高天原の戦い
タヂカラオ…アメノタヂカラオ、伝説では天の岩戸をこじ開けたと言う伝説のみだがここではスサノオと役割が逆転した要素が多い(性格など)
ウズメ…アメノウズメ、伝説ではアマテラスを岩戸から引き出す為、自然体になって踊ったと言うサービスキャラ?だがここでは自然体にはならないが軽装な美女と言う設定で男の人目を引くキャラには違いない、そしてタヂカラオの姉。
ーー*
高天原、かつては自然に溢れ情緒ある建築物に恵まれた美しい都市だったが、そこは今や氷のような壁に包まれた要塞に変わり果てていた。
空は日中不気味な暗闇に包まれ、魑魅魍魎以外の生物がいない地獄の要塞となっていた。
氷壁の要塞、暗闇の空は力以外の全てを失い、心の凍てついたタケルの心理を象徴されているようだ。
その様子は遥か離れた海からも、確認出来た。
船から見ると、青白い氷山のような要塞に空はその部分だけ暗闇になっていた。
スサノオ達はその禍々しい別世界のような高天原を地獄のようだと感じた。
陸地に上がり、スサノオ達の高天原の救出が幕を切って落とされた。
どこが入口なのかわからないような状況で、スサノオ達は行く手を失っていたがそんな時、タヂカラオは手に持っている酒の詰まったひょうたんの蓋を開け、酒を飲み出す。
「ちょっ、あんたこんな時に酒飲むなんて…!」
スサノオは酒を飲むタヂカラオに慌てながら突っ込む。
その時だった。
タヂカラオは口から炎を噴き出し、氷に覆われた要塞の入口を炎で溶かした。
口をぽかんと開き驚くスサノオとオツキ。
「タヂカラオは酒を飲む事で炎による技を発揮出来ます。いつ習得したのかわかりませんが」
ウズメはタヂカラオについて軽く説明をする。
タヂカラオが必要な理由はそこにあったのかと渋々納得し、氷の要塞にスサノオ達は潜り込んだ。
青白く光る氷の壁を進むスサノオ達。
部屋の中からは魑魅魍魎の呻き声が不気味に響く。
オツキは怖いのか、相変わらずスサノオの腕にしがみつく。
「オツキ腕にしがみつくのは恥ずかしいからやめてくれ」
スサノオは顔を赤らめて言う。
「何よスサノオ私にここで死ねって言うの!?」
オツキはややヒステリックに言う。
「そうは言ってないだろが人が見てるだろ!」
ウズメにはその光景が微笑ましく感じ、
「二人共仲が良いのね♪」
と微笑みながら呟く。
「ウズメ姉さん僕もウズメ姉さんにべったりしたい」
タヂカラオはウズメに甘えるように寄り添う。
「あらあら甘えん坊さんね♪」
と言い受け入れる。
恥ずかしいのはどっちもどっちだ。
しかしそんな呑気な光景は勿論長く続くはずもなく、化け物がスサノオ達に襲いかかる。
幾度となく苦戦を強いられるが
タヂカラオの火炎放射がここでも役にたった。
タヂカラオは酒をがぶ飲みして一気に火炎放射を繰り出し化け物共を黒焦げにした。
「良いぞタヂカラオ!」
「さあこっちです!」
タヂカラオが炎で攻撃している間スサノオ達はウズメに先導され先を急いだ。
スサノオ達が向かった先も妖怪共が待ち構えていた。
「くっ、来るなら来い!このスサノオが相手だ!」
スサノオが前に出て化け物を前に構えを取る。
その時、ウズメもスサノオの横に立った。
「私も戦いますわ」
「あんた戦えるのか?」
スサノオはウズメを意外そうに見て聞く。
華奢で肌の荒れの無いうら若い美貌の女性が恐ろしい魔物を相手に戦えるとは想像もつかない。
「私を舐めて貰っては困りますわ♪」
ウズメは醜い姿をした魔物の群れを見ても一瞬の動揺も見せず、むしろ凛とした表情で微笑み答えた。
「スサノオ、ウズメさん!気をつけて!」
