第164話:防衛から戦闘へ
羅希目線___
「凛音、その階段から3階へ行って、3階に軍関係の人は固められてるわ。敵はどこにだれがいるか分からないから今ならまだ間に合うかもしれない。3階の患者の避難はまだ手付かずみたいだわ。」
「分かった。急ぐね。」
「九万里先輩はそのまま1階から攻めて下さい。1階の患者はICUのみで、頑丈なセキュリティで簡単には攻めれないみたいです。ワンオペになってしまいますが1階の掃討お願いします。2階の患者は移動出来る人は4階以上に避難して、移動に時間のかかる人は部屋に鍵をかけているようです。」
「分かった。その鍵を壊して襲いかねないわね。急いで1階を片付ける。」
「ありがとうございます。院内スタッフに患者の移動を急がせます。」
「分かった。」
そうは言うものの警備員は負傷し、使い物にならなくなった。廊下がある分気をつければ挟み撃ちにされないだけで有利にはならない。もう気がついたら20人は斬っただろう。それでも減らない。いくら人がいるのか読めない。2階の人達が心配だ。
1階を制圧する頃には私の息は上がり、肩で息をしている状態だった。
「早く…行かなきゃね。」
「流石、強いな!」
「き、奇龍…?」
そこにはしばらく会ってなかった弟が両手に銃を持ちいた。
「大丈夫なの?」
「大丈夫ではないけど、ここで何も出来ない方が俺は狂うから。だから来たよ、姉ちゃん。」
「遅いわよ。」
「ごめん。」
「でも、助かった。あんたがいるだけで私は心強いってこと覚えていてね。行くよ!」
「おう!」
2階に上がり、奇龍の銃が敵を撃ち抜く。私は病室で患者を襲おうとする人を廊下に投げ出した。
「危ないので部屋に居てください!」
「おい黒軍、お前らの仲間はどこだ?」
「教えるわけないじゃない。」
「それだと民間人と区別のつかないやつは殺すしかないな。」
「そんな世論のヘイトを買うなんて白軍の司令部は馬鹿ね。」
次々と2階も制圧していく。奇龍がいるだけで私の剣は何倍にも強くなった気がする。
「九万里先輩、3階避難完了しました。これから3階へ敵を誘導します。」
「どうやって…。」
「侵入者の皆さん、民間人を襲うのはやめてください。黒軍の入院患者は全員3階にいます。そこで決着を付けましょう。」
「なんだこの館内放送は!?」
「なるほどね。戦闘法を利用したのね。」
「戦闘法?」
「戦闘法で場所を片方が指定した場合そこが戦場となる。他の場所で許可なく戦闘をした場合の損害は、他の場所で戦闘した軍の負担となるの。この場合3階へ絞られた。戦場外で民間人を巻き込み、被害者への賠償問題に発展すると互いに困るでしょう。その心理を使ったのね。」
「でもこれは防衛任務だろ?」
「本来防衛任務だから様々な補填の責任は裁判で相手方に請求することになるはずだけど、ここは都立病院だし大勢の民間人への被害を食い止めるために、戦闘(任務)ということにしたのね。司令部ではないと任務内容は変えられないから、あの子考えたね。」
弟はよく分からないといった顔だが、本来黒軍の非はないはずのものを黒軍の非を認めることになるかもしれない決断を下した。民間人を巻き込まないという黒軍の倫理を優先した。相手方からしたら自分達だけ補填しないといけなかったものを黒軍の非を追求するチャンスが回ってきたとなると、乗らないわけにはいかなくなってくる。それに既に都立病院の襲撃という問題を起こしてはいるが、これ以上の世論を敵に回すようなことはしたくないだろう。
「こちら九万里羅希、2年の九万里奇龍が合流した。」
「了解しました。とりあえず3階へ向かって下さい。今そこは戦場です。」
「分かった。一条はどうする?」
「私は足でまといになるのでこのままモニターから司令を出します。」
「分かった。行こう、奇龍。」
「おう!」
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