第17話 大球世界の学校 5時間目 異世界ドッジボール

人間と同じ二足歩行で二本の手を持つが、目は前後についている大球世界のカンカの身体を一時的に借用しての異世界生活。昼休みが終わっての5時間目は、なぜか外でドッジボールのような運動をすることになった。

時間割としては学級活動という学級会などをやったりする時間なのだけど、今日は特に話し合う必要もないみたいで、レイレ先生が何をするかの意見をクラスからつのった結果としてそうなったというわけだ。


ドッジボールのようではあるけど全く同じではなく、サッカーのように相手ゴールにボールを入れることで点をとる。手を使うのでサッカーというよりはハンドボールみたいでいいのか。キーパーの後ろにある長方形のエリアにボールがタッチすれば得点になる。ハンドボールなどとの違いは、ゴールネットなどがないので空中を通り抜けてしまうと得点にはならないという点だ。ラグビーのトライのように自分で持ったボールをエリアに置いてもいいのだけど、ボールを持っている時にキーパーにタッチされるとアウトというルールもある。

ドッジボールと似ているのは、攻撃時に相手にボールを当てることで一時的に退場させることができるという点だ。このルールの為に、ボールを持った相手にあまり近づくのは不利になる。

ボールを持っての移動にも制限があって、ドリブルをするか、お手玉のように空中に投げ上げながら進む必要がある。空中に投げ上げる場合は自分の頭よりも上にボールが行く必要があるが、自分の頭の位置を低くしながら進むワザもないわけではない。

地球の球技とは違うので最初は変な感じがしたが、実際にやってみるとこのルールの利点がわかった。ボールを持つ相手にあまり近づかないほうがいいので、小学生の球技にありがちな皆がボールの近くで団子状態いなるということがないのだ。



「よっしゃ、ボールとったぞ!」


コートの中でドンドの声が響く。今は敵チームだ。キーパー以外で3対3までお互いの人数は減っている。

こっちは僕の他は女子2人なので仕方なく僕が前に出て行く。ドンドは僕にボールを投げるそぶりを見せるが投げない。フェイントだ。当てれば相手を減らせるけど、ボールをとられる可能性があるのはドッジボールと同じだし、避けららることだってある。

僕が身体を借りているカンカは運動が得意なようで、あまり僕の意識があれこれ考えないで動いたほうがうまく動いてくれる。僕がなまじ考えると体のどっちが前だっけと考えたり、ボールをどっち向きに投げるのか迷ってしまう。

ドンドはもう一度こちらに投げようとして、逆に後ろにいた仲間にパスをした。ボールをドリブルしながらゴールへ進む。後を追うが間に合わない。

飛び出してきたキーパーにタッチされる前に、キーパーの頭上を越えるように山なりに投げられたボールがゴールエリアに、


「外れた。」


ぎりぎりでボールはゴールエリアの外に落ちた。今度はこちらのボールだ。得点が入ったわけではないので、外に出ているメンバーはそのままだ。

キーパーから受け取ったボールをパスでまわす。一人は敵陣にいるので、僕ともう一人でボールを投げうだけなのでどうしても単調になり、そこにダンダが、


「うおーっ!」


といった感じで叫びながらかけてきた。それに驚いた女の子の手元が狂ったのか、ボールがそれた。僕はそれをなんとかキャッチすると、そのまま敵陣にいる味方というかその前にいる敵にぶつけるつもりで強く投げた。


「きゃっ。」


当てるつもりだった敵はボールをよけて、その後ろにいた味方にあたってしまった。ちなみにライラだった。



「あれ。」


ライラの手に当たってはじかれたボールは、偶然なのか敵のゴールエリアに落ちた。得点だ。

得点が入るとボールに当てられて外に出ていたのがリセットされて復活する。


「うー、ひどいですー。」


「ごめん、でも点がとれたのはライラのおかげたよ。」


敵陣から戻ってきたライラに声をかける。彼女は僕の方をじろっと見て、通り過ぎていった。

笛の合図でゲームはスタート。相手のボールだ。何人かですばやくパスがまわされていた。

僕はそれを目で追いながら、反対側の目ではライラを見ていた。彼女はちょうど僕の後ろに隠れるような位置に立っていた。これで僕に来たボールを避けたらまた彼女に当たってしまうかなと思っていたら、本当にボールが来た。そしてボールに集中していなかった僕は、避けることもできずに当たってしまいコートの外に出ることになってしまった。




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