幼児退行の銀!!

「これは……何なの!?」

 学校に登校して来た保呂草風華ほろくさふうかは、同級生や先輩達と共に変わり果てた校舎に愕然としていた。

 昨日の夜確かに爆発音が聞こえていたが、校舎が壊れたとか、休校だとかの連絡が回ってこなかった。

 その為、全校生徒は『取り敢えず』学校に来てみたのだが……

「イナゴに浸食されている?」

 そうなのだ。倉倉高校は大量のイナゴに埋め尽くされ、露出している部分が無かった。

 校庭も、中庭にも、イナゴに埋め尽くされて足の踏み場もなかったのだ!!

「私の……学校が……」

 ワナワナと拳に力を込めて震える風華。

 保呂草 風華は倉倉高校の副生徒会長で、学校を誰よりも愛している。その愛する学校が破壊され、尚且つイナゴ塗れとなっているのだ!!

「許せない!!」

 風華は周りの制止を振り切って校内に入って行った。

 一歩踏み出す毎に『プチチッ』と、イナゴが潰れる音がするも、一目散に校内を目指す。

「マズいよ保呂草さん!綺麗な脚がイナゴまみれになっているよ!」

 細身のスレンダーな身体の風華に纏わり付くイナゴは、スラリと伸びた脚にも纏わり付く。

「ああっ!保呂草さんの綺麗な髪にも!」

 肩まで伸びたストレートの髪にイナゴが跳ね回っている。それでも脚は止まらない。

 両サイドから揉み上げ付近に垂れ下がっている三つ編みをピョンピョン揺らしながら、校内に入った。

 校内に入った風華は、鬱陶しそうにイナゴを手で払った。

 校内にもかなりの数のイナゴが入っていたが、校舎や校庭程ではない。

 一目散に自分のクラスに向かう。

 キリッと引き締まった目が真剣さを増しているように見える。

「間に合えばいいけど……」

 息を切らせながら、風華はクラスのドアを開けた。

 教室もイナゴまみれになっていた。

「どきなさい!!」

 風華は自分の机に山盛りになっているイナゴを手で払った。

「やっぱり無くなってる…………!!」

 その場にへたり込む風華。目には涙をいっぱい溜めていた。

「うわあああああ~ん!!うわあああああ~ん!!」

 風華は大泣きしなら、半狂乱になりながら、机をひっくり返した。

「私のっ…お菓子達がっ……全部イナゴに食べられちゃったあぁぁぁあ~!!」

 ひっくり返した机から出て来たのは、沢山のスナック菓子が食い荒らされていた残骸が。何と、羊羹や柏餅の残骸まであった。

「うわあああああ!!わああああ!!うわあああああん!!」

 残骸を愛おしそうに抱き締めながら大泣きする。無くなった、いや、亡くなったお菓子に今生の別れを告げる号泣だった。涙と鼻水で美人さんが超台無しになるほどの号泣っぷりだった。

 正義感の強い生徒会副会長、スレンダー美人で学校の中でも沢山ファンがいる保呂草 風華は、泣く程食べ物(お菓子限定)が大好きな女の子だったのだ!!

「保呂草 風華!!泣いている暇などないぞ!!」

 不意に背後から話し掛けられ、ビクッとする風華。そして振り向く。

「学校内は大変危険な状態です!!生徒は直ぐに避難して下さい!!」

 さっきまで大泣きしていた風華だが、その凛々しい表情には涙の跡すら無い。涙も鼻水も一瞬にして渇いた。

「大したものだな保呂草 風華……お菓子が食われて大泣きしていたとは思えないぞ」

 イナゴの群を押しのけて現れたのは、大きなトカゲだった。

 イグアナよりも太い身体を揺さぶって、風華に近付く!!

「ひっ!!イグアナ!?」

 風華は後ずさった。無理も無い事だ。イグアナなんて、ペットショップか動物園でしか見る機会がない。日常で接する機会が皆無な存在なのだから!!

