第15話 新魔法習得

「凪~。

 お風呂出たよ~」


 もうパジャマに着替えた二人がすっきりした顔で戻って来た。

 髪も乾かしてきたようで二人ともサラサラだ。

 二人ともけっこうな時間、お風呂に入っていたので僕の方もカレーは完成し後は盛り付けるだけだった。


「ちょうどカレーが出来たところだよ」


「じゃあ私はお皿運ぶね。

 リリィちゃんは座ってて」


「分かりました」


 僕が夕飯をお皿に盛っていき、それを華奈がダイニングテーブルまで運ぶ。

 お盆も用意してあったので、華奈がテーブルとキッチンを二往復して夕飯はすべてテーブルの上に並べ終える。

 僕はその間に使った調理器具などを纏めてシンクの中に入れて小奇麗にした。

 そして、二人の待つダイニングテーブルに移動し着席する。


「よし、じゃあ食べよう」


「「「いただきます」」」


 三人でタイミングよく手を合わせると食事を開始した。

 テーブルの上にはカレーのほかにサラダとスープも用意してある。

 食事を始めてすぐに僕と華奈の視線はリリィに向かう。

 お昼のスパゲッティと同じように初めて食べる料理の感想を聞きたかったのだ。

 僕と華奈の視線を受けてリリィはカレーを掬うと一気に口の中へとスプーンを運んだ。


「リリィちゃん? 

 どうかな?」


「ん~、とってもおいしいです♪」


 今回もお昼時と同じように笑顔が返ってくる。

 それを確認した僕たちも、食事に手を付け始めた。





 食事を終えて一時間後。

 僕がお風呂に入っている間に食器類を二人がすべて洗った。

 そして、部屋が綺麗になった所で僕たちはソファーに座って今日の成果の確認をおこなう。


「今日の成果は、薬草と魔力草の依頼五件はすべて達成。

 ゴブリンの討伐が21体、グレーウルフが4匹。

 明日の目的は残りのゴブリン9体のグレーウルフ6匹」


「それが終わったら、“アフリト”に行くんですか?」


「そうだね。

 とりあえずは、明日そこに泊まって明後日の出発を考えてるよ」


 二人はその提案に賛成し頷いてくれた。

 そこからは用意していたお茶が無くなるまで他愛のない話が続き、その後に寝室へと向かうとあまり夜更かしせずに就寝する。





 翌朝。

 朝食として昨夜の残りのカレーを食べると片付けを済ませて出発の準備をおこなった。

 それぞれの装備の状態を確認しながら身に着けていく。

 装備の装着を終えると僕たちはコテージを出る。


「それじゃあ、戻るけど二人とも問題ない?」


「大丈夫だよ」


「問題ないです」


「それじゃあ、白い立方体に触れば戻れるよ。

 ただ、魔物が居るかもしれないから周りに注意」


 二人に注意をしてその確認が取れると三人同時に手を伸ばしてポータルに触れる。

 触れた瞬間に白い閃光と共に転移が発動。

 僕たちは昨日の池のほとりに戻って来た。


「凪、魔物はいないよ」


 戻ってすぐに周囲を確認した華奈から報告がくる。


「じゃあこれを片付けちゃうね。

 閉じろ<箱庭>」


 キーワードによって<箱庭>のポータルを収納する。

 それから前日に来たルートからルートを少しずつ次の街の方向にずらしながら森を歩き始めた。

 今日は依頼の魔物を討伐する他にももう一つ目的がある。


「リリィにも徐々に<完全魔法>の習得をして欲しいんだ」


「けど火と光、空間しか使えませんよ」


「いや、<全能>のスキルを習得したから後天的に使えるようになるよ。

 じゃあ、歩きながら僕が説明していくよ」


 そうして、華奈に先頭を進んでもらうことにして僕はリリィの横について魔法の説明を始めた。

 細かい説明は時間が取れるときにするとして、魔術と魔法の違いについてと属性関連についてを大まかに説明して早速、スキル習得のための実践に移る。


「それじゃあ、リリィ。

 魔法陣を用意するからちょっと待ってて」


 僕は<アイテムボックス>から真っ白な紙を数枚取り出す。

 さらに、<宝物庫>を開いて一冊の本を取り出した。

 取り出した本は僕が既存の魔術に合わせて自主開発した魔法を魔法陣にして纏めた自作の魔法陣辞典だ。

 魔法陣と共にその下に詠唱も書き込んであるので、魔力さえあれば誰でもすべての魔法を使えるという優れもの。

 ただ、すべての魔法を一冊に纏めたのでおいそれと世に出せない魔法も収録されているので、どの世界においても禁書指定されるだろう一品だ。

 僕は内容を大体覚えているので目的のページを開くとそこに書かれている内容を紙に写していった。


「よし、完成。

 これはリリィの持ってない水、風、土、闇魔法のそれぞれ第十位。

『ウォーターボール』、『ウィンド』、『ロック』、『ブーストアイ』のの魔法陣。

 詠唱も付けてあるからそれを唱えながら発動してみよっか」


「はい、やってみます」


 リリィは僕から魔法陣を一枚受け取ると早速、魔力を流す。

 魔法陣に魔力が流れるとともに、淡い光を放ち始めた。


「『水は流れ。

 撃て、水塊の弾。

 ウォーターボール』」


 詠唱が終わると、リリィの前に五十センチメートルほどの水球が出現した。

 水球はその後、真っすぐ近くの木へと飛んでいき、ぶつかって破裂。

 ぶつかった木の表面に軽く亀裂を入れていた。


「ナギ様、出来ました!」


 リリィは魔術が発動したことの喜びからか僕の横でぴょんぴょんはねている。

 僕は魔法陣を受け取り次の指示を出した。


「もう使えるようになってると思うよ。

 もう一回やってみな」


「はい!

『水は流れ。

 撃て、水塊の弾。

 ウォーターボール』」


 元気よく返事したリリィは今度は魔法陣なしで魔法を発動させる。

 詠唱後、先ほどと同じように水球が出現して飛んでいった。

 変な挙動も無かったので、<水魔法>のスキルをちゃんと習得出来ている。


 その後、僕の用意していた魔法陣も同じ魔術の発動→魔法の発動と言う流れをこなしていって、無事にすべての基礎属性をリリィは習得した。

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