第97話 余談
今回も睡眠中の自動帰還にしておいたので、向こうの世界で眠り朝は地球で目覚めた。転生時の身体も今回はまったく地球人と同じだったので、違和感もほとんどなく復帰できた。
4回目の転生先は、地球人と全く同じ身体のヒトが住む星だったけれども、その惑星での人間として文明を気付いていたのは豚の顔をした豚人だった。まるで昔のSF映画の猿の惑星ならぬ豚の惑星だけど、地球人と同じ見た目のヒトも迫害されているわけでもなく社会の一員としての役割を果たしていた。これは地球での介助犬や警察犬のように社会に役立つ動物としてのあつかいに似ているようにも感じた。
そして映画のサルの惑星のように、過去にはヒトが文明を気付いていたけれども戦争で退廃したという歴史も知ることができた。ヒトそっくりの機械というこれまたSFに登場するようなロボットもがいたり、地上に接してはいないけど宇宙エレベーターがあったりと、今回の転生は最初の転生に次いでSF風だったと感じた。
転生から帰ってからはいつものように、体験を忘れないように文章にまとめている。
この文章もその時にまとめた物がもとになっている。
記憶に頼って書いているので忘れたことも多いし、あとから気になることも多い。たとえば転生先の国や政治がどうなっているのかは、ほとんど知る機会がなかった。
警察のような秩序を維持する組織があるのだから、それをまとめる政府や国も当然あるだろうけど、それが民主政治なのか法権政治か、はたまた全く別の何かなのかみたいなのは転生時にはあまり知ろうとしなかったし、記憶にも残っていない。
宇宙船の実験なども、予算や規模からすれば国がかかわっている可能性が高いのだろうけど、特にそういうことを聞いた記憶はない。研究所の責任者とかも誰だったのか。そんなことが後になってから気になったけど今となっては知る由もない。
気になることと言えば、向こうで接点の多かったアレク技官のことでわからないことがある。彼がというか、彼なのか彼女なのかということなのだけど、覚えていない。
向こうでは確認したはずなのだけど、女っぽい男性なのかそれとも男っぽい女性だったかというのがごっちゃになってしまい、わからなくなってしまったのだ。
これも今となっては知る由もないので、記録を書くときにもどっちだったかなあと思いながら書いていたので表記が安定しないかもしれない。
転生から戻って何日かして、高校の時の同級生と会った。近くに来る用事があったからと言っていたけど、会社を辞めた後は無職でふらふらしている僕を心配してのことだというのは推察できた。実は僕が転生している間にも一度連絡をくれていたようだった。意識が別の世界に行っている間の僕の対応も、心配させる一因だったみたい。
会って少し話をしたら、そんなに心配するほどではなかったみたいなことを言われた。
そして暇だったら自分の実家の仕事を手伝わないかとさそわれた。彼女の実家は農業と小さな養豚業をやっていて、人手が足りないということだった。
そういう仕事が好きというわけではないけど、せっかくさそってくれたのと、豚人のすむ世界から帰って養豚の仕事をするのもガリバー旅行記みたいで面白いかなと思ったので誘いを受けることにした。
ガリバー旅行記は子供向けの本では小人の国と巨人の国の話だけになっているが、元の話はあと2つある。三番目がアニメで有名な空飛ぶ島ラピュタが出てくる話で、これには日本も登場する。ガリバーが帰国する途中に立ち寄った国としてだけど、江戸に将軍がいたり鎖国をしていて出島にしか船が行けないというのも書かれていて、変なところもあるけど当時の日本の情報を踏まえているのだろう。
最後の話が知性を持つ馬の住むフウヌイム国で、この国にもガリバーと同じ見た目の人間もいてヤフーと呼ばれている。このヤフーは知性を持たない蛮人で、ガリバーは馬であるフウヌイムといっしょに生活する。
ガリバー旅行記の話は全くの余談ではあるけど、その知性を持つ馬であるフウヌイムと長い間暮らしたガリバーは故郷に帰ってからも人間の家族よりも馬との時間を過ごすようになったという終わり方で、それがまあ僕の境遇に似てるかなと思ったという話。
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