「イグアナではない。俺はエリマキトカゲの皇龍王こうりゅうおう!!ラフレシアンの従者だ!!」

 イグアナ、もとい、皇龍王はエリマキをバッと広げて立ち上がる!!さながら威嚇するかのように!!

「ラ、ラフレシアン?」

 やはり後退る風華。まず、なんでこいつは人語を話しているのか?なんで私を知っているのか?ラフレシアンって何?との疑問が先に立つ。

「そうだ!このイナゴの大量発生の元凶、カンキョハカーイを倒せる、唯一無二のヒロイン……それがラフレシアンだ!!」

 皇龍王は目をカッと開いて風華を見つめた。しかし、それが未知な生き物と接した風華に恐怖を与えた。

「きゃああああああああああああああ!!」

 風華は恐怖のあまりに皇龍王を蹴っ飛ばした。サッカーボールのように、全力で。

「ぐへっ!」

 バインと壁に激突する皇龍王。壁に張り付いた身体がピクピクと痙攣した。

「うわあああああん!!怖いよぉ!!イグアナ…いえ、エリマキトカゲが喋ったぁあああ!!!」

 猛ダッシュで教室から逃げ出す風華。だが、流石だった。パニックに陥ったこの状況下で、イグアナからエリマキトカゲに修正できるのだから。

「くおおぅ……ま、待て風華…五歳児のように泣くんじゃない~……」

 フラフラと風華を追う皇龍王だが、

「うわあああああん!!」

 風華は大泣きしながら逃げた。当たり前だった。未知の生物と遭遇した時、人間は五歳児じゃなくとも逃げるものなのだから!!

 そしていつしか一階の校舎外、園芸部のプレハブ部室の前に来ていた。

「ヒック!!ヒック!!…あれは……」

 すすり泣く風華の目に飛び込んで来たのは、イナゴの大群に囲まれながらも、朝ご飯と思しきチョココロネをモグモグと食べている、自分と同じように有名人の小鳥遊 常夏の姿だった。

「駄目!こんな危険な所に一人きりなんて!」

 さっきまで五歳児のように泣いていた風華は凛々しくチェンジし、園芸部の扉を開けるた。

「小鳥遊さん、避難しなさい!……って?」

 言葉に詰まる風華。

 何故ならば、常夏はデカいナメクジにもの凄く叱られている最中だったのだ!!

「常夏っ!!早くラフレシアンに変身してイナゴの群れを何とかしろよっ!!お前ヒロインだろ!!正義の為に戦えよ!!」

「うるさいなぁ…って、デカいナメクジっ!塩っ!塩っ!チーズビットの塩でいいか」

 鞄からチーズビットを取り出して亜羅漢にぶちまける常夏。

「…………最早わざとだろ常夏っ!!!」

 亜羅漢が怒る声よりも遥かに大きな声が園芸部に響いた!!

「チーズビットをぶちまけちゃいけませぇぇぇん!!!!!」

 びっくりして振り返る常夏と亜羅漢。

 生徒会副会長、保呂草 風華が、その美しい顔立ちを怒りに歪めながら、常夏を睨み付けていた!!

「え、え~っと……」

 指を差しながら誰だっけ?とか思った常夏。見た事はあるが、名前までは覚える気すらないのだ。

「生徒会副会長、保呂草 風華!お菓子を勿体ない事に使わないでください!」

 常夏のチーズビットをぶん取る風華。

 その時、表情が一瞬和らいだ。

 それを見逃さない常夏。

「食べたいの?」

 ギクッとなり、顔を背ける。耳まで真っ赤になっていた。

「これも食べる?」

 鞄からポッキーを取り前に出す。

 後ろからチラ見した風華は喉を鳴らした。

「マンゴーゼリーもあるよ」

「……いいの?」

 最早我慢の限界だった。顔が赤い?恥ずかしい?そんなもの、目の前のお菓子が食べられない苦痛に比べたら大した問題じゃない。

 アレだ、例えるのなら、お菓子が食べられないのは、死して地獄の苦行を行うと同じだが、恥ずかしいのはタンスの角に小指をぶつけた程度の痛みだ。まさに雲泥の差だろう。

「もっちろん」

 満面の笑みでお菓子を渡す常夏。全く惜しげもなく、全部風華に渡した。

「ありがとう~!えへへぇ~……」

 五歳児のように笑いながらお菓子を頬張る風華。さながら幼児退行のようだった。

 常夏は青汁をストローで吸いながら、満足そうに笑っていた。「なんか可愛いね。こぼさないようにね?」と、お姉さん的発言までしていた!!

