第2話 ー光の巨大戦艦ー

 《グルクルース》の言葉の後、第十二艦隊各艦は各々の艦首に埋め込まれたレーザー砲から攻撃を放った。

一瞬で飛んでいったレーザーは、コグレ基地の端に存在する滑走路に命中し炎を散らす。

コンクリートが舞い上がり、大きなクレーターが築かれる。

今離陸して、第十二艦隊を迎撃しようとしていた戦闘機の翼がもがれ、補助車両が傾く。

ハンガーの鉄骨がひしゃげ、折れ曲がり、整備員の何人かをその下に飲み込んだ。

ミサイルを貯蔵していた武器庫に一発のレーザーが命中したかと思うと次の瞬間、きのこ雲を上げて大爆発を起こし空を揺らした。


『《グルクルース》。

 ベルカの艦艇が離水しそうです。

 あちらに攻撃を集中します』


「了解、《シンシア》。

 敵は“軌道湾曲装置”《イージス》を備えているだろうから出来るだけ近くで……な」


 第十二艦隊は機関を停止して安全距離からの砲撃に攻撃態勢を移行した。

こちらの射程とコグレの射程はほぼ同等。

レーザーはエネルギーが続く限り射程を持っている。

安全距離という名はもはや形骸化してはいたが未だに戦術としては理想のものだ。


『コグレからの発砲を確認!

 “光波共震砲”《こうはきょうしんほう》です!』


「来たか――。

 戦争はこうでなくてはならないんだ。

 反撃がない戦争など、ただの虐殺に過ぎない。

 何よりも、殺しがいがないんだよ」


《グルクルース》はぼそりと、誰にも聞えないように囁いた。

 艦内の赤い照明が“光波共震砲”のレーザー接近を知らせる警報を鳴らす。


「全艦、“伝導電磁防御壁”展開。

 数は五ぐらいでいいだろう」


『了解』


目に痛いほど発光しているオレンジ色の光が連合軍艦艇へ向けて殺到した。

数は軽く二十を超えている。

それは殺意を持ち、連合軍の艦艇をすりつぶそうとしていた。

だが当たる五百メートル付近で意志をくじかれることとなった。

白く発光する壁が前に立ちはだかったためだ。

 連合軍艦艇が備えるバリア、“伝導電磁防御壁”がエネルギーを吸収したためだ。

“光波共震砲”のエネルギーはすべて壁に防がれ霧散し、大気に消えた。


「ふん……。

 所詮は野蛮なルシアの技術だ。

 この“伝導電磁防御壁”が破れるわけがないだろう」


 《グルクルース》はそう言ってコグレ基地に視点をあわせた。

先ほどから続く絶え間ない攻撃によって要塞島はあちこちから黒煙を上げて燃えていた。

一本だけ残っていたテレビ塔が折れ、足元に存在していた民家を押しつぶす。

コグレ島のデータによれば民間人は一応、三万人が住んでいるんだとか。

 《グルクルース》は住居には攻撃をしないように、と指示を下すとまた視点を戻した。

小さな木が生えている丘に設けられた砲台がこちらに二門の砲門を向ける。

その砲口に光が溜まり、発射する、と言う瞬間を狙いすましたかのように味方の青いレーザーが砲台を射抜いていた。

装甲を貫き内部での爆発で吹き飛ばされた砲台が、丸々宙を舞いそり立った崖から転がり落ちてゆく。


『やったー!

 砲台一つ破壊したよっ!』


 《ミクミルー》がどうやらやったらしい。


「そうか、お前からからしたらこれがはじめての戦争だからな。

 しっかりと楽しみ、記録しておけ」


《グルクルース》は自分の初陣を思い出して口を緩めた。

あのときの《グルクルース》もこんな風に何かを破壊し、戦果を上げるだけで喜んでいたものだ。

今は第十二艦隊を率いる旗艦にまで昇進したのだがたまに思い出してしまう。

自分で自分をほめてみるも虚しさだけが心に残った。


『ちょ、こいつらっ!?

