第168話:届かない声

雨梨目線___




「先輩…!」


 蒼桜先輩は見たことも無い顔色をしていた。寄りかかってきた先輩の背中は赤く染まっていた。


「す、すぐに人を呼ぶので…」


「いいから。…雨梨。現状は…?」


「3階で戦闘になってます。」


 ぐっと力を込めて立ち上がる先輩。息は荒い。瞼が重そうで見ていられない。


「やめてください。先輩…!」


「ここでやめたら誰が代わりにやってくれる?ここでやめたら誰が守る…?」


「僕らがやります…!だから…。」


「5人で神咲班だから。班長だから行かないと。」


 だめだ…言葉が届かない。先輩は今にも周りを全て切りつけられそうなオーラを放っていた。止めようとしても歩き出す先輩。出血もある。痛みだってあるはずだ。止めないといけないのに、どうしたらいいか分からない。

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