「ゼェ、ゼェ、や、やっと追い付いたぞ風華~……!!五歳児みたいにお菓子に幸せを感じている場合じゃないんだ!!カンキョハカーイを倒さなければ、イナゴは無くならないんだよ!!」

 そう言って皇龍王は変身携帯を投げ渡すが、風華はキャッチする事はせず、屈んで躱した。

「そこはキャッチしろよっ!!」

 襟を広げて目をカッと剥く皇龍王。これは威嚇しているのだろうか?まったく迫力がないのだが。

「保呂草さんも訳の解らないヒロインになれって言われていたんだ~」

 青汁の空き缶を皇龍王にぶん投げる常夏。

「ぐわっ!!」

 空き缶は額にヒットし、皇龍王の顎は跳ね上がった。

「皇龍王!あいつがお前のラフレシアンか?」

「いてて…む、亜羅漢?プリシィ様から命が出て以来だな。じゃあこいつがお前の?」

 互いに顔を見合わせで目に涙を溜める。苦労が手に取るように解るのだ。

「え!?小鳥遊さんも変な生き物に、変なヒロインになれと言われていたの!?」

 普通に驚く風華だが、丁度その時、ズガアアアン!!と、屋上から破壊音が響いた!!

「な、何?今の音?」

「工事かな?こんな朝からご苦労様だよね」

 爆発音に驚く風華に対して、呑気に分析する常夏。二人とも性格がアレだが、やはり性質は違うようだ。

「カンキョハカーイだ!イナゴだけじゃなく、幹部が来たんだ!!」

 襟を広げて慌てふためきながらウロウロする皇龍王。せわしなくパタパタ歩いていた。

「よし…行くぞ常夏!!」

 常夏を促す亜羅漢。悪のカンキョハカーイの幹部が来たのだ。ラフレシアンの出番だから、多少張り切っている感じがする。

「え?何で?」

 対する常夏は全く関係ないと言う表情をしながらポカンとした。

「だからラフレシアンじゃなきゃカンキョハカーイは倒せないって言っただろ!!」

 ピョンピョン飛び跳ねる亜羅漢。昨日からずっとこの台詞を言っている様な気がする。

「だからか弱い女の子を戦わせようとするんじゃないって。イナゴは業者に頼んで駆除すればいいんだし、ね?風華ちゃん?」

 いきなり振られた風華は、困惑しながらも肯定した。

「え、ええ……そうね……」

 だが、揺れていた。基本的に正義感の強い風華は、少し迷っている。このまま他人に任せていいのか?私達の学校が壊されたのに?と。

「そうそう。業者に頼めば害虫なんてイチコロだし。昨日部室に隠していたかっぱえびせんの無念も晴れるってものよね~」

 コロコロ笑う常夏。しかし、風華の目つきが尋常じゃない程の怒りに満ちた!!