オツキはスサノオ達に後ろからエールを送る。
「グワアアァ!!」
化け物共がスサノオ達に襲いかかってきた。
スサノオは大勢の化け物を相手に肉弾戦を繰り広げた。
ウズメも負けていなかった。
ウズメは舞い踊るように敵の攻撃をひらりとかわし、手に持っている投げナイフで次々と化け物の急所に刺し、瞬殺した。
その戦い方も見ている者を魅了してしまうものがある。
スサノオ達が戦っている間、タヂカラオが後ろからからやってきた。
「僕を一人にしないで欲しいんだな~!!」
こうしてスサノオ達は化け物共を蹴散らしながら頂上へと向かった。
もう少しでタケルがいるだろう頂上に着こうと言う所に、階段の前に赤いオーラを放つ刀が床に突き刺さっていた。
その前に立つスサノオ達。
「何だこれは…?」
「これはイザナギの刀と言って昔イザナギと言う英雄が使っていたとされる刀です。そのような貴重な刀が何故このような形で突き刺さっているのか…」
ウズメは不思議そうにその刀を見る。
その目の前の刀はまるでスサノオ達をあざ笑っているようにも思われた。
その時その刀から謎の声が聞こえてきた。
(スサノオよ、そなたがここに来るのを待っていた!)
「だ、誰だあんた!」
スサノオは驚くようにその刀に問いただす。
(我はイザナギ、かつてはこの刀を手に魔物と戦った。)
イザナギの化身である刀はスサノオに語りかけるが、スサノオは何故自分なのか理解出来なかった。
「でもこの刀を使える奴は沢山いるんだろ?何故俺なんだ?」
イザナギは答えた。
(多くの野心ある者達がこの刀を手にしてきた。しかしこの刀は本人の精神によって悪にも正にもなる、多くの者は刀の使い方を誤り、破滅していった)
イザナギは語る。その刀は持ち主に超人たる力を与えるが、精神波によっては持ち主に破滅の道を歩ませてしまう。
タケルが良い例である。
(そなたは安定した精神波が流れている。そなたならこの刀を正しい方向に使えるはずだ!)
スサノオはイザナギの言葉に息を飲んだ。
「あんたの言葉、信じて良いのか?」
スサノオは刀に尋ねた。
(偽りは無い、さあ、この刀を持ち、倭国、いや世界に平和をもたらしてくれ!)
スサノオはおそるおそる手を刀に伸ばしていく。
そして刀を握ったその時、不思議な力がスサノオに流れてくるのを感じた。
そしてその血のような赤いオーラは何と金色に光り輝いた。
「スサノオが持ったらピカピカになったよ?何で!?」
タヂカラオはビックリする。
「この刀は本物の勇者が握ると金色に光り輝くと言う…もしやあなたは…」
ウズメは刀を手に持つスサノオを見てその神々しさに言葉を失う。
「スサノオすごい…!」
オツキも感心を向けた。
「勇者か何だか知らねえが偉い人の言う事だから間違いないんだろうな?とりあえず急ごうぜ!」
スサノオはタケルが待っているだろう頂上へと登った。
頂上に辿りつくスサノオ達。
スサノオ達の前には、氷に閉じ込められた人々の姿があった。
そしてその中心には高天原の女王アマテラスがいた。
ところがタケルの姿は見当たらない。
その代わり、巨大な何者かがスサノオ達の前に立ちはだかった。
赤い甲冑に身を纏った怪物。
その時どこからかタケルの声が聞こえてきた。
(その刀を手に入れたのかスサノオよ、その勇気たるや天晴(あっぱれ)なり!)
タケルらしい声はスサノオをあざ笑うように言った。
「くっ、タケル、こんな事して何になる!そこまでして人間を苦しめたいのか!?」
スサノオは吠える。
(ふん、見てみたいのだよ、人間はどれだけの試練を越えられるかな!)
