第13話 異世界の学校 3時間目 理科

3時間目の時間割は理科。自分が小学生だったころは高学年だと理科室に移動したり、先生が変わったりしていたような記憶もあるけど、こっちの学校は同じ教室で先生もレイレ先生のままだ。


理科の授業は、月の満ち欠けについてだった。こちらの世界にも月はあって小球と呼ばれている。小球があるなら大球もあるのかと思ったら、僕らの住んでるこの星が大球らしい。大球と小球という呼び名は安易だなと思ったけど、地球だって似たようなものか。

この星が大球ということは、住んでる人は大球人か。これからは異世界ではなく、大球と書くことにしよう。ちなみにこの文章は、僕が地球に戻ってきた後に思い出しながら書いている。一時転生中の体験は、戻ってきた僕の脳には当然ながら記憶されていないので、転生で移動した意識に付随しているテンポラリ記憶を忘れないうちに再生して短期記憶から長期記憶に移るようにしないとわりと簡単に忘れてしまう。そしてどうせ体験を思い出すのなら、文章にしておけば後になっても便利だろうということだ。

なので自分用の記録ではあるのだけど、もしかしたらフィクションという形でどこかに発表するかも。


小球は20日かけて大球のまわりを一周する。地球の月よりも周期が短いのは、距離が近いからだろう。そして小球の満ち欠けを暦に活用してるのは地球と同じで、ただし1ヶ月が20日間になる。新月から月は始まって、半月までの5日が第1週。半月から満月までが第2週という感じで5日間を一週間としている。学校の休みは週に1日だけど、5日に1日の休みだからそんなに悪くない。

1年は15ヶ月位で日数にすると約300日だから地球の1年よりも少し短い。1日は20時間だけど、この1時間が地球での1時間と同じかは不明。地球だと長さ1メートルの振り子の周期が約1秒だけど、こっちの世界で地球と同じ1メートルを求める方法はちょっとわからない。多分無理だろう。


授業にも注意を向けると、小球と大球の位置関係を変えながら光を当ててどう見えるのかの実験映像を教室前のディスプレイに表示していた。球に光を当てると、光が当たった側は明るく、反対側は暗い。それをどの向きから見るかで、三日月や半月、満月と変わる。


月食や日食についても授業は進んだ。驚いたことに、こっちの世界でも月と太陽の見かけの大きさは、ほぼ同じになっていた。なので地球の皆既日食と同じように、太陽が全部隠れて周囲のコロナを見ることができる。

地球からみた月と太陽の見た目が同じ大きさなのは全くの偶然だと思っていたけど、こっちの世界でもそうだということは、何か関連性があるんだろうか。


「このように、太陽と小球、大球が一直線に並ぶと日食になり、太陽、小球、大球だと月食になります。」


レイレ先生がそう説明すると、隣のダンダが、


「なあ、どうして新月とか満月のたびに日食や月食にならないんだ?」


と聞いてきた。


「さあ、先生に聞いてみたら。」


と言ったら、じゃあいいやみたいな感じで黙ってしまった。


しかし別の班の女子が同じ質問を先生にした。


「はい、いい質問ですね。小球が大球を回っている円は少し斜めになっていて、いつもはきちんと一直線上には並ばないので、日食や月食にはなかなかなりません。」


先生はそういって、ディスプレイの表示を変えて、太陽と大球、小球の軌道を上からではなく横から見るようにした。そして小球が、太陽と大球を結ぶ線から上や下にずれることを示した。なかなかわかりやすい説明だ。

そういえば太陽についても小球や大球みたいな別の呼び名があったはずだけど、忘れてしまったので地球人式に太陽としておく。

いっそ小球や大球というのもやめて月や地球という用語にしようかとも思ったけど、それだと異世界っぽくないからと、他の世界との区別が付かなくなってしまうので、記憶にある限りは現地の呼び方を直訳した言葉にしておこうと思う。




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