「……かっぱえびせん、イナゴにダメにされたの……?」

「そうだよ。まいっちゃうよね~。アハハハハハ」

「教室に隠していた私のお菓子もダメにされたのよね……!」

「あちゃ~。災難だよね。って?」

 風華は部室から飛び出し、屋上目掛けて駆けた。

「ふっ、風華っ!ま、待てっっ!」

 慌てて後を追う皇龍王。残された常夏はポカンとしていた。

「風華ちゃん、屋上に行ったのかな?」

 亜羅漢は風華が避けてそのまま床に転がっていた変身携帯を取り、常夏に渡した。

「保呂草 風華はあのままでは死んでしまう。常夏、お前だけが風華を助けられるのだ!」

 真剣な顔をして常夏を見つめる亜羅漢。宿命からは逃れる事は出来ないと、凛としていた。

「ふーん。まぁ、誰が死のうが私には関係ないかな?」

 この発言には流石に怒った亜羅漢。

「見損なったぞ常夏!友達を見捨てるのか!?仲間を、同士を見捨てるのか!!」

「友達って、今日初めて話したばかりだよ?仲間?同士?意識した事も無い人なんだけど」

 やはりキョトンとする常夏。唖然とする亜羅漢。

「でも、まぁ……」

 風華の変身携帯をマジマジ見ながら、

「風華ちゃんも、勝手に誤解されている所あるようだから、親近感はあるよね」

 常夏はやれやれと言った感じで椅子から立ち上がる!!

「ふはははは!!地球人共が絶望する様!!愉快愉快!!ハァッハッハッ!!」

 屋上でイナゴまみれになり高笑いしている緑色の顔の男。

 硬そうなヘルメットを被り、それに生えている触角が大きく揺れていた。笑い過ぎで。

 しかし、カッコつけているようだが、緑の全身タイツがキモ過ぎた。身体にぴっちりと張り付いているのだから。

 バン!と屋上のドアを開ける音を聞いて、そちらを振り返るイナゴール。

「おや?可愛いお客様だな?」

 嫌らしい笑みを浮かべながら、屋上に駆け込んだ風華を見る。

「はぁ、はぁ、あ、あなたがこのイナゴの群を……!!」

「いかにも。カンキョハカーイ、ガイチューン将軍が臣、このイナゴールの仕業だ!だったらどうするね?」

 歪んだ顔を風華に向けながら近付く。全身タイツでぴっちりなのだ。それが正面を向いたのだ。股間のふくらみも浮き彫りになっているのが見えるって事なのだ!!

「ひ!?こ、こんな変態にお菓子をダメにされたなんて……絶対に許さない!!」

 身構えながらも後退る風華。股間がピッタリから目を逸らさずに!!

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、ふ、風華!いかん!変身携帯を……ハッ!!」

 変身携帯?そう言えば、携帯みたいな物を投げられたような……

 風華が考えているその隙に、イナゴールは風華の長い髪を掴んだ。

「きゃあ!!」

 そのまま持ち上げられた風華は脚をバタつかせた。

「軽いな小娘!ハッハッハ!!」

「はっ、離してっ!!」

 抗うが、軽いと言われて満更でもなかった。女子の体重はなるべく軽い方が好ましい。自己申告は常にサバを読むのだ!!

「風華っ!くそっ!!変身携帯さえあれば……」

 嘆く皇龍王。最早絶体絶命だ。

「こら常夏っ!早く来いよっ!」

「走ったら疲れるでしょー。あ、ほらほら、間に合ったよナメクジさん」

「ウミウシだってば!」

 ピョンピョン飛び跳ねる亜羅漢と共に、常夏が駆け付けた!!

「もう一匹小娘が……」

 イナゴールは敵意の眼で常夏を睨み付ける。

「うわ何あの緑色のタイツ?キモッ!」

 常夏は手をブンブン振って牽制した。その時握っていた風華の変身携帯が手から滑り、偶然にも風華の手元に届いた!!

「奇跡が起きたぞ風華!!変身携帯の真ん中のボタンを押してチェンジ・ラフレシアンと叫ぶのだ!!」

 風華は皇龍王の言う通りに変身携帯のボタンを押す。

「チェンジ!ラフレシアン!!!」

「うおっっ!?」

 驚いて手を離したイナゴール。風華の身体に眩い光が纏わり付いたからだ。

 その光が晴れると、現れたのは、頭部にデカい銀色花を咲かせた風華。銀色の魔法少女のようなコスを着て、凄く短いスカートをヒラヒラさせながら、多少顔を伏せて立っていた!!

 まだ肌寒いというのに、半袖だったが、肘まで覆われている手袋によりギリギリ大丈夫のようだ!!

「なんだ貴様は!?あの小娘か!?」

「私………私は………」

 長い髪を跳ね上げるよう、顔を上げる風華。

「寒空に吹雪く雪の嵐!!冷たく厳しく気が引き締まる!!だけど!冷たさ通り越して痛くなるのが不快い!!ラフレシアン コールドウェイブ!!」

 髪を掻き分けながらイナゴールをバーン!と 睨み付ける!!

