3.陸:出世の切っ掛け到来
トンテナと(なぜか「おやじさん」じゃない)俺が会議を始めた。
自己紹介を終え、俺達は議論を開始した。
「それで、僕は要するに六媒師を返して欲しいんだ」
トンテナは言った。
俺はその話に飽き、すっかり話とは関係ないことを言ってみた。
「ほう。それにしては国王にしてはちっちゃいよな。本当にお前がトンテナか?」
「当たり前だ! 十歳だからな」
トンテナは怒鳴る。
俺は十歳国王君に驚きを隠せぬながらも、「ふうん」と呟いた。
「それで、君は何か要求をするのか?」
「いや、特に。だが」
「だが?」
こんな小さな子供が王なんて考えられない。
俺はそう思っているのだ。おかしい、間違っている。
大体? ほぼその眼の力だけで勝ち上がってきたみたいしか見えないじゃねえか。
「六媒師が嫌がっているぞ」
「ふん! そんなことどうでもいい!」
以外に可愛いか? まだ成長期でもないし、可愛いとも思えたりするな。
そう思いながらも俺は更に議論を重ねた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
議論は一時間近く続いた。
流石に両者ともに飽きてきたので、段々議論では無くなっていっている。
そしてついにトンテナが…
「もういい。帰る!」
と言って帰ろうとし始めた。
俺は結論として可愛いを出していたので、すっかり集中していた。
だから、
「ちょっと待った! 話せば分かる!」
と俺が止めようとトンテナを捕まえた。
その反動でトンテナは俺の方を見た。
その時…俺は気付いた。
トンテナの左目が…十字の赤い紋章に照り輝いていることを!
「さらばだ…北形慶世…!」
トンテナの左目が光った。
「そうはさせぬ!」
ロウトウはその光を自分の刀で斬った。
するとそれと同時にロウトウの刀とトンテナが…それぞれ一枚の札となって落ちていった。
俺は何が起きているか分からない。
一瞬にして人間と刀が消えたのだという事以外は。
「何だこれ? 何が起きてるんだ?」
と俺はその二枚の札に触ろうとすると…
「触るな!」
ロウトウとオルタが声を張り上げた。
「え?」
「それが例の札だ。まさかその光は反射するとは思わなかったが…二つはどうやら」
レトウスが言った。
「じゃあ…まさかおじいちゃんの刀とトンテナは封印されたの?」
アカリがそう訊くとアリナが、
「そうみたいですね。それと同時に、この二枚の札とこのアゲイン殿の札の封印の解放が難しくなりました…」
と言った。
やっと俺は分かってきた。
トンテナは俺をアゲインのように封印をしようとしたのだ。
が、ロウトウの刀に邪魔された上に、自分で自分の技を喰らったのだ…だとしたら…。
「アゲイン…助けられないのか…」
アザリガが悲しそうに言った。
そう、術士自体がやられてしまったのだから治療方法も分からない。故にそういうことになる。
しかし、未だ望みはある。現に三枚の札は破かれてないから…彼らは生きているのだからだ。
「それより…どうするか…」
オルタが言った。
確かに…王がこうして封印されたことを公表すればどうなるか…?
そう言われれば分かる。
きっと国が崩壊するに決まっているのだ。
「おいオルタ。お前に提案があるのだが」
「おやじさん」がここで口を挟んだ。
俺は大体何を言うのか予想はついてい…。
「チレ国の安泰を保証する代わりに、慶世をチレ国王にしてくれないか?」
えええええええええ!? 予想はついてたがそのまま言うのか!?
しかし…
「ああ、分かった。しかし他の者の対処を頼むことになるぞ」
オルタは承諾した。
俺はあっさりと決まったので言葉が出なかった。
そして「おやじさん」は答えた。
「大丈夫じゃよ。わしの力を使えば」
「おやじさん」は不気味に笑った。
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