第20話花鳥風月の意味

 

 花鳥風月に凝りだしたら「年を取った証拠」といわれています。実際バードウオッチヤーのほとんどは年配の方ですし、私たちより若い人たちは「数えられる」人数です。

始めたばかりの頃、いかにもベテランの方から

「いいねえ、おたくたちは二人で・・・うちの女房は誘っても・・」

と言われましたが、その方の撮った写真はプロの様です。

私は女ですから、その方の奥様の様子を想像することは難しいことではありません。きっと女子会で


「いいわね、あなたの御主人はいい趣味をお持ちで」

「そんなことないわよ、毎日出かけて、カメラにお金をかけてばかりで困るわ。でもまあ「亭主元気で留守がいい」かしらね」

という会話がされているでしょう。また色々な所で飾ってある写真を見ながら

「これだったら主人の方が上手だわ」

と内心思っているにも違いありません。


また「流し撮りぐらいだったら出来るけど」という別の男性は

「俺はこの趣味がなかったら、退職後どうなっとったかと思う」

とおっしゃっていました。家族のために働いて、いざ家にずっといたら「何をしてよいかわからない」また奥様が「夫原病」という現代ならではの病気にかかる可能性もあります。

昔は双眼鏡もカメラもない時代ですから、「籠の鳥を愛でる」ことになってしまったのかもしれませんが、今は違います。そしてそれに加えて、この趣味にハマってしまうもう一つの大きな理由があると思うのです。


 良い趣味と真逆と言われているもので代表的なのはギャンブルでしょう。

「競馬が趣味です」と言う人は不思議といません、これが

「競馬が好きです」ならばいます。何故なのでしょうか。やはりそれはあまりにも没頭してしまうと、最終的に破滅的な結果になることは昔も今も共通だからでしょう。

それはわかっていてもギャンブルも太古の昔から存在し続けています。



まだこの趣味を始める前主人に言ったことがあります。

「本当にギャンブルをしないね」

「釣りもギャンブルのようなもん」


確かにそうだと、私はその時納得しました。釣れるか釣れないかは運によるところが多く「どうなるかわからないどきどき感」は狩猟採集時代から、人の心に刻み込まれたものなのかもしれません。しかしそれには徐々に経験も、技術も積み重なっていく喜びもあります。

今日も釣りに行った主人は、海ではないので、釣った魚はリリース。今まで失くしたルアーの合計金額は時々夫婦げんかの種にはなりますが、まあ、釣れれば上機嫌で帰って来るので扱いやすくはなります。


バードウォッチングもそうなのでしょう。


「撮る」は「採る」であり、「獲る」なのです。

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