いざ大陸へ

オモイカネの神社に戻ってきたスサノオとオツキ。


薄暗い部屋を炎で照らし、スサノオ達はオモイカネから知恵を授かる。


「スサノオよ、タケルの強大な力に対抗するにはタヂカラオの力を借りる必要がある。彼は一部隊を殲滅出来るだけの力を持ち、必ずタケルの力に立ち向かう事が出来るだろう」



タヂカラオと言う者は巨大な身体を持ち、人間離れした怪力を持つ。酒を呑む事でより一層力を発揮すると言う。



「しかしタヂカラオと言う男は大陸にいる、彼に会うには海を越えて大陸に向かわなければならない!」


「た、大陸!?」


大陸とは倭国(日本)と隣接する陸地で、倭国よりも遥かに大きな大地が広がる。


そして倭国の先進国よりも遥かに文明水準は高い。


その代わり国と国の取り合いや戦争を繰り返してきた歴史から、猛々しく、狡猾な民族性でもある。



スサノオ達はオモイカネから大陸へと続く船を手配してもらい、大陸へと渡る事にした。


「大陸の奴は強いと言われてるからな、腕が鳴るぜ!」


「大陸かあ、まさか生きている内に行けるとは思ってもみなかったよ♪」


二人は胸を踊らせながら大陸へと向かった。


ーーー


海を越えて大陸にやってきたスサノオ達。


大陸は噂の通り、豪華な建築物が立ち並び、民はまるで倭国の皇族のような服を着こなしていた。


「ここが大陸!?すごいすごーい!!」


感激するオツキ。


一方でスサノオは


「しかし自然が少ねえなあ、俺には馴染めそうにないや」


と批判的に都市を見ていた。


「スサノオったら田舎者なんだから」


オツキはそんなスサノオに蔑むように言う。


「どっちが田舎者だよ、キャーキャー騒いだりして一緒にいるこっちが恥ずかしいぜ」


二人はいつもの調子でやりとりしていた。


その時、二人の大陸人がスサノオ達を見て何やら話しながら笑っていた。


何やら馬鹿にしているようにも見える。


「あいつらさっきから俺たちを見て笑ってるぞ?」


スサノオはそんな二人に何だ?と言う表情で僅かに視線を向ける。


「何か早口だし良くわかんないけど…何て言ってるのかな?」


(彼らはお前達の身なりを見て笑っておる、まあ大陸人の倭国人への反応だ、気にする事もあるまい)


杖からオモイカネは言った。


「私達を馬鹿にしてるの?許せない!!」


オツキはむくれる。


(そうかっかするな、倭国は今はこうだがいつかは必ず大陸の文明を凌駕する事になるだろう)


オモイカネは悟るように言う。


「私達の国が大陸を超えるの!?見てみたいな未来の私達の国♪」


オツキは胸を踊らせ目を輝かせた。


「超えねーよ、むしろ倭国は自然のままが一番だぜ」


スサノオはため息をついた。


「夢が無いのねスサノオは!」


オツキは呆れ顔で皮肉を叩く。


その時、ドンッとスサノオの肩に何かがぶつかる。


『おいてめえぶつかって謝りもしねえのか!?』

『みすぼらしい格好しやがって、乞食らしく道譲りやがれ!』


目の前を見ると、柄の悪い三人の男がスサノオ達に何か早口な大声で文句をつけて絡んできた。


「何だ何だ?」


「こ、怖いよ~」


(大変じゃ、スサノオ、こやつらは喧嘩を吹っかけて来ている!今は逃げるのじゃ!)


オモイカネはスサノオ達に忠告してきた。


「逃げようよスサノオ!」


オツキは慌てながら言う。


しかしスサノオはむしろ不敵な笑みを浮かべて楽しそうにしていた。


「へっ、おもしれえ!大陸の奴らとは戦ってみたかったんだ!」


スサノオは軽く足ならしをしながら構えた。


三人の柄の悪い大陸人はスサノオに襲い掛かってきた。


「よっと!」


スサノオは軽々と男達の攻撃をかわす。


「何でえ!大した事無いじゃん!」


三人の男もそれなりに強いがスサノオは自然の中で生きた野生児。


スピードとパワーはスサノオが勝っていた。




周りの大陸人はスサノオと三人の男の争いを見物しては歓喜の声を上げていた。


大陸語なのでスサノオ達には何言ってるのかわからないが、


「おっ喧嘩だ!」


「やれやれー!」


と騒いでいる。


大陸(中国)は文明水準は高かったが好戦的で無秩序な所は今も昔もかわっていない。


スサノオは三人の男達を見事倒した。


スサノオ達を囲み見物していた民達は歓声の声を上げていた。


「この人達やたら大声だし騒音みたいで耳が痛くなっちゃうよ~」


オツキはあうえうと言わんばかりに民達の大声を耳障りに思った。


(なら民達の声を聞き取れるようにしよう)


オモイカネはスサノオ達に術をかけ、民達の言葉をわかるようにした。


「あんた乞食みたいなカッコして強いんだな!見直したぜ!!」


「倭国人ってこんなに強かったのか!?」


「何だ何だ?こいつらいきなり倭国語喋りやがって」


民達の声を聞き取れるようになったスサノオはその歓声に戸惑った。


「すごい、聞き取れるようになっちゃった…」


オツキはオモイカネを凄い人物だと改めて感心しながら民達の声を聞いていた。


「まあお前らの言葉がわかるようになったから良いや、ところで俺達タヂカラオって奴を捜してるんだ、お前ら知ってるか?」


スサノオは民達に聞いた。


「げっあんたタヂカラオに会いに行くのか!?さすが喧嘩に強いだけのことはある!」


民の一人は驚いた表情で答えた。


「近寄らない方が良いわよ、タヂカラオの周り3キロメートルは近寄ってはいけない事になっているから…」


「どういう事?」


大陸の女の言葉にオツキは耳を傾けながら聞いた。


「奴は母親を亡くしてからずっと耳がつんざくような声で泣いている。その爆音でタヂカラオのいる町は壊滅してしまったんだ」


民の一人が身体を震わせながら言う。


「このままじゃ会いにいけそうも無いな、どうすりゃ良いんだ?」



スサノオは困った表情になり、聞いた。


「ウズメと言う女性ならタヂカラオをなだめる事が出来る、しかし残念ながらウズメと言う女性はここにはいない」


「どこにいるの?」


「遥か西の天竺と言う所さ、歌を売りに行ってるんだが彼女の歌はどんな猛獣もなだめてしまうんだ」


男の一人は目を輝かせて語った。


「そうか、彼女の力も借りればタケルもやっつけられるかも知れないね!」


オツキは頷き、スサノオに言った。


「女の人を戦場に連れていくのは気が引けるが、しゃあねえな」


スサノオは複雑な表情を浮かべつつ、オツキの言葉に同意した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る