第21話花鳥風月の続き


「鳥が判ったら面白いだろうね」


 実は結婚した当初から二人で話してはいました。しかし私は眼鏡がなくては生活ができないほどですし、やはり子供がいると時間的な余裕と言うのはどうしてもなくなってしまいます。本当に一段落ついた後の趣味の典型なのかもしれません。


 主人が始めた当初、私は双眼鏡だけを持ってついて行っていました。このタイプのバードウォッチング夫婦もかなりいらっしゃいます。奥様は見る専門なので、旦那様の愛情の現れなのか、しっかりとした良い双眼鏡をお持ちです。しかし我が家の場合は私もカメラを持っているので、主人はほとんどFZだけを首に下げ、私は両方を下げる羽目になっています。仕方がありません、やはり男性の方が動くものには敏感なようで「あそこ双眼鏡で見て! 」ほぼ確認係です。

しかし双眼鏡で見る鳥は、また美しいものです。

 

 カメラがなくても、バードウォッチングは双眼鏡さえあれば楽しめる趣味なので、実際そうされている方も見かけます。前回の花鳥風月の続きで思うのは、良い趣味の多くは「お金をかけなくても遊べる」という特徴なのでしょう。

例えば「俳句」などは元手が必要な趣味ではありません。

また最初に元手が必要でも、それを長期に渡って楽しめるようなものであれば

「散財してしまう」か「あぶく銭は身につかない」というギャンブルへの没頭よりは何倍も良いことです。きっと昔から人々はそう考えてきたのでしょう。


 バードウォッチングを始めた頃、たまたま博物館周辺の建物に年配の男性たちがたくさん集まっていました。

「何だろうね」と入り口は全面ガラス張りなので近くまで行ってみると、それは

「帆船模型」の愛好家の方たちでした。

「おいで! おいで! 」

招き入れられ、中に並んでいたのはそれは精巧に作られた大型船ばかりでした。

「作品展が今度あるから」とそのための集まりだったようで、本当に近くで見ると素晴らしく、楽しい時間でした。


「これ・・・いくらぐらい掛るんですか? 」

「キットだったら三万から五万かな、でも作り上げるのに三年ぐらいかかるから、一年一万と考えたら安いもんだよ、」

「そうですよね、ゴルフの一回分ですよね」

年代的にもゴルフを仕事でも経験された方たちでしょうから、確かにそうお金のかからない趣味です。

「いやーこの趣味を始めて、帆船の帆にアイロンをかけるようになってね。使うようになったら結構上達して、女房が嫌がる」笑い話も聞けました。


「あれ、この欄干部分は・・・」と尋ねると

「そうそう、爪楊枝を使ってる」キットを使わない、皆さんから

「あの人は凄いよ」といわれる方もいらっしゃいました。また

「すごいロープの数ですよね、これを操っていたんですかね」

「いやいや、本当はもっと多いんだけど、これ以上多くすると、今度は船が見えなくなるから」昔の船乗りを尊敬する一方、内心「ガンプラなら作ったことがあります」など口が裂けても言えないと我ながら笑っていました。


 この世の中には本当にいろいろな趣味があります。確かにあまりに没頭しすぎるとすべての趣味は「危険」なのでしょうから、どこかにそのことを留めつつ楽しもうと思います。


次は双眼鏡のお話を。

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