ポーの一族の新作三巻目読んだ?「秘密の花園」

40年ぶりの「ポーの一族」続編の三冊目です!

ランプトンの肖像の続きのような?元の話を読んでから40年くらいたってるので

さすがに私もストーリーをおぼろげにしか覚えてないんですが、萩尾先生は過去の話の隙間をすべて埋めていくつもりなのかしら?

そんな感じの物語です。文化や歴史的背景の付け足し満載なので、そこがすごく面白いです。私も大人になったのね…。



さて時代は1800年代にもどります。エドガーとアランは馬車での移動中に川に落ちてしまい、雨の中をさまよううち、アーサー・トーマス・クエントン卿の屋敷にたどり着きます。二人の子供をクエントン卿は快く滞在させてくれますが、例によってアランが眠って目を覚まさず、エドガーはクエントン卿の協力を得て、離れにアランを隠さざるを得なくなるのでした。


クエントン卿は幼いころに怪我をして左耳がなく、顔にも傷がある。自分をモンスターと呼び、未だ独身。

クエントン卿は、14歳で死んだ幼馴染の絵を描くため、エドガーにモデルになってくれと頼むのです。幼馴染が想い人のことを綴った詩を揶揄ってしまったことをクエントン卿は悔いていて、長い間人物画は描かず風景だけを描く画家として暮らしていました。


今更なんですけど、ポーの一族は英国の話なんですねえ。今回は地名もたくさん出てきます。英国最古の推理小説と言われる「Woman In White 」by Willkie Collins などと同様に、この話の中にもクエントン卿の祖母が描いた絵を売っていた、というエピソードがあります。貴族の子女の習い事として、絵は結構ポピュラーだったようね。女性の画家も多くいたのかしら。


また、昔のポーの一族では、エドガーたちはどうやって子供だけで暮らしていたのかははっきり描かれてませんでしたが、これに対してさりげなく答えが与えられてるんです。 


貴族の子弟で孤児になった場合、後見人がついて信託財産を後見人が管理するんですよね。自分名義のお金なのに、後見人にバンクノート、つまり小切手切ってもらわないと出せないの。貴族の孤児を装っているエドガーたちは、弁護士と後見人が居ないと暮らせないわけです。永遠に子供でいることの不都合です。しかも、電話とかないのでいちいち手紙を送るのです。不便ですね〜。


幼いころのクエントン卿は、大けがのためトルコ系?のマルコを世話役に、修道士ガブリエルを家庭教師に育ったとエドガーに話すのです。使用人の息子ドミニクは吃音はあるものの、絵画の少年そっくりの美少年で、幼少のクエントン卿の唯一の友達だったのです。卿はこの3人のお陰で自分は大きくなれたと語ります。


修道士ガブリエルが家に滞在して薬酒を作ったり、フェンシングや乗馬を教えたとか。知識層である修道士が貴族の子弟に何か教えるというのは当時一般的だったんでしょうか。この辺の設定も興味がつきません。それともクエントン卿の父上は随分と先進的というか頓着しない人だったのかしら。彼は息子が永くないと思い込んで、外に家庭を作っちゃったくらいだから、ある意味育児放棄かも。


さて、この話の肝は2つ。

眠ってしまったアランを抱えつつ、エドガーは正体を隠して、この地をさることができるのか。ということと、クエントン卿は親友への悔恨を昇華することができるのか。ということ。続きが楽しみです。



さて、番外編として短編「月曜日は嫌い」が一つ掲載されているんですが、

私このお話大好き!

カフェでお金持ちのおばあさんに気まぐれで高価な指輪をもらったアラン、エドガーに高価なものなので後で盗んだって思われたらいけない、と言われ(譲渡証明書をもらった?ですって。しっかりしてるわね)毎週月曜にそのカフェに通ってそのおばあさんに指輪を返そうとします。しかし、やっと会えたそのおばあさんは認知症で……。

何が素敵だったかというと、そのおばあさんがいいキャラなの。

「育ちのいいわがままな男の子ね、(もらった指輪を)家に帰ってそこらの引き出しにしまって忘れちゃうのよ。でも、10年後に引き出しの隅に転がってるのを見つけて、あれ?なんだっけ これ?と考えるんだわ。ね、そういうの素敵じゃない?」

って、セリフが好き。なんて想像力豊かでおちゃめなの。

数か月カフェに通った末に相手がぼけてて、アランは月曜日が嫌いになっちゃった。アランって本当にエドガーがそう望んだとおり、素直に人間の子供のままなのね。アランはきっと、起きている時間が私が想像してたよりずっと短くて、成長が遅いのかもね。エドガーが「君は自分がかわいいって自信があるから 世の中に甘えているんだ」とか中年男みたいなこと言ってて笑わされたわ。












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