第165話:何のために
凛音目線___
「っ!」避難している人がいる。これ以上この人を先に進めさせるわけにはいかない。だけど…。
「息が切れてきたね。私がこんなに動けると思ってなかったみたいね。」図星だ。目の前の相手は身長は変わらないが体重は軽く見積っても20kgは違いそうな女の子だ。パワーで押し込む人だと思いスピードでどうにかしようとした。馬に乗ってるぐらいだから体力もスピードも体幹も悪くないはずなのに…行く先々に相手がいて鍔迫り合いになり押し負ける。
「っ!」
「あーあ。流石に見えてはいるんだ。動けるデブとはいえ見えないほどじゃないもんね。」間一髪の所を避けたら前髪がばっさりと地面に落ちた。相手の言葉に返す余裕もない。相手には切り傷を複数付けた。深い傷だってある。なのに相手は何も無かったかのように来る。
「化け物…。」
「私はね、痛みなんて感じないのよ。そしてどんな相手に対しても勝つことも出来る。つまり最強。」
「ぐっ…!」
鍔迫り合いは真っ直ぐぶつかってくるだけだった。なのに今回は下から突き上げるような動きだった。真っ直ぐぶつかってくると思った私はバランスを崩し、体力が削られていたこともあり、いとも簡単に大きな音を立て壁に頭部を強打した。目を開けると光が眩しく目眩がし立ち上がれない。
「こうなった人はみんな死んだよ。」
相手の顔が眩しく、声が乱反射して動けない。
「私の命預けるって言ったでしょう!起きて!凛音!」
「猫音…?」遠くに二つ結びの影が見える。
「痛いな…後ろから銃で足を撃ってくるなんて卑怯だな。」
「猫音何して…!」
戦闘経験なんて無いに等しいのに。足を狙ったさっきの弾も掠めただけだったのに。
「凛音!貴方が死んだら最適解にならないって言ったでしょう!」
「猫音が死んだら司令はどうするの…!」
敵はゆっくり猫音に近づく。戦闘学科の人間ではないことに気がついている。
「なら、凛音、貴方は何をしてくれるの?」
「え?」
「凛音、何のために今貴方はいるの?」
「私は…。」
「早く!」
「私は…強くなるためにここにいる!」
「凛音!!立て!そして決めろ!!!」
猫音は相手に向けていた拳銃を地面に落とし蹴飛ばした。拳銃は地面を滑り生き物のように敵の足の間をすり抜けた。
「ばか!そんな事したら…。」猫音が殺られてしまうでしょ!
後半の言葉は銃声で誰にも届かなかった。高まる感情と共に意識が薄まっていく。薄まる世界の中で眉間を狙った弾が相手の左目に飛び込むのが見えた。
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