 《グルクルース》援護を!

 ZⅧ型駆逐艦二隻ぐらいこっちに回せないか!?』


虚しさをかき消すように《シンシア》からのお助けコールが入ってきた。

《アムステルド》から提供されるレーダーデータで確認するとシンシアを挟み込むようにベルカの軍艦が雷撃を繰り返していた。

《シンシア》の“伝導電磁防御壁”の負荷率が徐々に上がっていっているのを見て《グルクルース》はZⅧ型駆逐艦を二隻回すことを決めた。

通信回路を開き


「《シェル》、《デクスター》へ《グルクルース》より。

 《シンシア》の援護に回れ」


二隻の駆逐艦へと指示を下す。

ここで戦艦である《シンシア》に沈んでもらうのは面白くない。


『こちら《シェル》了解した』


『了解、《グルクルース》。

 ちょっくら行ってきます』




          ※




「くっそ!!

 後砲台は何基残っている!?」


 マックスは部下に怒鳴りつけんばかりに聞いた。

一つの爆発音が島を揺らし、砲台が減ったのを体全身で受け止める。


「あ、後三基ですっ!」


もう泣き出しそうな部下が涙声で報告して別の部下が


「被害は第三装甲まで来ている模様!」


と追加報告を投げつけてくる。

状況は絶望一色に塗りつぶされていた。


「よりによってこのタイミングで――!

 ヒグル(ヒクセス人の蔑称)のクソどもが!!」


マックスは上からぱらぱらと降ってきた砂を手で払った。

大きな液晶に島の状況が映し出される。

いつもはオールグリーンだったはずの液晶が真っ赤に染まり被害の甚大さを伝えていた。


「第三装甲融解!

 滑走路の損害大きく、迎撃機出せません!」


「修復装置を起動させろ!

 修理班は何をやっているんだ!」


 怒号と悲鳴が飛び交い、地下に設けられた司令室に再び爆発の衝撃が伝わる。

液晶にうっすら積もったコンクリート片を手で払いのけ、マックスは状況を把握しようと必死で目を滑らせた。

だが頭に入ってくるのは焦り、そして死への恐怖。

部下の報告も頭を素通りするだけで頭に定着することはなかった。


「コグレ艦隊の帰還は!?」


 おっとりとした女性の副司令もこのときばかりは血相を変えていた。

化粧なんてする間もなくたたき起こされた顔はすっぴんだったが、誰も気にしない。

指摘する余裕がない、というのが正しいか。


「あと五時間後になるとか――!」


マックスは報告を聴いて机を叩いた。

ペンが空に飛び上がり、微塵の砂が入ったコーヒーカップが倒れる。

中身の黒い液体が液晶にかかり、コグレが血を流しているように見えた。

マックスはぞっとしながらそれをふき取り


「遅い!

 間に合わないぞ!!」


レーダーに映る連合軍艦隊の光点を睨み付ける。


「忌々しいヒグルどもめ――!

 よりによってこの基地の艦隊が本島へ物資の輸送任務についているときに――!」


手をぎゅっと握り締め爪が掌に食い込んだ。

血がにじみ出て、マックスの軍服に模様を刻んでゆく。

敵を迎撃していた一隻の駆逐艦と四隻の魚雷艇を示す光点は残り一つとなっていた。

残りの四つは既に撃沈され、海底で漁礁となっているのだろう。


「魚雷艇撃沈!

