第227話 美少年対決!
晶霊たちは割と呑気に見ているのだが、人間たちにとっては代理戦争に近いこの試合。
当然ながら両陣営は気合が入っていた。
西海、南海の陣営はウス上皇、ツツカワ親王をはじめ、主だった者たちがずらりと前に並んでいる。
その中には刀和や瞬、オトも最前列で座っている。
一方、カンム家側も同じように座っているのだが、こちらは名前の知らない人間が多数前に座っている。
というのも主だった人物が全員試合に出ているので、どうしても前に座るのが二線三線級の人物になるので、あまり名前が知られていない人物が多い。
「それでは試合を開始いたします」
行司が持つような軍配を手に糸目お姉さんのジュニが両陣営の間に立つ。
「先鋒 シャナオ=セーワ、コレアツ=カンム。両者前へ」
その言葉と同時に
「ほぅ……」「綺麗……」「凄い……」
どちらも女と見紛うばかり美少年なので、女性陣からため息が漏れた。
しいて言えば真面目そうなシャナオに対して逆にナルシストの気が感じられるコレアツの方が見た目は綺麗だろう。
ジュニが前に出た二人に確認する。
「まずは二人にお聞きします。何で試合をするつもりですか?」
それを聞いてキョトンとする刀和。
(ねえ、何で今頃試合のやり方を決めるの?)
(私も知らないわよ)
瞬と一緒にごにょごにょ言い合う。
すると、オトが横から入る。
(今回はいきなり決まった試合だから試合方法はその時に決めると約束してあったの)
(そうなんだ?)
(向こうから言い出したことだから何か作戦があるみたいだね)
(ふーん……じゃあ、ヱキトモ様はそれを知ってるの?)
(無論。そのうえで受けてるし)
そんな風に小声で話す二人だが、睨み合う二人は……早く決着が着きそうだった。
「うふ……本当に良い男……」
「……嫌だぁ……」
怪しい雰囲気の漂うコレアツの様子に完全に負けているシャナオは、今すぐにでも逃げたそうな顔になる。
するとコレアツが声を上げた。
「男らしく相撲と行きましょう(どや顔)」
「断固拒否させていただきます(いや顔)」
悪寒に耐え兼ねて距離を取るシャナオ。
(こんな奴と肌合わせたくない!)
がっぷり四つの姿勢を想像して恐怖するシャナオ。
すると双方から声が上がる。
「男らしくねぇぞ!」
「男なら裸でぶつかれ!」
「ぶるってんのかてめぇ!」
前後からの野次に押されて絶望の表情を浮かべるシャナオ。
「そ、そんな……」
真っ青な表情でヱキトモの方を見るシャナオ。
流石にこの展開は予想がつかなかった。
(男の勝負なら『弓』でしょうに!)
そう声を上げようとしたその時だった。
「シャナオ。時として相手の有利で戦うこともある。観念せよ」
ヱキトモの静かな声を聞いて、ビビるシャナオ。
「安心しろ。必ずわしが挽回する。自分の力を出し切れ」
その言葉を聞いて完全に諦めるシャナオ。
「わかりました……それでいいです……」
そう言って前に出るシャナオ。
「では相撲で勝負しましょう。一本勝負でよろしいですね?」
「「はい」」
二人はそう言うと服に手を掛け……
ファサ……
「「「「「おおおおおおおお♡♡♡♡」」」」」
二人とも一糸まとわぬ全裸になった。
女性陣から歓声がとも嬌声ともとれる声が上がる。
「きれい…………」
「最高……」
「死んでもいい…………」
「もっとよく見せて!」
女性陣の歓声に思わず嫌そうな顔になる刀和。
「何で全裸に……」
不可解な顔の刀和に対して興奮して鼻息が荒くなったオトが答えた。
「何って相撲するなら全裸は当たり前だろ?」
「そういうもんかな?」
不思議そうな刀和だが、瞬が不思議そうにオトに尋ねる。
「あんたチ〇チン見たこと無かったんじゃないの?」
「間近で見ることが無かったんだもん!」
「じゃあ、男と相撲とかしたこと無かったの? そういった訓練してたんでしょ?」
「あるけど、私とやる時はみんな服着ながらやってたから……」
流石に貴族の子女と鍛錬するときはそれぐらいのことはやるようだ。
そして不思議そうにぼやく刀和。
「よくわかんないけど、どんな話しの流れでチ○チンの見たことある無しって話しになるの?」
「え、えーと……それは……」
「ほ、ほら! もう凄く始まるよ!」
一瞬口ごもる瞬を誤魔化すかのようにオトが試合へと注意をそらす。
準備が整ったようで、軍配で全裸の美少年二人の間に仕切りを作るジュニ。
「では双方準備はよろしいですか?」
「「はい」」
「はっけよい! のこった!」
バシィン!
