3.肆:トンテナの鶴

 俺はすっきり顔をしたアリナとレトウスを迎えた。

 …まあ大体予想はつく。


「どうしたんだ?」


 俺がそう聞くとレトウスたちが


「レベル千の敵を倒してきた」


「すっごい気持ちよかったです」


 そう笑顔で話してきた。いや、怖い。

 っていうかレベル千って何?って聞いたら強さの値と返してきた。


「私、久しぶり。こんな清々しいのって」


 俺はこっそりと二人につけたレイスに訊く。


「何してきたんだ? 二人」


 レイスは恐ろしそうに言った。


「全長1kmにもなる大怪物を見つけた上に秒殺。ついでにその周りの悪魔も瞬殺…」


 え…?

 まあそう驚いているとロウトウとアザリガがやってきた。


「すっきりしたのう」


「いや全くだ」


 キョウケに訊く。


「何してきたんだ? 二人」


 キョウケも恐ろしそうに言う。


「マッハ10位の速さの…キョウケじゃ絶対敵わないような肉体を持つ魔物たちを秒殺してきたんだよ…」


 いやいや可笑しいだろ!? 絶対おかしい!!

 お前らチーターか!? と俺は思った。

 しかしそれと同時に、それら全員を圧倒するリュウが恐ろしく思えた。

 その時!


「お前らだな。『おやじさん』と愉快な仲間達というのは…」


 喋る折り鶴が舞い降りた。

 俺は面白半分に見たが、六媒師たちは一瞬にして険しい顔になった。


「やっぱり追ってきたか。オルタ」


 レトウスが呟いた。

 オルタ…? 俺は変な名前だなと感じながらもその鶴を見る。

 すると、


「ああ、そうだよ」


 と折り鶴は一瞬にして白髪の貴族らしい人間となった。


「私の名前はオルタ。そこの本を持った人間、恐らく『おやじさん』であろう。まあ…お見知り置きを」


 俺は…声を出した。前の俺なら出なかったであろう声を。


「本を持った人間じゃねえ! 慶世だ!」


「慶世…? 北形慶世か?」


 その瞬間俺は声が瞬時に出なかった。

 何かに驚いたのだ。

 何か…違和感を覚えたのだ。


「あ…ああ」


 俺はそう言いながら後ずさりをする。

 それとは関係なくオルタという人物は平然と話し始めた。


「では北形慶世。そこの六媒師を返していただきたい」


「お前の鞘には戻らねえよ」


 魔法剣を抜いてアザリガが即答する。

 それと共に六媒師全員も構えた。

 俺は察した。

 六媒師の奴ら…敵意丸出しじゃねえか。

 六媒師がそうなるってことは、こいつはチレの者…。

 するとオルタは手に炎を浮かべながらこう言った。


「ふっ。私はトンテナ様の鶴だということを忘れないでくださいよ…」


 その声と共に…戦闘は開始された。

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