行き止まりの廊下

「レクイカは、どう思った? あの、シガミとやら」

 案内された各々の寝室のある棟へ入り、レクイカと二人になったミートは、歩きながらそう聞いてみる。

 

「あ、ああ。そうねえ……うーん。おもてなしを受けておいてこう言うのも何だけど、ちょっと、不気味だった」

 

 なかなか自然に率直な意見を出されて、少しミートは驚く。

 

「いや、まあそれもそうだけど。シガミは、確実に安全だと思えた? 本当に何もなく一晩泊めさせてくれて、明朝見送ってくれる、ってふうに」

「ああ、そういうこと。うん……不安は残るね。見張りは立てましょう。雨のこともあるし。ところで」

 レクイカはその場に立ち止まった。

 

「ん? 何か」

「えーっと」

「言ってくれていい。なんでも、言ってくれ。おれも、騎士に……戻れるかどうかわからない。けど、こうなった以上、少しでも協力したいんだ」

 ミートは真面目な顔で、レクイカに向き合った。

 

 今、廊下には他の人影もない。

 レクイカは、少し困ったような、戸惑ったような瞳で、ミートを見てくる。

 

「あの、レクイカ……おれは、真剣に」

「えっと、ここ、私の用意してもらった寝室ね。ミート、下の階だよ?」

 

 ミートは、はっ、と言い反射的に一歩退いて、ごめん、と謝るのだった。

 またミカーらに見られれば、かっこうのネタにされるか、本気で殴られるかもしれない。

 ミートは一瞬の逡巡の後、その場を後にした。が、元来た方角からミカーらの声が近づいてきた。

 

「あっ。レクイカ、ちょっとその、二人で会議か何かしていたと説明――」

「じゃ私は、着替えてきます」

 

 レクイカは部屋に入り、ミートは行き止まりの廊下に取り残されてしまった。

 

 が、ミートも、そこへやって来てミートを叱り付けるミカーも、その廊下の行き止まりの壁の向こうで聞き耳を立てている者の存在には気付けなかった。

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