第4話 どんなものなのかな、

 農園の中を、慎重に探しながら進む。


 殺すというか……倒し方がわからないので、そのまま袋にぽんぽん詰め込んでいく。


 時々出会う農園の世話をしている人に、フワモコを見なかったか聞きながら、1時間以上かけて15匹のフワモコを詰めた。


 戻りながらもう1匹いないかと思っていたが、思ったより門の近くに来ていたらしく、解体所にすぐについてしまった。


「『討伐者ギルド』の解体所はここですか?」


 何かの選り分けをしていた人に話しかけると、俯いて作業していた人が顔をあげた。


「おお。そうか、登録のクエストだな。フワモコ何匹とれた」


「15匹です」


「よしよし、がんばったな。生け捕りか?」


 袋がもぞもぞ動いている。


「はい、変に傷めそうで」


「うん、正しい判断だ。その日のうちに持ってくるなら、フワモコは生きたままのほうが傷みが少ないからな。次の日になりそうなら、別々に詰めなきゃ増えちまう。数えながら絞めるから、貸してくれ」


 僕は袋を渡した。


 解体所の人は錐のようなものを出して、1匹ずつ数えながら箱に放り込んでいく。

 箱の中のフワモコは動かない。

 ただ数えているだけに見えるこの作業の合間にトドメを刺しているらしい。


 早業に見惚れている間に、袋の中身がなくなった。


「よっしゃ、間違いなく15匹だな。今納品書書くから待ってろよ」


 すると男性は、腰から木片を出すと、そこにさらさらと書き付ける。


 受け取ると、知らない字が書かれていたが、読めた。


【フワモコ15匹、状態(優) 受取ガレト、植月13】


「ありがとうございます」


 ガレトさんというらしい解体所の人は、片手をあげて先程の作業に戻っていった。


 木片を持って受付に戻ってくると、ちょうどまたあの男性の窓口が空いた。


 というか、今送り出された人、南門まで前を歩いていた人じゃないっけ?

 僕と同じように袋を二つ携えて、農園に向かった。


「ただいま戻りました」


 男性に声をかけて、ぺこりと礼をとる。

 難しそうな顔で見送っていた男性は、こちらを向くと微笑み返してくれる。


「おかえり、礼儀正しいなぁ! しかもなかなか早いじゃないか。納品できたかい?」


 僕は、はい、と言って木片を渡す。


「お。数量越えてるし、(優)もらってる。将来有望だなぁ」


 そう言いながら、手続きをしてくれる男性。


「(優)だから16だな……買取額は2シグ40ケラ。入門料もろもろ引いて90ケラだが、10ケラおまけして1シグ渡すよ」


 そう言って10枚の黄色い硬貨を渡してくれる男性。

 これ1枚が10ケラで、10枚で100ケラじゃなく、1シグという単位に変わるのか。


「ありがとうございます」


 僕は受取って鞄に入れる。


「雑魚寝の宿ならそれで泊まってもお釣りが来るだろうけれど、あまりお薦めしないな。自分のステータス見たことないなら確認ついでに神殿に行って、屋根を借りられないか聞くといいよ。簡単な労働のかわりに貸してくれるだろうから」


 ステータス。そうか、受付の機械は受付の男性しか見てなかったし、職員以外は見られないのかな。


 自分のステータスはちゃんと確認したい。

 と、いうかどんなものなのか見てみたい。


 僕は次の目的地を神殿にした。

 受付の男性に、神殿への行き方を聞いて、討伐者証を受け取り、礼を言って街の中へ足を進めた。



 討伐者証は、硬貨よりも薄い黄色のタグを首からかけられるようにしたものだった。

 名前と、登録した街の名前が書かれている。

 ランクが変われば色が変わっていくそうだ。

 できれば服の中に入れておくようアドバイスされた。再発行はかなり面倒な手続きになるらしい。なくしちゃ大変だよな。


 道の両脇に露店が並んでいる。


 美味しそうな匂いがするが、原材料がよくわからない。


 ……。


 戻って受付の男性にお薦めの露店を聞いた。



 お薦めの露店の串肉を頬張りながら、神殿への道を行く。

 やがて白く大きな建物が見えて、できるだけ広い道を辿ってそちらへ進む。


 到着した、ここが神殿だろう。

 修道士らしき人にステータスを確認したいと話しかけた。


 受付に案内してくれる、それに着いていこうと、女神のような像の前を通ったとたん。


 誰かに、話しかけられた。


『……かわ……か……ん……。双川 斎賀ふたがわさいかさん、聞こえますか?』


 僕の名前。

 姓と名前が逆になっていない。

 キレイな日本語の発音で。


 僕は振り向いたが、誰が言ったのかわからない。


 キョロキョロしていると、


『良かった、聞こえたみたいですね。修道士には、女神像に祈りたいと言って、その場に留まっていただけませんか? お話したいことがあるのです』


 と、少し高い位置から女性の声が響いていた。


 ……。

 まさか、本当に女神の声とか?!


 情報は、どんな情報でも今は必要だ。

 僕は声の言う通り、修道士に伝え、女神像に祈りを捧げるふりをした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る