第10話 “アルメア”

 辺りを見渡せば森の中だった。

 周りに人の目が無いところとなるとこういう場所しかないのでこういう場所から始まるのは気にしていない。

 真美さんと茜さんは“花園”で問題が発生しない限りはこちらを確認しているそうだ。


 僕は全ての荷物を地面に下ろした。

 そうして、初めて世界システムへと接続した。

 とりあえず、細かい情報なんて探すつもりは無いので世界のステータスと呼ばれる情報の方を確認する。


第五世界線・根源世界“アルメア”

・居住種族

 人族(55%) エルフ族(10%) 獣人族(10%) ドワーフ族(10%) 魔族(10%) その他(5%)

・構成

 大陸(大)3 大陸(小)1

・国

 38か国 (現在地 ドゥルヒブルフ王国・月影の森)


 本当に大まかな情報だ。

 ただ、種族や地理など確認できたので十分だ。

 一緒に地図が出てきたので確認すると現在は大きな大陸が三つあるうちの一つで、三角形のように並んでいる内の上の大陸の中心からちょっと左に寄った場所にいた。

 現在いるのはドゥルヒブルフ王国で、この大陸では二番目に広い。

 さらに、各国の情報もまとめてあったのでそちらも確認する。


ドゥルヒブルフ王国

 上位神ドゥルヒブルフによって作られた王国。

 君主制であり貴族が権力をもっていたが見直されつつある。

 しかしながらまだまだ根深い。

 大陸の中でも1、2位を争う大国。

・通貨

 銅貨<銀貨<金貨<白金貨 

 十枚で一つ上の貨幣と同価値。

 それぞれの貨幣の五枚分の価値の大貨幣が存在する。

・魔法

 各種魔法スキルの平均レベルは六。

 最高魔法レベルは上位魔法十。

・文化

 魔法中心であり文化レベルとしては日本の中世辺りに該当。

 一部技術においては、魔法技術流用により現代に匹敵。

 科学技術は数十名の学者がいるが発展の見込みは無い。

 主要言語はアルメア語。


 現在位置をもっと拡大して見て見れば今はドゥルヒブルフ王国の東部にある隣国マルスリオン帝国との国境付近の森の中。

 ここから南下していくと大きめの街道があって、一番近い町はドゥルヒブルフ王国の〔アージン〕だ

 情報を集めるためにその街を第一の目的地に決める。


 それから荷物の確認だ。

 茜さんに貰ったリュックは<アイテムボックス>のスキル付与がされていて、制限まで元の体積を越えて荷物を入れることが可能である。

 中に入っていたのは保存食と水が三日分、テントなどの野営道具、大銀貨一枚と銀貨五枚、そして着替えが二枚と一枚のローブが入っていた。

 ローブを広げてみれば、フード付きで足元まであるような長さがあった。

 全体は黒で、端は金色で縁取りされていた。

 また、背中の一部には僕の紋章が萌黄色で刺繍されている。

 さらに、付与として<魔法耐性Lv10><物理耐性Lv10><防汚Lv10><自動修復Lv10>が付いていた。

 僕専用のデザインがなされたこのローブが真美さんが用意してくれたものだろうと思う。

 とりあえず、これは上に羽織ると確認するために出した荷物を仕舞った。

 それから、今度は真美さんに貰った剣を<鑑定>する。


 名前:神装・アルア

 スキル:不壊Lv- 魔力変形Lv10 装備者指定Lv-


 スキルには、同一スキルでの打ち合い以外は決して壊れることの無い<不壊>や、真美さんが言っていた自身の想像通りに変形させる<魔力変形>が付いていた。

 <魔力変形>の補足として、変形後の名称を付けることでいちいち想像が不要なショートカット登録が可能でこれの登録数はレベル依存である。

 <装備者指定>は指定者とその指定者の許可者のみしか装備を持つことができないというスキルだ。

 それ以外の者が持とうとすると霊体化してすり抜ける。

 また、装備の銘を呼ぶことで手元に転移させる効果もある。


 剣の素材は神鉄。

 神鉄は、神が鍛えた鉄であり全ての鉱物の中で一番の硬度と魔力伝達率を誇る。

 魔力伝達率と言うのは、物質に魔力を流す際に発生する抵抗の大きさを表しており、高ければ流れやすい。