 味方の最後の艦がやられました!」


レーダーに映っている青い点、最後の一つが消えた。

残りは敵を示す赤い点のみ。

勝機はゼロだった。


「救助隊を送れ……」


 マックスはぐったりとそばの椅子を引き寄せて座り込んだ。

古い錆びた椅子はマックスの体重を引き受け、ギィと鳴いた。


「司令――」


副司令が、マックスの肩を抱いて、叩いた。


「降伏するしかないか……」


破れた武将は消え去るのみ。

マックスはサングラスを外し、タバコを口に咥えた。

精密機器の密集する司令部では煙の出るタバコは吸えない。

本当は煙の出るタバコが吸いたいのだがそれを買う余裕も今はない。


「降伏ですか!?」


部下の一人が降伏を示唆した司令に信じられない、といった顔を向けた。

ずずん、と衝撃音が走り、天井が揺れた。

蛍光灯が消え、赤い非常灯に切り替わる。

今ので最後の発電機がやられたようだ。

残りは非常用バッテリーのみ。


「敵の残りの数は、レーダー員」


力弱げにマックスはレーダー員に聞き返した。

 一隻も撃沈していないのに聞き返したのには、降伏を部下全員に受け入れさせるという狙いがあった。

奇跡が起こって敵が勝手に沈んでくれているかも、という意味の分からない期待もあった。

俺が就任中にこんなことが起るとはな――。

自分の不幸さを呪ったマックスはサングラスを鼻に乗せ、小さくなってきたタバコを吸い上げた。

赤い火がさらに燃え、タバコは一気に縮んだ。


「は、先ほどと変わらず戦艦二、巡洋艦四、駆逐艦五、特殊艦艇一です」


レーダー員もマックスと同じぐらい力弱げに報告し返した。

司令室内が敗戦、という現実を受け入れはじめていた。

奇跡は起こらず――か。


「こちらの残存勢力はどのぐらいだ?」


「は……。

 砲台が二基――です」


勝てるわけがない、誰かの背中から滲み出してきていたその言葉が次第に全員に広がった。

マックスはタバコを灰皿に捨て、副司令に「ありがとう」と言って机に肘を付いた。

降伏するしかない。

これ以上部下を死なせるわけにはいかなかった。

静かに敵に無線をつなげるよう指示を出し、繋がるのを待つ。

 司令となって三年間。

ずっとコグレは平和だった。

だからといって訓練をさぼったりしたわけではない。

ある程度の艦隊なら撃退できる自信があった。

それはコグレ艦隊という主力があってこそ。

主力がない今、コグレは静かに殴られるしかなかったのだ。


「司令、敵に無線がつながりました」


「よし。

 カメラをこちらに向けろ」


体を起こし、服を調える。


【私は連合軍第十二艦隊旗艦です。

 無駄な犠牲は出したくありません。

 分かっていますね?

 降伏してください】


ヒビの入った液晶に容姿端麗な女が映し出された。

頬に数字が入っていることから連合軍艦艇の核であることが読み取れる。

彼女はこちらを、檻の中のケモノを見るような目つきでみていた。

汚物を見る目。

この野蛮人が、と蔑んでいる目つきだった。


「そのために無線をつなげたのだ。

 降伏する。

 マルグルルス条約に基づく対応をお願いしたい。

 その一。

 捕虜は丁重に扱うこと。

 その二―――」




          ※




『案外楽でしたね……』


舷側に一発雷撃を食らい煙を吐いている《シンシア》が言った。


『あんた何言ってんの!?

 全然駄目だったじゃないのー!

 ばーか!!!

 《グルクルース》様が援軍を送らなかったら――』


『んだと、この野郎!!!

 巡洋艦風情が、戦艦なめんじゃねぇ!』


 《ミクミルー》がけらけらと《シンシア》をあざ笑う。

部下達のじゃれあいを眺めつつ、《グルクルース》はコグレ基地に視線を落とした。


【――以上だ。

 ベルカ帝国所属要塞島コグレは………に……り】


急に通信にノイズが混じり始めた。

さっきまではクリアだったというのに――。

忌々しい。


「おい、どうした?」


《グルクルース》はコグレ基地に向けて何度か発信してみるもあっちが受け取らない。

少し苛立ちを感じた《グルクルース》は更なる攻撃を加えることにした。

降伏しないというなら仕方ない。

全滅するがいい。


「そうか、そこまでして死を望むかルシアども。

 脅しだけでいいと思ったが全滅を望んだか。

 全艦、砲門開け。

 再び攻撃を――!」


 口をゆがめ、殺戮への道を一歩踏み出そうとした《グルクルース》の頭を《アムステルド》からの無線が蹴っ飛ばした。


『レーダー……から……へ!

