第133話:ごめんね、相方

羅希目線____

「残念ながら…。」

「分かりました。よろしくお願いします。」

 馬が脚を怪我した場合、安楽死の措置がされる。私の馬は今苦しそうに横になっている。馬は歩くことで血をめぐらせているから脚の怪我をするともう助からない。

「ごめんね。」

 大丈夫だと言うかのようにこっちを見てくる。晴人くんらが亡くなったあの日、この子は爆発に巻き込まれずに自力で帰ってきた。廃人になった私の分蒼桜君が面倒を見てくれて、私の顔を見ると嬉しそうに駆け寄って来てくれた。誘拐事件の時もこの子は私を連れ去った人を追いかけて行った事を聞いた。なのに、

「守ってあげられなくてごめんね。」

 すると私の手に鼻を付けてきた。大丈夫だと言いたいの?ごめんね。

「九万里さん。準備が出来ました。」

「分かりました。」

 ぽたぽたと涙が堪えられない。最後ぐらい笑った顔で送り出したいのに。

「羅希先輩。」

「姉ちゃん。」

 2人も来てくれた。この子を撫で、辛そうに顔を歪ませていた。

「注射入れます。」

「ごめんね。ありがとう。」

 目を細めたこの子は私の手に頭を擦り付けた。いつも甘えてくる時にしてたよね。撫でていると安心したようにゆっくりと目を閉じて行った。


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