第91話 7日目
転生7日目の朝。予定では今日で最後だけど、延長できたので1日増えた。
部屋から出て廊下にある階段をおりると、公園みたいな中層エリアにでる。ここは自然環境を再現しているからか、夜には暗くなり朝になると明るくなってきた。青空っぽい天井全体から光が出ているみたいで、さすがに太陽みたいなのは再現されていない。
「おはようございます。」
どこからかダニールがやってきた。何となく歩く調子が良さそうに見えるのは、昨日のメンテナンスの成果なのかも。
「おはよう。身体の調子は良くなったのかな。」
「ええ、久しぶりに外部装置でのメンテナンスをして一部の部品は交換しました。」
「そうなんだ。まあ調子が良くなったのなら何にしろめでたいね。今日の作業も予定通りうまくいって欲しいものだよ。」
「利用権限の変更にはもうしばらくかかりますが、特に問題は無いでしょう。ところで朝食はこれからですよね。」
「そうだね。宇宙食にもあきてきたから、少し歩いてお腹を減らそうとしているところなんだ。」
「実はこのステーションでの食料生産は今も続いているので、もし良かったら試してみませんか。」
「それって何百年も前の食べ物ってことはないよね。」
「もちろんです。下の食料工場をのぞいてみませんか。」
「ああ、そういえばこの下のエリアはまだ見ていなかったっけ。」
僕はダニールに続いて下層へ下る階段を下りていった。
下層エリアの植物は基本的に水耕栽培されているようだった。液体の入った水槽に、レタスのような葉物野菜が育っているのが見えた。
「へえ、沢山あるね。これらは何百年もこんな感じで育っていたのかな。」
「はい。消費が行われていないので最小限ですが、自動機械によって栽培は続けられていました。」
確かに言われてみれば何も生えていない水槽も多い。
少し移動すると、今度はトマトみたいな実がなっていた。ミニトマトなのは地上の畑で見たのと同じだ。
トマトの隣には、ミニトマトよりは大きい茶色い実の植物があった。
「これは何かな。」
「ああ、これは茶イモですね。野菜ですが炭水化物も多く含んでいます。」
「イモなんだ。イモなのに地中ではなく空中にできるのか。これは宇宙だからなのかな。」
「いえ、茶イモは地上でも栽培されていますが、ここと同じように実がなります。」
イモといえば地中だと思うけど、ジャガイモも根ではなく茎にできるのだし、それが地中か空中かの違いだけなのかなあ。そういえばムカゴとかもあるから、ムカゴの大きいのと思えばそんなに不思議ではないのか。
「ところで、朝食はこの実とかをそのまま食べることになるのかな。」
「いえ、収穫されて加工したものがあるのでそちらをどうぞ。」
そのまま水槽などがある脇の通路を進むと、別の機械がある場所に来た。
「ここで収穫した物を加工したり小分けにしたりしています。」
ダニールはさらに先に進む。
「特にご希望が無ければ標準の朝食セットにしますが、それでよろしいですか。」
「おまかせするよ。」
何しろ何が出てくるのか知らないのだし。
工場の端の方にあるイートインコーナーのような小さなカウンターのイスに座って待っていると、ダニールが朝食を持ってきてくれた。
「お待たせしました。」
「ありがとう。」
目の前に置かれたのは長方形で何箇所かに別れて凹んでいる一体型の食器に乗った朝食だった。
細長いパンケーキみたいなのに、オレンジ色のジャムが添えられていて、他に生野菜やフルーツをカットしたもの、それからパテやチーズみたいなものもあった。
「これとかは野菜ではないと思うけど、これもここで作られたものなのかな。」
フォークにさしたパテを持ち上げて質問してみた。
「それは豆類とイーストを使っています。」
なるほど、肉っぽいけど植物原料なのか。言われないとわからないな。
飲み物はフルーツジュース。もしかしたら野菜も少し入ってるかもしれないけど、飲みにくさは無い。それからお茶。これは麦茶みたいな良い香りだった。
全体的にそれほど代わり映えのない普通の朝食という感じだが、宇宙でこういうのが食べられるというのは結構すごいことかもと思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます