3.弐:六媒師との邂逅

 俺と「おやじさん」はいつの間にかリュウたちの目の前に居た。

 恐らく「おやじさん」が自分と共に俺をワープさせたのだろう。

 六媒師は息があったが、気絶していた。


「大技を使うなと言っただろう?」


 「おやじさん」はそう強く言ったが、リュウは微笑しただけだった。


「まあ良い。何のために来たか訊くとしよう。どうせわしらの役にたつからな」


 え? 何でそんなこと分かるんだ?

 俺は少し戸惑いながら「おやじさん」の館に戻った。



「ここ…は…?」


 六媒師たちは気がついた。

 彼らは眼を擦りながら俺達を見た。

 夢でも見ている感じなのだろうか?


「わしに用があったのだろう?」


 「おやじさん」はそんな六媒師たちに言った。

 すると六媒師の内一人はすぐに胡座をかいて「おやじさん」を見つめた。

 そしてこう言う。


「となると、お前が『おやじさん』だな」


 話が始まった。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 暫くし、自己紹介が終わった。

 俺はちゃんとその情報全てを憶えた。これでも記憶力は良い方なのだ。


「それで…用があったのは俺なんだが」


 そしてレトウスは一つ分けて、寂しそうに語り始めた。

 他の皆は唯漠然とそれを眺めていた。


「お前、『おやじさん』は結構な力の持ち主だと聞いてな。昔から探していたんだ」


 そう。寂しそうに語り始めたのだ。

 別に普通に語り出したのではない。

 寂しそうに…語り出したのだ。


「俺たちは旅をしている間に会ったんだが、ある日、ある奴に初めて負けた。…ほとんどの奴が捕らえられ、俺とアリナだけでどうにか皆を救出しようと試みたんだが…一人が死んだ。いや死んではいないが…死んだ同然の状態になった」


 そこまで訊くと、アリナが慌ててこう言ってきた。


「まさかレトウス。あの件について頼むつもりなのですか!?」


「ああ、そのつもりだ」


 そう言った後、レトウスは静かに…そしてハッキリとこう言った。


「『おやじさん』とやら。そいつを助けてくれ」


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 詳しいことを言うとこうだ。当時六媒師の中で一番強かったアゲインは、チレ国王のトンテナに捕らえられ、そのトンテナの能力により一つの札に封印させられた。その札を破くとアゲインは絶命してしまうのだが、トンテナはそれをせずにその札を人質にして六媒師を従えた。六媒師はこれまでその命令に従って、パージーなる国家と戦い、ロセイアなる国家に潜入し、イジャープトなる国家へ使者として行き、X魔物のThe WKASETkを倒すという異常な程にこき使われてきた。

 現在一段落ついたのだが、これから何をされるか分からない。ゆえに一回「おやじさん」と盟約を結び、アゲインを助けて欲しいということだった。


「らしいぞ。慶世」


 急に「おやじさん」は俺にそう言った。

 丸投げをする気なのだろうか。


「チャンスだろう? 慶世。世界統一の」


 六媒師たちが俺を見る。

 恥ずかしい!! まるで夢物語を語っている子供のように見られている!

 俺は思わず慌てる。

 するとその瞬間、「おやじさん」は衝撃的な言葉を俺に言った。


「わしが命令をしよう。チレを乗っ取れ」


 え? …

 俺はまだ戸惑った。


「乗っ取れ」


 この言葉の理解に十秒掛かった。

 そして…理解出来て…。


「ええええええええええええええええええええええええええええ!?」


 俺の絶叫が辺りに響き渡った。

 見たことの無い鳥が俺の声を真似する。


「まあ考えていると良い」


 レトウスはそんな会話を聞きながら「おやじさん」にこう訊いた。


「この輩は誰なのだ?」


「ああ。お主達の新たな主だ」


 「おやじさん」は答える。

 勝手に話を進めないで欲しい。

 俺はそう思った。


「どうせ暇なのだろう? こいつの相手をしてくれ」


 なんだよその言い方! まるで俺が子供みたいじゃねえか!

 俺は怒鳴りそうになってしまう。

 だが初対面の相手にそのような醜態を見せるわけにはいかない。

 俺は我慢した。

 すると…。


「言っておくがこいつは世界統一が本当に出来る。世界平和をもたらしたいのなら、この北形慶世の部下になれ」


 「おやじさん」がそう言った。

 俺は驚いて声が出なかった。

 「おやじさん」は…自信満々だったのである。


「世界平和? ふ…ふふふ」


 アザリガが笑った。

 やっぱりそうなりますね分かります。

 俺はそう思ったが。


「良いじゃねえか? 皆」


 何でそうなる!?

 そうである。このアザリガの言葉によって、六媒師が俺に仕えるという話が決定してしまったのだ。

 そしてついに夢物語が現実になり始める、第一歩を無理矢理歩かされたのであった!


 …だからそうなるのはおかしいって。

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