決着
ミートがバルコニーから頭目の部屋に戻ると、決着が付いていた。
頭目は部屋の真ん中で血塗れで伏している。
立っている賊徒の姿はもうない。
レクイカは、剣を付いてしゃがみ込んでいる。
「レクイカ……無事か? 頭目は、きみが?」
レクイカは少し蒼白な顔で、苦しそうにしているが、
「大丈夫」
と言う。
傍らの騎士二人も無事で、それに、もう一人の騎士の姿があった。
「あ、と……ファルグ……?」
「そう、彼女が……駆け付けてくれました」
ファルグはこくり、と頷き、剣の血のりを払う。
レクイカは剣を杖にして、ゆっくり立ち上がる。
「ミートが行った後、頭目に捕まったのですが」
「お、おいおい。大丈夫……」
「ファルグが扉の影から忍んで、頭目を背後から」
頭目の首は皮一枚残してほぼ胴体から離れていた。
「一撃か……。きみは、強いんだな、ファルグ」
ファルグは少し顔を赤くしたようにも見えたが、さっと後ろを向いて、残りの賊徒を片付けてきますと言い部屋を出て行った。
「あなた方も、ファルグに加勢を。私は、大丈夫です」
レクイカは騎士二人にそう言い、騎士達もさっと部屋を出ていく。
レクイカはふらり、とよろけそうになり、ミートは思わず肩を貸す。
「そ、その……大丈夫? ってさっきからそればかりですまん」
「ええ……えっと、そちらは?」
「あの男は、身を投げて……死んだ」
「そう……あなたが、大丈夫なら。ミート」
「ああ。おれも、大丈夫。後で、話そう」
うん。とレクイカは力なく頷き、二人も部屋の外へ歩き出す。
が……もう、逃げる場所はない。どこへ行っても、線の雨が降る。
そう、レクイカに伝えないといけない。
ミートは、いたたまれなかった。
「頭目を討ったので、賊徒は逃げ出すか降伏するでしょう。そうしたら民を砦に入れて、少しでも休み、そうして西へ向かいましょう。どこまででも、線の雨を逃れて、行けるところまで行きましょう」
「レクイカ……」
――線の雨からは逃げられないかもしれない。
そうしたら、雨の向こうの国へ、一緒に……。
(レクイカ、線の雨が降る前に・第3章 了)
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