第135話:酷く不甲斐ない俺

蒼桜目線___

「とりあえず脳震盪と首を絞められたことによる一時的な酸欠ね。異常もないし、戻って大丈夫よ。」

「ありがとうございました。」病室から出て直ぐに雨梨の行方を探す。

「蒼桜君、大丈夫?」

「桐谷先生!大丈夫です。雨梨見ませんでしたか?」

「雨梨君ならもう少し先の椅子に居るよ。」

「ありがとうございます。」

「蒼桜君も大丈夫だとしても無理したらダメだぞ。」

「はい。ありがとうございます。」


「雨梨!」

 椅子に横になり、白い顔をしている雨梨。

「蒼桜先輩。大丈夫ですか?」

「ああ、雨梨も大丈夫?右手首斬られたんだって?」

「はい。貧血だからここにいろと言われました。先輩はもう?」

「脳震盪と酸欠だったみたい。心配かけてごめんね。」

「いえ。無事で良かったです。」

「他のみんなは無事?」

「はい。羅希先輩の馬が予後不良みたいです。」

「そうか。分かった。ありがとう。」それは辛いな…。

「先輩厩舎にこれから行く予定ですか?」

「うん。でも…。」

 雨梨が行きたそうだけど行けなくて辛そうだから一緒に居よう。

「先輩?」

「俺が今厩舎行っても混乱してる所に邪魔するだけだからここに居るよ。」

「分かりました…。ありがとうございます。」

 学ランを雨梨にかける。

「少しでも寝ておいた方がいいよ。いつ何をしないといけなくなるかわからないから。」

 雨梨の寝顔を見て、班員を守れず守られて帰ってきた不甲斐ない自分に嫌悪感を募らせた。

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