第11話 異世界の学校 1時間目 国語
異世界の学校もコンクリートのような物で出来た四角い建物だった。色はグレーではなく茶色なので、ぱっと目には木造にも見える。昇降口で上履きに履き替える。自分の下駄箱はどこかと考える必要も無く目の前にあった。これは無意識の記憶によって身体がいつもの動きをしていたからなんだろう。
あいかわらず黙ったままだけど早足ではなくなったライラの後を教室まで歩く。2人は同じクラスだ。カンカ達の通う初等学校は5年間在学して、ライラとカンカは5年だから最終学年になる。
教室の前後に出入り口があるのは地球の学校と同じで、入り口のある側の向かいの壁面には窓が並んでるのも同じ。ただ窓は透明ではなく乳白色の板がはまっていて、カーテンは付いていない。
机は個別でなく6人から8人の班で大きな机を使用するようだ。椅子は家にあったのと同じような背もたれのないタイプ。
ライラは自分のカバンを教室の壁にある物入れにしまうと、カバンから出した荷物を持って自分の席に向かった。僕も同じようにカバンから出した物を持って自分の席に向かう。どこが自分の席なのかは、教室にいたときの記憶からわかった。ライラとは別の班だ。
左隣の席にはクラスメートのタニタが座ってたので、挨拶してから座る。タニタは僕の挨拶に対して軽く手を上げて、オハみたいに短く言葉を発した。カンカの記憶の通り、無口な女の子だ。
カバンから出して持ってきたスマホみたいな薄い板状のものを所定の位置に置くと、机に接続完了の合図が表示される。このスマホみたいな板がIDカードみたいな役割や、データの保存をしているみたいだ。教科書やノートは机の上面に表示される。
クラスメートへのメールみたいなメッセージの送付も出来るようになっているので、ライラにさっきはごめんねみたいなことを書いて送っておいた。
返事は来なかったけど、こっちをちらりと見た気がした。
教室にレイレ先生が入ってくる。髪の毛は長いけど頭の上にまとめている。クラスにはライラのように長い髪を下ろしてる髪型の子もいるけど、そんなに多くは無い。
右の席は空いていて欠席かと思ったら、授業開始の直前にやってきて机にスマホみたいな板をいそいだ感じでセットした。置く場所は結構適当でもいいみたいだ。
「まにあったか。」
というつぶやきに、
「ぎりぎりセーフだね。」
と返事を返した。顔を見たらダンダという名前が記憶から呼び出され、付随する情報でカンカとはわりと仲がいいみたいだったので、独り言みたいなつぶやきだったけど反応しておいた。
1時間目の授業は国語。教科書に書かれている物語を使って授業が進められているが、僕は使われている文字の方に関心が向いていた。
文字はアルファベットのような表音文字で、読み方はそんなに難しくない。少し変わっているのは人名などの固有名詞やよく使われる単語は、複数の文字を一つに組み合わせて一つの文字になっている。なので文章の見た目は漢字仮名交じり文みたいだ。
例えば僕の名前のカンカだと、アルファベットでKANKAとなり、それが組み合わさってアイコンというかマークのような一塊の文字になっている。勿論使われている字はアルファベットとは違うけど、子音と母音それぞれに文字が与えられてるのは似ている。
子音と母音を表す文字が一つにまとまっているというのはハングル文字とも似ているけど、それよりも使われている文字のパーツ数は多くて、見た目の印象としては漢字に近い。
その他の文字の特徴としては、全ての文字がAやTのように左右対称な形をしている事だろうか。名前などの複数文字が組み合わさった複合文字であっても対称性は保たれている。
授業にも少しは注意を向けていた。急に当てられたりしたら困るからだ。教室の前面にあるのは黒板ではなく、ホワイトボードみたいな見た目のディスプレイで、机の上と同じように資料などが表示できるようになっている。
机の上の表示に問題を出したり、各自が書いた答を集計して前に表示させたりも出来るので、相互にリンクしているのだろう。
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登場人物
カンカ:僕が一時転生している男の子。
ライラ:カンカの幼馴染の女の子。眼鏡っ子。
タニタ:カンカの左隣に座ってる。無口。
ドンド:カンカの右隣の男子。
レイレ:教師。
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