第22話 異世界に転移してもラーメン大好きな俺が、女子相撲部員に囲まれてハーレムな件

「そこかよ。よりによって」


 ラーメンだ。


 俺のようなオタク豚は、みんなラーメンが大好きだ。


 そして、ここ旭川はラーメンの聖地でもあるのだ。


 なんでも、人口10万人あたりのラーメン屋の軒数が日本全国で最も多いとされているのが旭川市だと、以前にどこかで聞いたことがある。ウィキ○ディアででも読んだんだろうか? ウィキ○ならデータとしてあまり信頼度は高くないが、そんなものはどうでもいい。


 旭川といえばラーメン。


 その事実は変わらない。


 試しに、北海道外から旭川方面へ旅行する人に聞いてみるといい。旭川に行ったら何を食べたいですか?


 多くの人がラーメンと答えるだろう。


 旭川市内には、全国的に名を知られる有名店が多くひしめき合っている。無名ながらも絶品の味を誇る隠れた名店というのも多い。


 旭川といえばラーメン。ラーメンといえば旭川。


 俺にとってラーメンは基本中の基本。


 俺の血液はラーメンスープでできている、と言ってもいい。


 あまりにも当たり前すぎて、かえってその選択肢を外してしまっていたじゃないか。


 ラーメンこそ、我が豚のソウルフード。


 あ、念のため言っておくけど、ソウルフードというのは、某半島の国の首都の名前SEOULじゃないからな。


 英語で魂を意味するSOULのことだ。


 バカなネトウヨが魂と半島国家の区別がつかないで、「お前はサヨクだ」などと不毛なイチャモンをつけてくる、という伝説があるけど、ご勘弁願いたい。俺は天皇陛下を敬愛する日本の愛国者なのだ。


 旭川の名物がラーメンであることに異論は無い。だけど、それはラーメンを食べる食文化が市民に浸透していて、ラーメン屋が多いということだ。


 さっきの江丹別の蕎麦は、作物として蕎麦を生産しているという意味だ。蕎麦屋が多いという意味ではない。


 三国志に、「髀肉の嘆」という言葉がある。あれは、俺のようなオタクの豚が、とんこつチャーシュー麺を食べて、こりゃ共食いだ、と嘆くことを言うのだ。


 俺のような豚オタクがラーメンを食べ、更に豚になる。これが豚の再生産スパイラルだ。


 ととっ、いけないいけない。ついラーメンのことということで、熱く魂が燃え上がってしまったじゃないか。


 クロハが旭川の名物としてラーメンを挙げたということは、俺に、ラーメン屋を紹介するからそこで働け、ってことだろうか?


 それは、どうだろう。


 俺はラーメンが確かに好きだ。週に三回はラーメンを食べている。それくらいラーメンが好きだ。でも、食べるのが好きなのであって、作るのは、自分でやろうとは思わないかな。


 例えば、映画を観るのが好きな人は世の中にたくさんいるだろう。だけどその中で、自分で実際に映画監督になって撮影しよう、なんて思う人が、果たしてどれほど存在しますか?


 あるいは、テレビで大相撲中継を観るのが好きな人は、いかに相撲人気が全盛期からは衰えたとはいっても、たくさんいるだろう。だけど、自分が裸になってまわしを巻いて土俵に立って相撲を取ろう、と考える人が、現在の日本でどれほど存在するのでしょうか?


 映画監督になろうと志す人も、相撲を取る人も、ゼロではない。ゼロだったら、その分野はやがて消滅してしまう残酷な運命だ。


 だけど、映画も相撲も「観るだけファン」という大きな母集団の中から、ほんの一握り、自分でもやってみようとする人が出てきているというのが現状だ。そして数少ない、実際にやってみた人々の中から、更に才能に恵まれて努力もした人だけが、本物の映画監督になれるし、大相撲の世界で出世できるのだ。


 それと同じで、俺は自分がラーメン屋になってラーメンを作ろうとは思わない。食べるのが好きなのだ。


「赤良、アンタ、どうせ仕事をやるなら、好きなラーメン関係の仕事をしたいと思わない?」


「俺は調理師免許も持っていないし、自分がラーメン屋になってラーメンを作ろうとは思わないぞ。食べるのが好きなんだ」


「そうじゃなくて。だから先入観で判断しないで人の話は最後まで聞いてよ。ラーメンの麺を製造している、製麺工場で働いてみない? 製造した麺を、フォークリフトで倉庫に出し入れする仕事」


「なにいぃいぃいぃいぃいぃいぃいぃい」


 思わず声が演歌歌手のようにビブラートしてしまった。


 本当にそんな仕事があるのか?


 あるとしたら、天職じゃないか。


 俺の持つフォークリフト運転技能を活用することができて。


 それでいて、好きなラーメン作りに関わることができる。


 天国か。


 なんて都合の良い展開だ。さすが異世界転生。さすが女神の斡旋。


 いやでも、ここでぬか喜び過剰には注意しよう。クロハという女神のことだ。散々喜ばせて高く持ち上げておいて、さっとハシゴを外す可能性もある。後で痛い目を見る前に、警戒心を解かないようにしなければ。


 仕事自体は魅力的だが、ブラック企業は懲り懲りだ。俺だけでなく、俺たちの世代は、ブラック企業に搾取されて疲弊した世代なんだ。


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