第2話 2人は出会う

私は父を覚えていない、と言った。理由は明確である。父は学者だった。ずっと自分のアトリエに座り込んで、不健康な研究を続けていた。全02星人の中でもトップと言っていいほどの頭脳を持ち、みんなから慕われていた。なのに自分の体の不調に気づかないなんて…。みんなから失望された。

私には名前がない。名前なんて必要なものか。なぜ地球人は自分の子供に名前をつけだからのだろう。不思議なものだ。


僕は平凡な毎日を過ごすはずだった。もちろん、運命が良くなってほしい、とは今更思わなかったが、最低平凡でいられるのが、少しだが僕の支えとなっていた。だが、そんな願いも叶えてくれない、神様は皮肉なものだ。


私の星では、食料危機の問題があった。星では飢えて死んでしまう人が続出した。だから母星地球に戻ろうという話が出ていた。私達の宇宙船が地球を出たのはわずか7年前だ。地球人に笑われやしないのか、02星生まれの私は心配だった。地球人のことなんて、一つも知らなかったから。 私達は大人から、地球人は優しいものだと教わっていた。でも、犯罪ばかりのこの星で、そんなことを信じる人はいなかった。だから、大人はとても苦労したのである。学校の地球の授業では人材が集まらなかったとかなんとか言って、いつも読書にかわっていた。なので尚更、子供たちは大人の言うことを信じられず、地球人とはどういうものかと空想の世界に意識を飛ばしていた。


いきなりその日は訪れた。目の前がピカッと明るくなった。閃光が走った。大きな音がした。閃光も、音も止んだ。外を見てみる。およそ300メートルほど離れた学校から炎が上がっていた。僕は頭がクラクラした。突然、家のインターホンが鳴った。家にはひとりきりだった。コミュ障気味の僕はあまり人と話したくはなかったが、とりあえず玄関のドアをあけた。いつも通り大きな軋む音がする。インターホンを鳴らした主は、うるさそうに耳を手のひらで覆った。

「こ、こんにちは。」

僕にやや弱気で挨拶をしたその子を見て、僕は一瞬で惚れてしまった。

「ななな、何の用ですか?」

ああ、僕はいつもこうだ。大事な場面で噛んでしまう…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ロリとショタボと夕焼けと 波瑠陽 @123456789abc

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る