第92話 管理者

食事の後は部屋に戻ってひとりでのんびりすごす。トイレにも行っておいた。居住区以外の無重力の区画にもトイレはあるみたいだけど、やはり弱くても重力があるところでの方が安心できる。

ダニールは何かやることがあるみたいで他のところに行っている。部屋にいるので利用者登録の変更ができるようになったら連絡をもらえるように頼んでおいた。



ダニールと一緒に居住区から中央部へ移動していくと、遠心力による下向きの力が弱まるので靴底の磁石が同時に床から離れないように注意する必要がある。

昨日も来たATMみたいな装置が何台も並んでいる部屋についた。


「さて、管理者へのステップアップ申請は承認されているかな。」


僕はそういって端末の決められた場所に手をのせる。個人認証のためらしい。


「問題ないはずです。何しろ異議をとなえる他のユーザーはいないのですから。」


ダニールはそう言いながらも何か操作をしていく。


「大丈夫ですね。これでマスターはこのステーションの管理権限を持つユーザーとして登録されました。」


「これであとはステーションの警戒レベルを下げればいいのだっけ。」


「そうです。そうすれば地上が攻撃される可能性はほとんど無くなります。」


それからその管理レベルの変更を行った。実作業としてはほとんどがダニールで、僕は最終的な確認として何回かボタンを押しただけだ。



「ふう、これで終了かな。」


「はい、現在はステーションの維持活動は行いますが、他はほとんど停止した状態です。」


「じゃあこれで任務完了か。」


「お疲れさまでした。」


「あとは何かやることあるかな。ダニールの交換部品とか持ってかえれれば地上でのメンテの助けになるんじゃない。」


「そうですね、でしたら部品と検査装置を。それから通信機能を備えた小型端末があれば地上からステーションにアクセスできるようになります。」


「じゃあそういったのも持ち帰ろう。宇宙船の重量制限が大丈夫な範囲で。」


「わかりました。それでは準備にすこし時間が必要なので、お昼を食べたら帰還ということでよろしいでしょうか。そうすれば本日中に、地上に着陸して待っている人に挨拶することもできます。」


「まあそれでかまわないよ。でも食べるものはステーションにもあるし、何ならもう一泊してもかまわないよ。」


「ですがマスターが別の世界に戻られるのは今日なのですよね。」


「あ、いや、そういえば言ってなかったっけ。延長の希望が通ったので少なくともあと1日はこの世界にいられることになったんだ。だから無理に今日中に戻らなくても大丈夫だよ。」


「そうでしたか。それならばもう少し時間をいただいて、明日の朝に変更しましょう。」



異世界の一時転生が1日伸びた結果、宇宙滞在も1日伸びることになった。



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