」
巣から離れて食事をしている時間が割と長いので驚きました。
しかし、巣に入ると、体をフリフリと振って卵の上に優しく体を下ろしました。
「何日かしたらカイツブリの雛が見られる」と話していると、公園を散歩している方から
「去年もいたよ」と情報が入ってきました。
私たちはとても楽しみに待っていました。何故ならカイツブリの雛にはとても可愛い習性があるのです。親の背中に乗るというのか羽に隠れるというのか、そこから顔だけ出したりして、幼い頃は移動するらしいのです。
NHKの「ダーウィンが来た」でも特集がされていましたから、ご存じの方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、数日後「ゲリラ豪雨」がありました。しかもその池は「遊水地」なのです。そのために数年前から整備され、遊歩道もきれいに作られたばかりでした。
「駄目だろうね・・・・」
数日後主人が確認に行ったところ、巣自体がなかったそうです。
それでも主人はその池に足しげく通っていると
「また巣が出来ていた! 」と教えてくれました。
「本当、良かった。今度は上手く行くといいね」と私も次の休みに行こうと思っていたら、またです、短時間での凄い雨、嫌な気がしました。
「駄目や・・・」
主人の報告を聞いて、かわいそうで仕方ありませんでした。
それからは主人も諦めて、しばらくたってからの事です。
「おった! おった! 雛が羽に隠れた! 」
「本当! 」
そんなに大きな池ではないのですが、何せカイツブリ自体が小さいのでなかなか大きく撮れてはいませんでした。それから数日後二人で出かけました。
「大分大きくなっとるなあ」
鳥の成長は早いので、雛が大きくなりすぎて親が乗ろうとする子に
「重いでしょ! 」という感じで振り落としているようでした。それはそれでユーモラスで楽しいものでしたし、何よりカイツブリの雛は「可愛い」の一言です。
「可愛い!!! 」写真を撮りながら何度言ったかわかりません。
目が本当に「クリクリ」で、しかも縞模様が顔は横、首の後ろは縦、羽はまた横ととても複雑になっています。保護色なのでしょうが、親には縞の痕跡すらありません。
そしてまた親になると何故か「目が点」になってしまうのです。雛の真っ黒い目が小さくなって周りが白くなっていったように見えます。これも本当に不思議です。
カイツブリの雛が特別可愛く思えるのはこの「親との格差」なのかもしれません。
この親鳥が最初の巣の親かどうかまでは確かにわかりませんが、カイツブリも縄張り意識が強いそうなので、どちらかと言うとその可能性の方が高いのではと思います。だとすれば三度目でやっと成功したわけです。
ゲリラ豪雨は、生き物にも深刻な影響を落としているのだと痛感した出来事でした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます