第5話
現時刻、12時50分、──入学式開始まで残り10分。
俺は恐らくカツアゲかイジメの現場に現在進行形で遭遇していた。
さて、どうするか⋯⋯だな。
このまま気付かれずに相手が去るのを待ってもいいが、入学式に間に合わなくなる。
受付だけ済ませて式に出ないってイメージ悪いしな。それにさっき忠告してくれた彼女の為にも絶対に式には出たい。(お近づきになりたい)
しかし、だからと言ってこのまま個室を出た所でヤンキーは犯行現場を目撃されたことになるので俺を無事に返してくれる保証はない。
俺はう〜んと顎に手を当てて考える仕草をする。
おいおいおいおい、待て待て待て待て!
あいつら個室の方に近づいてきてないか。
俺は校舎にはもう誰も居ないと思っていたので個室に鍵を掛けていなかった。
あまりの緊張感にドクンドクンと心臓の音が全身に伝わる。
⋯⋯
「ハハッ、やっぱ校舎にはもう誰もいねーみてーだなぁ」
「さっさと来い! こっちはもう我慢できねーんだよ!」
奴はそう言って隣の個室にもう1人を連れて入って行った。
危なかった。今のはマジで危なかった。
とりあえずは見つからなかったことに安堵する。鍵を掛けていなかったことで逆に誰も居ないと思わせることができたのだろうか?
そんなことよりもと、腹の音が再度メロディーを奏でそうな勢いで空腹を知らせてきた。
こんな状況でもしっかりと腹は減るのな。でも腹の音で見つかってしまうのはごめんだな。
まぁ、それじゃ──
俺は再度両手を合わせ合掌をする。
頂きます。
「頂っきまーす」
俺と同時に隣の個室からやけにノリノリな声でそう聞こえてきた。
なんだ、あっちも昼飯食べてんのか? どういう状況なんだ?
あちらの様子が気になりながらも弁当に箸を付ける。
バタバタバタと横の個室から足を震わせている音が聞こえてきた。
なんてオーバーリアクションだ。そっちの弁当そんなにうまいのか?
よし、それじゃあ俺も。と銀ジャケを口元に運んだ瞬間。
ダンッ!!
勢いよく壁を殴る音が聞こえた。
ビクッ?!
突如として起こされた大きな音に体が強張ってしまう。
ベチャ。
何かが床に落ちた音がした。⋯⋯ん?
ヤベェ、シャケ落としたーーー。
「ん? 何だこれ。なんでこんなとこにシャケが落ちてんだ⋯⋯横に誰かいんのか?」
ヤバイ!今度こそマジで終わった。
となりのヤンキーであろう奴が横の個室からこちらに向かってくる。
てか何で俺も個室と個室の小さな隙間にシャケ落としちゃうかなー。もう! このうっかりさんめ(テヘペロ)
じゃねーだろー!
どうするどうするどうする。
とにかく与えられた情報を整理しろ。
絶対絶命の状況に陥った俺はどうにか現状を打破しようと頭をフル回転させる。
✳︎✳︎✳︎
「さっさと来い! こっちはもう我慢できねーんだよ!」
足をバタバタさせた直後、壁を殴った。
⋯⋯これだ!
ギィーっと個室の扉が開けられる。
そこにはやはり絵に描いた様な金髪の柄の悪そうなヤンキーがいた。
しかし、俺はそんなヤンキーにも全く動じていなかった。
なぜなら既にこの絶対絶命の場を切り抜ける準備ができていたからだ。
俺は手に持っていた物を潔くヤンキーに差し出す。
「⋯⋯お前、何の真似だ」
あれっ?君ってそんな感じ?? タンパク質 @tanpakusitu
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