第166話:作戦通りの女

雨梨目線___




周辺の敵を撃ち倒した直後近くから銃声が一発聞こえた。避難中の人に発砲されたという最悪の事態が思い浮かんだ。銃声のする方に走る途中にまた銃声が響いた。嫌な予感を振り切るように角を曲がると、目を撃ち抜かれ即死であろう敵軍と見覚えのあるツインテールのお嬢様。そして腕の中で動かない凛音が見えた。


「凛音!!!」


「発作ですわ。」


「えっ…。」


「壁にぶつけられて脳震盪起こしていたので煽って動いてもらったら発作が出たみたいですわね。」


「戦場で何考えてるの。一条。」戦場で凛音を煽ることはご法度だ。発作のスイッチを付けたら本人の命も周りの命も危ない。


「発作というデメリットがある凛音を戦場に連れていくのは乗馬技術と身体能力の高さ、そして総合的な戦闘能力の高さからですわ。神咲先輩と九万里先輩(姉弟)の影で目立たない所もありますが、凛音は見た目の割に素早く的確に急所を狙うのは彼女独特のスタイルと言っていいですわね。蒼桜先輩が基礎を極めたタイプ、羅希先輩が戦いながら強くなるタイプですし。」


「言い訳になってないよ。つまりどういうこと?」


「意識が朦朧としていても凛音は確実に相手の急所を狙う事が出来ると思って、私が囮になって彼女の想いと力を使いました。それに百鬼先輩の到着があるので発作を起こしても大丈夫でしたわ。」


「結果論に見えて全て予想通りってことか。」恐ろしい。


「もちろんそうですわ。反対側から挟み撃ちのように百鬼先輩が斬り倒していたのは知っていましたし、あそこに落ちてる人が最後の一人になるのは明白でしたから。」


「僕が間に合わなかったらどうするつもりだったの?」


「間に合わなかったら私が死ぬだけですわ。でも、約9割の確率で間に合うのは分かっていましたし、この行動に出なければ7割の確率で凛音は死んでいましたわ。」


開いた口が塞がらないとはこの事か。


「猫音…大丈夫…?」


「おはよう。凛音が守ってくれたおかげで大丈夫よ。」


「良かった…。」


「凛音。体力入る?」


「雨梨先輩…軽く入ります。」


「良かった。」


「脳震盪も大丈夫そうね。終わったらちゃんと病院行きなさいよ。」


「分かった。」


怠そうに起き上がった凛音は拳銃を一条に渡した。


「あんな無茶なことしないでよ。発作の後すごくだるいんだから。」


「ごめんね。でも唯一無二の最適解だったわ。」と受け取り笑う一条に凛音は不満そうな顔をして黙り込んだ。


「従姉妹喧嘩は帰ってからにして。」


「そうですわね。二階にいる九万里先輩の所に行きましょう。」


「分かった。」蒼桜先輩は?


「蒼桜にいはどうしたんですか?」


「他の敵と戦っているはず。」


「助けに行かないと。」


「大丈夫だよ。それに僕が見てくる。2人の所に行ってあげて。それでいいよね、一条。」


「はい。思ったより時間かかってますわね、神咲先輩。」


嫌な予感がする。蒼桜先輩と別れた所まで廊下を戻った。


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