第169話:未来へ進む誓い
羅希先輩__
「蒼桜君!」
涙目で蒼桜君を止める雨梨。ただならぬ空気に思わず名前で呼んでしまった。奇龍はその空気感にのまれ動けなくなっている。
「羅希先輩…蒼桜先輩が…!」
蒼桜君の横に行くと血の匂いと荒い息が鼻にくる。
「蒼桜君、私が分かる?」
「羅希…。」
肩を貸すといつもより重い。
「蒼桜君、今助けるから…。」
「羅希。まだ終わってない…。」
「どういうこと…?」さっききた連絡では院内の敵はいなくなったはず。
「次が…来る。」
「先輩方聞こえますか!?」
「どうしたの?」
「空です。空から攻めいられます!」
援軍…。
「先方には3階で対戦するって伝えてあるよね?」
「はい。なのでそこで敵と対戦出来ますか?」
「分かった。私達の応援は無いと思っていい?」
「すみません。要請はしましたが…。」
「分かった。」
ぱっと顔を上げると凛音がいた。蒼桜君の言う通りになった。それでもこれは…。本調子ではない雨梨と奇龍。体力の尽きかけている私と凛音。そして今にも死んでしまいそうな蒼桜君。
「とりあえず私は蒼桜君を運ぶから、3人はここで…。」
「羅希。ありがとう。楽になった。」
「え?」
「大丈夫。」
嘘だ。だけど彼は1回深呼吸をして私の肩から離れた。そして彼の目は強く見開かれていた。
「蒼桜君…それなら約束を守って。」と小さな声で呟くと
「…約束?」と蒼桜君はこっちを向く。
「忘れたの?私たちが2人でまた戦場に立ったあの日。蒼桜君が言ったんだよ?」
「…戦場では必ず羅希の隣にいる。何処かに行かない。」
「大切な一言が抜けてるよ。"そして2人で生きる"って。」
「…そうだった。でももしかしたら」
「もしとかそんなものない。いい?私達には大切な後輩がいる。私達には簡単に諦められない未来がある。だから…」
「うん。帰ろうか。全て終わらせよう。」
「まあ隣に居るって言っても足でまといになるようなら有無を言わさず置いていくから。」
「置いていかれないように…死なないように善処するよ。」
「奇龍、雨梨、凛音。状況は分かってるね?5人で戦う最後の戦場。勝利を持って帰ろう、5人で。」
「はい。」
顔が強ばってるが3人は強く返事をした。蒼桜君はほぼ戦えさせられない。だから後輩達は自分が頑張ろうとして背負おうとする。すぐ死に急ぐ私達は何度も全員で生きて帰ることを確認し合わないといけない。そうでなければまた過去を繰り返すだけだ。未来へ進みますよ、先輩方。
「そのためには目の前のことを片付けろよ…羅希。」
桐谷先輩の声が聞こえた。晴人君…精一杯頑張るから、あの世で会ったら褒めてね。
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