第3話 神を継ぐには

 真美さんに後継者に任命された後に説明を受けることになった。

 真美さん曰く、後継者に任命したことで僕には【次期第三世界線神皇】と言う称号がついたそうで、これが目的だったそうだ。

【神皇】と含まれる称号には特殊効果があり、所有者の身体能力、耐性、魔力の強化。

 スキル<全能>と<完全耐性>、<神眼>の付与。

 そして、神皇大権の付与。

 この三つが付与されるそうだ。

 また、<神眼>と言うスキルは幾つかのスキルが集合してできたスキルでその中に含まれる能力は使い放題だそうだ。

 そして、その中には<鑑定>も含まれていて、残りは自分で確認してみなさい。

 という事で実際に<鑑定>を使ってみることになった。


「スキルの発動の方法は、口に出すか、頭で意識するかのどちらか。

 <鑑定>の場合、普通に使えば視界に入る物全てが対象とみなされてしまうから、自分の見たいもの……今回だと自分のステータスを見ると意識しながらやってみなさい」


「分かりました。

 <鑑定>」


 スキル発動に関するレクチャーを受けた僕は早速試してみる。

 今回は、意識するのが少し不安だったため口に出しての発動を試みる。


「うわっ!」


 <鑑定>を発動させると、目の前の空中にタブレットのようなものが現れた。

 突然、目の前に現れた為に僕は驚き声を漏らしてしまった。

 その反応を見た真美さんは<鑑定>が上手くいった事に気づき笑顔になっている。

 タブレットを見れば真美さんに教わった項目が並んでいた。

 そして、一番上の名前の欄には僕の名前が書かれているので上手くいったのだろう。

 僕は自身のステータスを確認した。


 名前:朔月凪

 種族:神 15歳

 レベル:8

 <スキル>

 全能Lv- 完全耐性Lv- 神眼《慈愛》Lv- 剣術Lv1 料理Lv3

《神皇大権》

 慈愛

【称号】

 次期第三世界線神皇 



「見れているかしら?

