第4話
うぉーりゃー。
俺は別棟に猛ダッシュで向かっていた。
現時刻、12時46分。
校舎のある別棟までは恐らく2分ほどで着くことができるはずだ。
予定では48分に別棟に到着→55分に弁当を食べ終えた後→56分で着替えて→58分には体育館に戻る。
よしっ、まだ間に合うな。
無事予定時間内に校舎に到着することができた。
校舎の中にはまるで人の気配が感じられなかった。恐らく、2,3年の先輩方も入学式には参加しなければならないため、既に体育館移動をした後だったのだろう。
校舎内にはただ静かに、ゼーゼーと俺の息を切らした音だけが響いていた。
俺はすかさずトイレに直行する。
早速個室に入った俺は、鞄から弁当を取り出した。
今日の昼飯はちょっと豪華に特性幕の内弁当だ。
コンビニで幕の内フェアなるものが開催されていたのだ。勿論俺は幕の内フェアが開催されているなんて知らなかったし、そもそも寝坊したからコンビニに寄った訳で。
この弁当は寝坊したことで産み出されたと言っても過言ではなかった。
寝坊したからこそ手に入れられた幸せ⋯⋯この切羽の詰まる様な状況の中で唯一の嬉しい誤算であったと言える。
便座に腰掛けながら、木目のデザインが施されたプラスチック製の弁当箱を開ける。
おぉー、すげーなー。
特性幕の内は胡麻の振りかけられたツヤツヤの白米に数多くの彩り豊かな副食、何より中央にデカデカと盛り付けられた銀ジャケが周りのおかずとの調和をより際立たせていた。
俺は両手を合わせて合掌の仕草を取る。──と、その時
「おい! さっさっとこっちに来い!!」
男の強い怒声が聞こえてきた。
俺は思わず、息を殺す。
「おい、わかってると思うが叫び声の1つでもあげてみろ、てめーマジで潰すぞ。」
⋯⋯足音からして2人いるな。
声だけではいまいち様子がわからないが、1人の男が一方的に怒鳴り散らしていることから、恐らくイジメかカツアゲ等の脅しであろう。どちらにしろ、ろくでもない最低の行為だ。少なくともそれだけは理解できた。
コツコツとローファーがタイル張りの床を踏みしめる音がする。
どうやらトイレに入ってきたらしい。
「こっちは今、一分一秒でも時間が惜しいっていうのにこんなとこでしょーもないことしてんじゃねーよ!」
って言いたい。
でも声からしてこいつは相当に柄の悪いやつだ。
俺の言葉が通じるとは到底思えないし、それに何より怖い。こういうのは関わらないのが1番だ。
時間を確認すると12時50分。
時間的にもそろそろキツイな。
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