 一通り確認が終わるとリュックを背負い、アルアを<アイテムボックス>に収納する。


 それから、森を抜けるために移動を開始する。

 森の中には当然魔物も居るが、出会うのはゴブリンなどの低レベルなもので一撃で倒していった。

 森の中は歩きやすかったが、けっこう距離があり、僕が森を抜けたのは三時間後だ。

 森を抜けて街道脇に出た頃は既に日が沈みかけていた。

 時間に特に指定は無いので、始めから急ぐ必要は無くここで野宿をすることに決める。


 それを決めてしまえば後からの行動は早い。

 始めに、空間魔法の『結界』を発動。

 指定範囲に自身が許可した人以外通行できない障壁のドームを張って安全を確保する。

 その中でテントを張るなどの野営の準備をして、夕飯の作成を始める。


 夕飯を食べ終えた後は結界の外に出て、昼間に森の中で倒した魔物を<アイテムボックス>から取り出した。

 基本的に僕は魔物で必要なもの以外は最終的に火葬して弔うことにしている。

 この世界では何が素材になるのかは分からなかったので、確実に素材になると言える魔石だけを残すと、聖火魔法『聖火』で火をつけ燃やして弔った。





 翌日は日が昇った所で起床し、食事や片付けをおこない準備を整えると街道を西へ進んだ。距離はあったが、森の中のように歩きづらい訳でもなく魔物が出てくることも無かったのでお昼前には小さめの石壁でぐるっと囲まれた街“アージン”に到着した。

 門で銀貨二枚の通行税を払って通行証を発行すると、街へと入場を果たす。


 そして、最初の目的地は冒険者ギルドと呼ばれる施設だ。

 そこでは色々な情報が集まり、色々なところから請け負う依頼などでお金も稼げる。

 さらに冒険者として登録すれば街に入る際の通行税が免除される冒険者証の発行もできるのだ。

 冒険者ギルドはこの世界の全ての国に最低一か所以上の拠点を持つ中立の大組織であり、ギルドの各施設では冒険者への依頼の斡旋や様々な素材の売買、商業ギルドと提携した銀行業を行っている。

 冒険者の登録すると、強さによってランクで分けられそれぞれに応じたランクの依頼を受けることができ、依頼を達成するとあらかじめ定められた額の報酬を受け取ることができる。


 街にあったギルドに入ると正面に設けられたカウンターに向かった。

 この街自体、他と比べそれほど大きい訳ではないためギルドの施設もそれほど大きくない。

 受付の職員に登録をお願いすると一枚の紙を渡された。

 それは、登録用紙で登録に必要な情報を一時的に記入するものだ。

 登録に最低限必要なのは名前の記入とこの後におこなうステータスの登録である。

 ステータスは専用魔道具で読み取る。

 名前と自称の職業を記入して職員に渡し、ステータス登録の魔道具に触れた。

 その後、職員は渡した紙を確認しながら魔道具をいじると少ししてそこから冒険者証が発行された。

 冒険者証は自身のステータスを表示させることが可能で成時にはいちど提示する必要があった。

 僕のステータスは制限は掛けているがそれでもどこの世界でも異常なレベルなため<偽装>によって調整をおこなってから提示する。


 それでも、ステータスの表示を見た受付職員はその高さに多少驚き飛び級制度を適用することになった。

 飛び級制度は即戦力を確保するための制度で初期登録時のレベルが高い場合にランクが上がった状態で登録される。

 冒険者ランクは最低のE~A、そしてその上にS、SS、Lと分かれており、僕は規程によって飛び級で最大のBランクでの開始だ。

 制度適用のため、五分ほど待たされ登録が終わった。


 そのあと、ギルドで邪神に関する情報を聞き込みをおこなったが何も見つからない。

 この街は人が多い訳では無いのでもっと情報の集まる場所に移動することに決めた。

 ここから行ける大きい町と言えば色々あるが王都が一番大きく、それ以外の大きな町から少し進むだけなのでそちらへ向かうことにする。

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