宇宙を漂うガス状生命体には、世界はこう見える

異世界人に体を貸す代わりに、一時的に異世界の生命体へ転生できる装置をもらった主人公。さっそく使用するが、記念すべき最初の転生先は宇宙空間! そして自身は宇宙空間を漂うガス状生命体だった!

体の大きさはメートルどころか光年単位だし、体温はほぼ絶対零度。人間とはかけ離れた存在になりつつも、冷静に現状を分析して有意義な生活を送ろうとする主人公の姿が面白い。

ガス状生物ならではの形で他の宇宙生物とコミュニケーションを取ったり、運動をしたりと日常を送る様子だけでも楽しく、独自の音楽や歴史に触れて異文化を体験する姿は、まさに未知との遭遇といった感じで非常にワクワクしてしまう。

また宇宙生物以外にも電子に意識を宿したり、人類と似て非なる宇宙人に転生して学校生活を送ったりする様子は実に新鮮。大きな事件は起こらないものの、未知の生命体として生きる知的興奮が味わえるSFらしい楽しみのある作品だ。

(「人外な転生物語」4選/文=柿崎 憲)