 巨大な――が!!

 繰り替えしま……!』


悲鳴のようにも聞える声。

恐怖に殴りつけられ、それでもなおレーダーの役目を果たそうとしている《アムステルド》。

 次の瞬間、ノイズが無線を支配し《アムステルド》は完全に沈黙した。

同時に、《アムステルド》からのデーター供給で動いていたレーダーが沈黙した。

あまりにも急なこと。


「!? 

 ど、どうした 《アムステルド》!

 応答しろ、《アムステルド》!

 くそっ、レーダーを起動しろ!

 何かおかしいぞ!」


『りょ、了解!』


普段はあまり取り乱さない旗艦の取り乱しようにびびったのか、素直に全艦が従た。

《グルクルース》のマストに設けられたレーダー板がゆっくりと回転しはじめる。

 レーダーは電波を発信して跳ね返ってくる電波を受け取ることにより目標の大きさや距離を測るものだったが、今回役にはたたなかった。


「ここにもノイズが!?

 くそ、ルシアどもの新兵器の仕業か!?」


 真っ暗だったレーダー表示板に電気が通達され、《グルクルース》の目に飛び込んでくる。

普段はクリアなはずのその液晶にもノイズがかかっていた。

味方艦の信号すら見分けられないぐらいに、密度が濃い。

白い点が全体に降りかけられたようにひしめきあっている。

通常レーダーは使い物にならない。

《グルクルース》はそう判断するとともに“光レーダー”に切り替えた。

これは電波の代わりに光を使うもので原理に大差はない。

太陽すら感知してしまうので信用度は低いがジャミングを受けないという利点がある。

どの艦艇も補助レーダーとしてつけているものだ。

ぱっ、と表示板のノイズがなくなり変わりに巨大な艦影が現れた。


「な――!?」


 思わず息を呑む《グルクルース》の背中に冷や汗が吹き出た。

大きさを示すメーターは一キロを軽く超えていて距離は約二千にまで迫っていた。

近すぎる距離。


「全艦緊急回避!

 ブレイク、ブレイク!」


静止していた第十二艦隊の機動が息を吹き返した。

エンジンが唸り、青い炎が艦尾から噴出される。

回避に専念した艦隊の姿がそこにあった。


「“伝導電磁防御壁”も最大まで増やせ!

 念には念を入れるんだ!」


嫌な予感がすると共に《グルクルース》の心にどす黒い恐れがこみ上げてきた。


『旗艦命令了解!

 っ、な、なんだあれは!?

 《グルクルース》!

 こちら《シンシア》!!

 左舷に!!

 あれは――!』


 瞬間、《シンシア》が張っていた“伝導電磁防御壁”を貫いて四十を超えるレーザーが食らいついていた。

戦艦の持つ装甲と“伝導電磁防御壁”を一撃で貫いたレーザーはその勢いを衰えさせることなく

斜め右上に展開していたZⅧ型駆逐艦一隻を巻き込み、空へと消えていった。

一瞬の出来事だった。


『そんな――っ!?

 《シンシア》、《ガーベル》!』


 《ミクミルー》が、炎を上げて轟沈してゆく二隻の名前を呼ぶ。

今の一撃で見事に機関部を射抜かれた《シンシア》はゆっくりと高度を下げていった。

空気抵抗を考えられ、埋め込み式の砲台まで盛り込まれた細長い船体に穿たれた穴。

《グルクルース》が今まで見た中で一番大きな破損口だった。

《シンシア》がぐらりと舷側を向けた瞬間その穴をくっきりと見ることが出来た。

四十六センチを軽く超える大口径砲。

熱でこじ開けたような独特の跡はベルカの“光波共震砲”を明記している。


「くっ――!?

