第15話日本最速の鳥
スピードガンを持って私が測れるはずもないので、この点は調べた方の情報を使わせていただくことにします。時速300キロを超えるスピードで飛ぶ鳥、これは急速落下時という条件ですが、その王者は、ほぼ日本全域に生息している「ハヤブサ」です。
皆さんも名前はご存知でしょう。この鳥も多くの人が見たことがないのにもかかわらず、名前が知れ渡っているのは昔は身近な存在だったからかもしれません。しかし残念ながら現在は環境省のレッドリストにも名前が載っていて、絶滅の恐れが懸念される鳥の一種です。
冬はよく彼らの姿を見たものです。なわばりにしている鉄塔に止まって、そこから狩りに出かけます。そしてあっという間にハトを取ってきて、鉄塔の上でお食事です。上からハトの羽がふわふわと、時々クルクルと舞い落ちるのを、ハトにはかわいそうなのですが、これまた撮影してしまいました。
しかし、ここ数か月彼らを見ていません、何故ならハヤブサは三月ごろに海辺の断崖などで子育てをします。抱卵、巣立ちまでは数か月ほどかかるそうで、今は忙しい時期なのです。でもまた帰って来るとは思います、冬になれば連続で見ることもできるでしょう。
今でこそそんな感じですが、バードウオッチングを始めた頃、私はハヤブサが見たくてたまりませんでした。「鉄塔の上にいることが多い」というので、探しましたが見当たらず、結局この趣味初の暑い時期がやってきました。
「暑いなあ・・・いないなあ・・・」
冬からバードウオッチングを始めた私にとって、木々の生い茂る夏はとても撮影が難しく感じられました。しかも北部九州は夏鳥の通過地点になることが多く、鳥の影も急に少なくなるのです。
それを知ってはいたものの、もう夢中だった私は(今でもですが)暑さもなんのその、いつもの土手にやってきました。そこから中洲が良く見えて、魚を食べる鷹「ミサゴ」がしばしばいるのです。しかしその日は何も見えず、諦めていた時でした。
中洲に物凄い速さで突っ込んでくるものが見えました。
「ハヤブサだ!!! 」
一度も見たことも、双眼鏡で見たわけでもないのにそう叫びました。
何故なら、ほぼ無風状態のその日、今まで見た大型のどんな鳥よりも速かったからです。はやい翼が転じて「ハヤブサ」になったと言われたそのことを、まざまざと見せつけられる姿でした。
そして早速カメラと双眼鏡で見ましたが、何をするのかと思いきや
バシャバシャと水浴びを始めました。
「初めて撮るハヤブサが水浴びか・・・」
人生の妙とはこの事かな、と思いました。そして実は目の悪い私でも、明るい日差しのなか肉眼で確認できたのです。
「すごい足! 黄色い靴下をはいているみたい! 」
これこそ猛禽の、獲物をとる彼らの象徴でした。
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