第179話:卒業式
凛音目線
時間が経つのは早いと言うけどあっという間に4月末になった。桜はもう葉桜に変わっていた。
答辞を読む生徒会長の話を聞き流しながら外を見る。今日は一段と暖かい。血の臭いをつけ、死に近い所で生きてきた先輩達は次の段階に進む。その節目の日にしてはあまりにも穏やかで優しい風が吹いていた。ある人は軍へ、ある人は就職し、ある人は進学をする。秋よりかなり減った在校生の席から先輩方を眺めると泣いている人が何人かいた。羅希先輩もその一人だった。この1年で沢山の出来事が起きた。3年間なら尚更様々な思い出が蘇っているのだろう。羅希先輩はいつも私を可愛がって気にかけてくれた。中学まで病気が原因で"悪い意味"で気にかけないといけない子だった私を"いい意味"で可愛がってくれた。そして私が寮で弱音を吐くと聞いてくれて背中を押してくれた。いろいろな経験談も聞かせてくれた。
蒼桜にいを引っ張りあげてくれた人とするなら、羅希先輩は歩み出すためにいろいろなことを教えてくれた人だと思う。
蒼桜にいと羅希先輩、奇龍先輩、雨梨先輩…たくさんの周りの人の影響を受けて私は変わった。蒼桜にいは私をこの世界に引き入れてしまったことを負い目として感じていると思うけど、そんなことは感じなくていいんだ。私は今幸せだ。
先輩方の退場…つい涙が止まらなくなった。感謝の気持ちと寂しい、行かないで。そんな想いが交錯する。蒼桜にいと目が合った。蒼桜にいは涙目で私を見て困ったように笑っていた。羅希先輩とも目が合った。先輩は笑って"ありがとう"と言っていたように見えた。
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