地下室

 民らの寝室の付近でも、すでに片は付いていた。

 民は一ところへ集められ、騎士数人が守っている。シガミの兵はすでに動く者はなく、廊下の一角へ折り重なるようにして集め片付けられている。

 

 シガミ側の戦力は予想外に低く、早々に討ち果たすことができ、また手際も悪くこちら側は騎士・民とも犠牲が出ることはなかった。無論、シトエ一人を除いては。

 城内を回っていたらしい騎士の一人が来て、レクイカに耳打ちする。

 

「地下室……そこに……え、ええ」

 レクイカは、頷きながらも戸惑った顔をして、そこから動けないでいるようだった。おそらく、聞きたくなかった言葉を騎士から聞いたのかもしれない。ミートはレクイカに声をかけた。

「えっと、ミカーはそこに行っているんだな? おれが、見てくるよ」

「私もすぐに……行きます」

 

 ミートは足早に、報告しに来た騎士に付いて発見された地下室へ向かった。

 そこでは、ミカーが待っていた。

 

「あ、ミートは入らないでください」

「その……シトエが、この先に?」

「はい。丸裸で死んでますので、ミートが見ることでその死を更に汚させたくはないので」

 ミカーは、冷静だった。

 騎士なれば、これまでにも仲間の死に遭ってきているからかもしれないが……とミートは思った。

「あっ。……」

「何? どうした……」

「レクイカ様。……」

 

 ミートの背後に、レクイカが来ていた。

 ミカーはレクイカを見ると、急に申し訳なさそうな何とも言えない顔で、しゅんと縮こまる。

 

「レクイカ様も……少し、ここで待っていただけますか。その、……シトエは、……酷い死に様なんです」

「えっ。そんな……シトエは、し、死んで…………」

 

 さき、部下の騎士から死を知らされたわけではなかったのか。それとも信じたくなかったのか。わかっていたことではあった筈だが、レクイカはよろけて、壁に手を付く。

 

「レクイカ様! あっ、ミートはほら、レクイカ様に触ろうとしないで、あっちへ行ってください」

 ミカーはレクイカを支え、立ち直らせる。

「レクイカ様。どうか今は。私とファルグで、シトエの遺体を……その、少しだけ、時間をくださいね」

 

 ミカーはそれからミートの方に寄って耳打ちするように、レクイカ様を少しだけ、お願いします。と言った。

 ミートはミカーにそんなふうに頼まれるとは思わなかったので、目をぱちくりとさせ、代わってレクイカを支えようとするが、ミカーに手をはたかれ、

「……必要以上に、レクイカ様に触・れ・ず・に、見守って、くださいね?」

 注意を受けるのだった。

 

 レクイカはよろよろと歩き出し、ミートはレクイカに付き添ってひとまず、民らの待つ寝所の方へと戻った。

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