「ラフレシアン……だと?フラワーパークの伝説の戦士がなぜこの地球に……?」

「こ、これ何?うわっ、臭い!!」

 思わず鼻を摘む風華。

 その臭いがまさか自分から発せられているとは、まだ知らない。

「風華ちゃんも変身しちゃった!ねぇねぇ、私のも見て!」

 テンションが上がった常夏は、自ら変身携帯を取り出して変身した!!

「チェンジ!!ラフレシア―――ン!!」

 変身携帯を押して叫ぶ常夏。

「貴様もラフレシアンか!!くそっ、伝説の戦士が一気に二人もだと!?一体どうなっている!!」

 驚愕するイナゴール!!忘れがちだが、ラフレシアンは伝説なのだ。そんなにポンポン存在するヒロインではないのだ!!

 光が晴れて現れたのは、オレンジ色のラフレシアンだった。

「眩しく煌めく太陽!たぎる血潮に胸躍らせる!だけど!日射病で倒れる不安が不快っ!!美少女戦士!ラフレシアン エブリシングサマー!!」

 ガッツポーズを決める常夏。健康系美少女ヒロインはガッツポーズが良く似合うのだ!!「亜羅漢、あれがお前のラフレシアンか」

「そうだ。あれがエブリシングサマーだ!!」

 誇らし気に胸を張る亜羅漢。だが、皇龍王は怪訝な表情。

「ラフレシアンに必ず有る筈の臭気が全く無いのは何故だ……?」

 言われて亜羅漢は常夏の方を振り向く!

「そ、そんな!!」

 今まで常夏の適当さに振り回されて気が付かなかったが、確かにエブリシングサマーからは臭気が感じられなかったのだ!!

「そ、それは確かに気に掛かるが、エ、エブリシングサマー!!カンキョハカーイを倒せ!!」

 臭気がどうのこうのよりも眼前の敵!!

「行きましょうエブリシングサマー!!」

 風華はやる気満々で構える!!

「え?なんで私が?」

 常夏は、本当にキョトンと!!本当に全く関係ない顔をしながら首を傾げた!!

「な!ななななな!何を言っているエブリシングサマー!?」

「お前はコールドウェイブと同じラフレシアンだろうが!?」

「わ、私と一緒に戦ってくれるんじゃないのぉ!?」

 風華達は勿論、敵であるイナゴールすらも唖然とした!!

「き、貴様は俺を倒したいんじゃないのか!?」

「別に?害虫駆除は業者に頼めばいいし、あなたは警察とかが捕まえてくれたらいいと思っているけど?」

「じ、じゃあ何で変身したのよっ!!」

 手をバタバタさせて詰め寄る風華。ちょっとしたパニックになっているようだ。

「頼まれたから変身したんだよ?」

 その場に居た一同が、凍ったように固まった。

「……じゃあお前は頼まれたら何でもやるのかよっ!!」

 襟巻きをバッと広げる皇龍王。その姿は責めているようにも見える。実際軽く苛々しているようだ。

「あのね、やってもいいな、って思う事ならするよ?」

 常夏の瞳には全く迷いは無かった。裏を返せば、やりたくない事は絶対やらないという事だ!!

「そう……解ったわ!!」

 ただ変身しに来ただけの常夏と違い、風華はイナゴールを許せないからここに来た。

 常夏が来なければ、変身はできなかったが、そこは取り敢えず置いておく。

 風華はイナゴールを睨み付けて指を差す!!

「あなたは私の大事な大事なお菓子を駄目にした!!絶対あなたを許せない!!」

「てっきり地球人に仇成す存在だから倒すとか言うと思ったが…結局貴様もオレンジのラフレシアンと同じか!!」

 高笑いするイナゴール!!嘲笑っているかの如く!!

「黙りなさい!!」

 風華は敵意剥き出しで、イナゴールに向かって突っ込んで行く!!

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