珈琲を飲みながら

和奏もなか

第3話 指先にふれて

「苺ちゃんへ」

そう書かれた手紙が私の元へ届いた。誰だろう。宛名を見ると、沙知のお母さんからだった。ドクン、と心臓が跳ねた。と言うより、止まった、と言うべきか。ぐっと心臓を掴まれたような感覚がした。友達についた嘘がバレそうになった時の様な感覚だった。読むべきか。この手紙を、私は読むべきなのだろうか。考えるより先に、手が動く。なんてことなくて、実際は封筒を手にしたまま、固まった自分がいた。ふるふると、震える手で封をきる。中には、一冊のメモ帳と手紙が入っていた。手紙には、こう書かれていた。

「苺ちゃんへ、

突然のお手紙ごめんね。沙知の部屋を整理していたら、これが出てきたの。どうしても、苺ちゃんに読んで欲しくて……。

無理に見ろとは言わないわ。でも、持っていて欲しいの。きっと、あの子もその方が喜ぶわ。

沙知の母より」

これ、とはこの手帳のことだろう。百均で売っているような安っぽいものでは無い、しっかりとした皮の生地。これを沙知が……。

表紙を開く。それだけの事が、怖くて仕方ない。なぜ怖いのかは分からないけど、手が震えていて、躊躇っている、ということは自覚出来た。何故?その疑問に蓋をして、手帳の表紙を、開いた。

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珈琲を飲みながら 和奏もなか @wakanamonaka

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