第23話スナイパー!

 


 全国的にカルガモの雛が見られる季節、ツバメもひな鳥が飛べるようになり、二度目の巣作りも始まっているようです。

飛んでいるツバメが撮れると格好がいいなと思うのですが、何せ早すぎて「難しい」の一言です。風が強い日、向かい風に上手く乗れず、止まったようになっているツバメを「チャンス! 」と思ったのですが、それもサザビーでズームしているうちに飛んで行ってしまいました。結局疲れて地面で休んでいるひな鳥を撮りました。草の中ちゃんと隠れるようにいて、お母さんお父さんの言いつけを守っている本当に賢い子たちです。


 基本的に鳥の多くはこうやって隠れています。私たちが良く名前を知っている鳥は「あまり隠れない鳥」ということができるでしょう。電線に留まるハト、スズメ、ツバメ、カラス。川の中立っているサギ。

その真反対側にいる鳥の中で、私も好きな鳥がいます。


「あ! やっぱりおった! 映っとった! 」


カメラで拡大して見た時や、家に帰ってパソコンでやっと発見できる場合が多い


「タシギ」という鳥です。


 この名前もバードウオッチングをするようになって聞きました。

そしてその姿が私のツボにはまったのか、とてもユーモラスなのです。体はハトよりも一回り小さいでしょうか、足は長く、全体がスズメの羽よりより薄いグラデーション。そのため、草むら、田んぼの畔などに入り込むと見つけるのは困難です。


ですが何よりタシギの仲間は何故かこうなのです、彼らの長い嘴はまるで誰かから


「引っ張られてできた」ように見えるのです。


もともと短かかった嘴を、神様が無理に引っ張ったという話でも作ったら面白いかなと考えているくらい、不思議です。

そのかわいらしいタシギなのですが英名がスナイプ、米語ではコモンスナイプと呼びます。

そして私も最近知ったのですが

「スナイパー」は元々タシギを猟銃で狙えるほどの良い腕を持った人のことだったらしいのです。


 昔の猟銃は今のもののように精度も良くなければ、正確な照準器が付いているわけではないですし、「タシギは早く複雑に飛ぶため」ということがその大きな理由なのだそうです。しかしそれより何より、まず撃つにしても

「的が小さい」です。小さいため飛ぶ速度も速く、カモ類と比べたら、難しさは想像がつきます。「スナイパー」は誇りと尊敬を込めた言葉だったのです。


では何故「タシギ」なのか。それは「美味しい」からなのだそうです。この点では海外、フランス料理ではタシギの仲間「ヤマシギ」が高級食材として乱獲されたため、現在禁猟になっています。日本ではタシギは狩猟を許された鳥です。


 ですが「複雑に飛ぶ」といわれて、考えてみました。そう言えば他のシギは水路などにいることもあり、その水路に沿ってまっすぐ飛びます。ですがタシギは今まで「自然の中にいる」ものしか見たことがありません。田んぼや、ヨシが生い茂る池。今年やっと満足のいくタシギを撮ることができたのも、まだ植えられてすぐの田んぼでした。


「近い! 食べてるから撮れるね! 」


との喜びは、つかの間過ぎる数分間で終わり、低く飛び、行ってしまいました。低く飛ぶためすぐに視界から消えてしまいます。そのことも猟を難しくしているのかもしれません。



 今は彼らもここを去りました。ですが彼らの事、スナイパーの真実を知ってからは、当然のようにゴルゴ13と一緒に思い浮かべてしまいます。


「劇画のデューク東郷とタシギ」


私にとって永遠に「クスッ」と笑える事実です。







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