 そんなバカな!」


 赤く解けた装甲が剥がれ落ち、その細い船体が歪んでゆく。

やがて《シンシア》は海面に艦首から突っ込むと巨大な水柱を吹き上げた。

もう一隻巻き込まれたはずの駆逐艦は船体中央部がぽっかりと消えていた。

それだけ巨大なエネルギーに食いちぎられたということ。

駆逐艦の二つの破片は《シンシア》程目立たなくとも海に一滴を投じた。

それを見ている《グルクルース》はぞっとするような殺気を感じた。

唸る機関で押し出された《グルクルース》の船体は自然と巨大な艦影の方へと向いていた。

何としてでも破壊してやる――!

仲間の敵討ち、あだ討ちだった。


「全艦、進路を同調せよ!

 敵の正体を確かめるんだ!」


『了解!

 《シンシア》をやった奴、許さないんだから!』


《ミクミルー》の声には悲が入っていた。

感情は機動を鈍らせる。

そう敵も思ったのだろう。

 一秒後には簡単にも《ミクミルー》の船体が木っ端微塵に吹き飛ばされた。

艦橋がへし折れ、砲台が土台から抜け落ちる。

破片は下に展開していた駆逐艦二隻を巻き込むと足を引っ張ったまま海へと突っ込んだ。

《シンシア》の水柱にも並ぶ大きさの水柱が二つ、起立する。

沸騰したように濁り白に染まる海は新たな命を三つ飲み込んだ。

“伝導電磁防御壁”を簡単に貫くなんて。

明らかに今までのベルカの砲とは威力が違う。


「《ミクミルー》!?

 くそっ、一体どんな戦艦なんだ、ルシアの野朗!」


 《グルクルース》の回頭が完了したときだ。

艦橋内にあるスクリーン一杯に巨大な戦艦が映し出された。

奇妙な模様が甲板を走り、不気味に輝いている。

砲塔は数え切れないほどこちらを向いており、どれも光を携えている。

六連装砲が特徴的な甲板に、真っ赤に塗られた船底。

喫水下にもびっしりと武装はくっついていた。

一昔前の大戦の戦艦をその場に浮かべたような、そんな形を巨大戦艦は模していた。

まがまがしさの中に備えられた美しさ。

すらっと細長い船体。

思わず《グルクルース》は見惚れてしまった。


『《光の巨大戦艦》――!』


艦隊の生き残りが食いしばった歯の隙間から言葉を吐き出した。

光の――巨大戦艦。

《ミクミルー》が《シンシア》と話していた化け物――。

《グルクルース》が噂の真を認めさせる猶予を与えず、巨大戦艦の砲門が力を解放した。

 五一センチの直径を誇る“光波共震砲”のレーザーは《グルクルース》の“伝導電磁防御壁”を射た。

たちまち負荷率は百を超え、システムはショート。

バリアを剥ぎ取られ丸裸になった《グルクルース》の船体を艦首から艦尾まで合計二十本ものレーザーが貫通した。

機関部を吹き飛ばし、心臓部を抉り取られた第十二艦隊旗艦はその場で爆発の炎を膨れ上がらせた。

竜骨は一瞬にしてへし折れ、装甲により逃げれなかった爆風は壊れやすいところを突き破って一気に噴き出した。

主にその噴出口となったのは艦橋部分で、艦橋部分は基部からごっそりと船体から剥がれ落ちた。

その中にいた一つの核の命は恐怖を感じる間も無く炎に体を焼き尽くされ、命を落とした。

第十二艦隊の壊滅を眺めるように《光の巨大戦艦》はその場に静止していた。

《グルクルース》は小爆発を繰り返しながら海へと落ちてゆく。

海は《グルクルース》の大質量を受け、荒れ狂ったのも一瞬、ゆっくりと飲み込んでいった。

 水蒸気爆発を起こした《グルクルース》を見た残りの第十二艦隊もこの空域から逃げようと必死だったが《光の巨大戦艦》はそれを許さなかった。

次々に食らいつき、スクラップへと変えてゆく。


『ルシアの野朗が――!!』


 捨て台詞とともに最後の一隻が命を食い散らかされた。

コグレ基地を追い込んだ第十二艦隊はこうして『消滅』したのだった。





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