第95話 再会
転生9日目は、朝食を食べてから車で移動。5日前に来た道を戻る。
車内でいくつかのことを確認しあう。まずダニールの正体についてはもちろん秘密で、単に言葉が話せるヒトということにしておく。そして僕が連れていかれることになったのも単に言葉が話せるヒトについて調べるためで、宇宙ステーションに行って世界の危機を救うなんてことはない。幸いアレク技官と僕との話は二人きりでしたので、他の人には聞かれていない。
宇宙船の実験があったことは公開されてるので秘密ではないけど、僕たちはたまたま研究所にいたので近くで見たということにしておく。
「それじゃあだいたいこんな感じでいいですかね。あとダニールの訪問理由は、他に話せるヒトがいるなら会ってみたいということでいいかな。」
僕が確認のために聞く。
「それでかまいません。」
とダニール。アレク技官はすぐに帰るからいいとして、アンナさんが少し心配だ。秘密を自分から言うことはないだろうけど、災厄のヒトであるダニールに対する態度がすこし固いというか敬して遠ざけるという様子だ。これはまあ自分の信じる予言の書に書かれている偉人なのだから無理もないか。とりあえず研究所の重要メンバーだとか言っておけば大丈夫かな。
昼食は車の中で食べた。これはあまり人目につかないようにということで、研究所を出るときに弁当が用意されていた。車から出たのはトイレ休憩の時くらいだった。
車が建物の前の広場で止まり、僕とアンナさん、アレク技官、ダニールが降りる。
「おかえり。」
最初に出てきたのは食堂のおばちゃん、つまりアンナさんの母親だ。
「ただいま。」
親子の対面を邪魔しないように、そっとしておく。
「おかえり~。」
わらららと子供たちが出てきた。真っ先に出てきたのはヒトのフレッドだった。
「ただいま。少し予定より遅れたけど、帰ってきたよ。」
他の子たちもやってきて囲まれた。ひととおり挨拶をすませてから背負っていたカバンをおろす。
「これはお土産だよ。宇宙船の実験があったのは知ってるかな。その宇宙飛行用の宇宙食の余りを貰ってきたんだ。」
そう言いながらカバンから宇宙食を取り出して手わたしていく。宇宙ステーションでの滞在は伸びたけれど、食事もステーション産のを食べたから持って行った宇宙食は余っていたのだ。ついでに言うとカバンもその時の備品を返さずに持ってきてしまった。
「それから研究所で知り合った友達を連れてきたんだ。ダニール、こっちにきてくれるかな。」
「はい。」
ダニールが僕の方に来ると、子供たちがそちらを見た。
「こちらはダニール、僕と同じように話すことができるヒトだ。ダニール、これが前に話した子供たちだよ。」
「はじめまて、ダニールです。」
すこし堅苦しい感じでダニールが挨拶した。
「あなたもダンみたいに話せるのね。よろしく、私はサラ。」
「こんにちは、サラ。お会いできて光栄です。」
ダニールはサラに対して、大人にするような挨拶をした。
続けて他の子にも順番に挨拶をしている。
そうこうしているうちに、他の大人の豚人やヒトも出てきた。アレク技官は、そのうちの一人と何か話している。おそらくは僕を連れて行ったことに関しての、表向きの説明だろう。それとダニールがしばらくここに滞在することに対しての許可を求めているはずだ。そういったことは移動中の車内で打ち合わせておいた。
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登場生物まとめ
ダン:僕の転生先のヒトの呼び名。本名は不明。
アンナ:信仰心が強い女性の豚人。
ダニール:ヒトの外見をした機械で、古代ヒト文明の遺産。
サラ:豚人の女の子。
フレッド:ヒトの男の子。言葉を覚えるのがはやい。
エリ:ヒトの女の子。字が読める。
食堂のおばちゃん:食堂を切り盛りしてる豚人の女性。アンナの母親。
アレク技官:警察に所属の豚人。鑑識みたいな仕事をしてるのか。
マックス:警察にいたヒト。返事などの片言の言葉は話せる。
マイ:最初に会った女の子の豚人。ダンの名付け親。
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