タケルは言葉を返す。
「どこまで意地悪なの!?」
オツキも言葉をタケルに投げかける。
(何とでも言え。ところでのんびり会話して良いのか?カグツチが今にもお前らを食べたそうにしているぞ!)
そのカグツチと呼ばれる怪物はスサノオ達に襲いかかってきた。
それをすかさず避けるスサノオ達。
「タヂカラオ!オツキちゃんをお願いね!」
「わ、わかった!」
ウズメは大きな体格のタヂカラオにオツキを守るように言い、戦いに参戦する。
タヂカラオはオツキを守るようにカグツチの攻撃に備えた。
スサノオはカグツチの攻撃をかわしながらタケルに言葉を投げた。
「人間はな!その気になれば試練なんざ何度でも乗り越えられるんだ!神だか何だか知らねえがてめえなんかの言いなりになんかならねえ!」
タケルは口元をにやつかせる。
「ふん、ならば見てみたいものだな!」
スサノオの持つ刀は一層輝きを放つ。
カグツチは地獄の炎によって焼かれ、鍛えられた金属で作られた甲冑を身に纏った武者。
一般的に使われる刀剣はおろか砲や銃などといった現代兵器すらも跳ね返してしまう程の硬い金属で作られている巨人だが、
スサノオの持つイザナギの剣は持ち主に多大な力を与え、斬れ味も相当なもので、スサノオはそのカグツチの振り回す斧を自然で培われた運動能力と反射神経で身を躱(かわ)す。
カグツチの斧は床や壁に跡を作る。
ウズメには出番は無いようだが、タヂカラオやオツキを守るようにナイフを構えていて、スサノオは自ら囮(おとり)となって、カグツチを挑発しながら避けていく。
「そこだ!!」
隙を見たスサノオはイザナギの剣の先端で、カグツチの目の部分を突き刺す。
カグツチは腕でスサノオの体を振り払うように殴る。
「スサノオさん!」
無事を叫ぶウズメ達。
スサノオは一回転して着地するが、カグツチの標的はスサノオでは無くウズメに向けられていた。
ウズメは戦闘能力はそこそこあるものの生身の人間であり、女性、スサノオのようにイザナギの剣を扱える勇者では無いし怪力でも無い。
さすがのウズメもカグツチの前には蛇に睨まれたカエルの状態だ。
「いてて…あの野郎…ってウズメが危な…いてて…」
スサノオはウズメを助けに出るが頭を殴られた衝撃で頭の痛みに耐えかねてかがんでしまう。
その間、カグツチは斧を天井に上げウズメを一網打尽にしようとしている。
ウズメはカグツチに怯み、顔はこわばったまま動けないでいる。
ついにカグツチの一閃が放たれる。
「ウズメさん!」
叫ぶオツキ。
ウズメは死を覚悟するがそんな時、大きな影がウズメの前に現れる。
それはカグツチの斧を白刃取りにし、ウズメへの攻撃を防いでいた。
「タヂカラオっ!」
「タヂカラオっ、ナイス!!」
カグツチとタヂカラオがぜり合いをしているのが幸いにもカグツチの隙を作っていた。
そしてスサノオはイザナギの剣を構え、カグツチに突進する。
「おりゃあああぁ!!!」
そして空中にダイブし、カグツチの脳天に届いた所でスサノオはカグツチの頭をかち割らんとするばかりにイザナギの剣を縦に振り下ろし、カグツチの身体を真っ二つに斬り裂いた。
「グワアアァ!」
断末魔をあげて崩れ去るカグツチ。
こうしてスサノオ達はカグツチを撃破した。その後、スサノオ達の血の滲む奮闘で氷の要塞は溶け、高天原と人々は救われた。
「おお!これは懐かしき我が都!」
「身体が動く!私達元に戻ったのね!」
そして、人々もその氷から解き放たれ、歓喜の声を上げた。
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