 因みに、初期状態だと簡易表示なの。

 スキル何かはその効果が詳しく見れたりするから、それを見たい部分に触れるかそこを強く意識してみるといいわよ」


 真美さんからアドバイスが入り僕はそれをやってみることにした。

 僕はスキルの項目をもっと詳しくと意識する。

 すると、スキルの欄に新たなタブが現れ次のような表示があった。


 <全能>

 種族限定スキル以外の全てのスキルの習得速度、成長速度増加。

 魔法に関する全ての適性付与。

 <完全耐性>

 全ての状態異常に対する耐性。

 <神眼《慈愛》>

 目に関する複合スキル。また、《慈愛》の神皇大権を得る。

 → 鑑定 千里眼 麻痺の魔眼 魔力視

 <剣術>

 剣の使用に関する能力の強化。

 <料理>

 料理完成度の補助。


 剣術は習い事でやってた剣道の影響だと思う。

 料理も、両親が居ないときによく作っている。

 それ以外の上三つは普通にチートスキルだった。


「ステータスの確認がきました」


「ちゃんと出来て良かったわ。

 今回の目的は<全能>の取得よ」


「スキル習得速度の増加が目的ですか?」


「ええ。そうよ。

 それさえあれば訓練の効率は段違いだからね。

 因みに訓練の内容としては様々な武器を使った戦闘、魔物、対人の戦闘。

 と後、一通りの魔法の習得。

 まあ、昨日話した通りよ。

 加えて、これが一番大事なんだけど……。

 凪君には自分なりの異世界の心構えを作ってもらうわ」


「異世界の心構え?」


 思わず口に出して繰り返してしまった。

 が、真美さんの意図は分からない。


「そうよ。

 例えば、良くある転移物の主人公ってよく直ぐに生物を殺せるって思わない?」


「確かにそうですね」


「けど、物語と現実は別。

 誰しも生物を始めて殺すとなれば恐怖何かを覚えてしまうものよ。

 後は、突然刃物を向けられたりなんかしたらパニックしてしまうんじゃないかしら?」


「……そうですね」


「凪君の住む“地球”とは、違う死生観の世界が多いの。

 異世界ものだとよく出てくる奴隷だけどあれなんかも弱肉強食社会の中の事でしょう。

 そんな世界でも戸惑わないようにするための意識づくり。

 これをしてもらうわよ。

 これに関しては生死が絡んでくることだから厳しくいかせてもらうわよ」


「……はい」


 日本だと人殺しなんてまず聞かない。

 治安が良いことはいいが、それによって感覚がマヒしてしまっている。

 世界へ飛び出せば紛争地域など死と隣り合わせで生活するような地域もある。

 そこと異世界は似たようなものだ。

 明日を生き抜くための考え方。

 そして、死にいちど向き合ってみるしかないのだろう。


「覚悟はいい?」


「はい!」


「それじゃあ、今日もここまでね。

 続きはまた明日。それじゃあ送るわ」


 そうして、真美さんの転移で僕は家に送られる。





 翌日、再び“花園”に来た。

 昨日とは心機一転、今日からは魔法をやっていくそうだ。

 が、昨日の話忘れがあったらしくそこからの再開だ。


 スキルの習得方法についてだ。

 これは簡単で、例えば<剣術>を入手したいと思ったら剣を使った特訓をする。

 言い換えれば、獲得したいスキルに関する事をやっていれば自ずと入手できる。

 また、スキルはそれぞれ一から十までのレベルがあり、スキルを使えば使うほどレベルは上がっていくそうだ。

 レベルが上がると、効果の上昇や範囲増加などが起こる。

 一部例外としてレベルのないスキルがある。


 スキルの発動の型も二つある。

 パッシブとアクティブで、パッシブは常に効果を発揮するもので、<剣術>がいい例だ。

 逆にアクティブは意識して発動させるもので昨日使った<鑑定>なんかだ。

 アクティブ型には魔力を消費する物もあるそうだ。


 特殊なスキルもあり、獣人なんかの種族のみが使える種族限定スキル、特定の条件を果たした人などのみが使える固有スキルがある。

 例として<全能>は固有スキルの対象で、【神皇】が含まれる称号を持つ人が使える。


 と、ここまで聞いたところで昨日は疑問に思いつつも聞くことが出来なかったことを質問する。


「神皇大権って何なんですか?」


 スキルの下の欄にあった謎の項目だ。

 真美さんは、今日教えてくれるつもりだったそうで直ぐに教えてくれた。

 正確には権能と呼ばれるもので、上位から順に神皇大権、大神権、神権、大権の四つに分かれている。

 魔力を消費しない上位の固有スキルのようなものらしいが、スキルよりも優先性がある。

 幾つかに分別出来て、自身の能力を強化する自己強化系。

 物理、魔法などの攻撃を行う攻撃系。

 物理法則なんかを規定の範囲で変更する法則超越系。

 それ以外の物を特殊系。

 発動に関してはスキルと同じで、こちらもパッシブとアクティブがある。

 所持は一人一つ限り。

 効果に発動・使用制限がある物もある。

 神皇大権の発動制限だけは全て一緒で紋章の展開らしいがどういう物かは不明だ。


 説明を一通り終えた真美さんは補足を始めた。

 最後の紋章についてだそうだが見せた方が早いという事で見せてくれたのだが、それは僕が後継者に任命されるときに真美さんの左目に浮かんだ紋章の事だった。


「紋章って言うのは凪君の証にも使ってるこれの事よ。

 <神眼>の効果の一部で、神皇になると個別に一つづつデザインが違ったものが付与されるわよ。

 意識すれば出せるもので、これの発動中の目は問答無用で紋章と同じ色に染まるわ。

 正式に神皇になると目の色が紋章と同じ色に変わってしまうから気にならないのだけどね。

 <偽装>で容姿を偽っている時にも解除されるから憶えておいてね。

 【神皇】の含まれた称号があるから凪君にも付与されてるはずよ」


 そんなことを聞いて、僕は左目に真美さんのように紋章を出すイメージを浮かべる。

 すると、左目から何かがふわっと抜けて広がっていく感覚と共に萌黄色の紋章が浮かんできた。

 紋章は線で形成されていて、全体的に曲線を中心とした作りだった。

 自分では分からなかったが真美さんが見せてくれた鏡で見ると太陽のような形をしていた。

 また、紋章と左目の瞳が萌黄色になっていた。


「萌黄色ね。

 中々いい色じゃない。

 それで、戻すときは消すことを意識すればいいわよ」


 僕は、そのアドバイスに従って紋章をしまった。


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