二人同時にがっぷり四つに組み合う!
組み合うのだが……
ふわわわわ……
「ふぬ!」
「くぬ!」
二人とも組んだまま、宙へと浮かぶ。
それを見て刀和と瞬はキョトンとしてしまう。
(これってどうやったら決着つくの?)
(うん? 地面に足の裏以外を付けたら勝ち)
オトが端的に答える。
それを聞いて困り顔になる瞬。
(どうやるんだろ?)
不思議そうにしていると、二人の体が自然に下へと沈んでいった。
二人は空中でぐるぐると回転しており、地面に近づいて……
「ふん!」
シャナオが渾身の力でコレアツを地面に叩きつけようとする!
だが……
「ほいっと」
ぱし
呆気なく足裏で地面を蹴って難なく受け止めるコレアツ。
その勢いで上へと上昇する。
(こんな感じで繰り返すんだ)
(なるほど)
無重力に近い故に相撲もまた一味違ったものになっている。
二人ともあがっては落ちて、上がっては落ちてを何度も繰り返す。
すると、オトが訝し気に首を傾げる。
「変だな……随分長丁場の戦いになってる」
「やっぱり……なんかおかしいよね……」
全員が不思議そうに見ているとくぐもった声が聞こえてきた。
「た、たすけ……」
「「「「「うん?」」」」」
全員が異変に気付く。
コレアツの顔が上気して嫌な目つきになっており、代わりにシャナオの顔が蒼白になっている。
最初に気付いたのはラインだった。
「お、おい!! あいつ何やってんだ!」
それを見て初めて全員が気付いた。
コレアツがおっ立てたイチモツをシャナオの口に入れようとしていた。
「たすけ……」
蒼白な顔でイチモツを避けるシャナオ。
もはや勝敗など目に入ってはいない。
バン!
ようやく離れることに成功したシャナオだが、その勢いで地面に手を付いてしまう。
「それまで! 勝者コレアツ!」
「んふ……残念……」
悩まし気な声を出すコレアツと吐きそうなシャナオ。
そして、シャナオが自陣に戻る途中でついに限界が来てしまった。
でろでろでおろげろえろ……
恥も外聞もなくゲロを吐き散らかすシャナオ。
パタ……
そのまま青い顔をして倒れてしまった。
「だ、誰か! 急げ!」
精神的ショックで完全に気を失ったシャナオを数名が運び込んでいく。
同時に宙に浮いたゲロをかき集めて綺麗にする数名。
「か、カオスだ……」
あまりの惨状に目を覆う刀和。
ヱキトモは腕組みしながらぼそりと呟いた。
「すまぬ……」
静かに目を瞑って黙とうを捧げるヱキトモ。
あまりの惨状にみんなが顔を顰めたその時だった。
ツンツン
後ろから誰かにつつかれる刀和。
怪訝そうに後ろを振り向くと白髪美人のモミジが居た。
モミジは何故か荒い息をしてこう言った。
「ねぇ(はぁはぁ)そこの裏でお姉さんと(はぁはぁ)相撲取って見ない?(はぁはぁ)」
ものすっごい期待の眼差しで見つめてくるモミジ。
どう見ても痴女の不審者である。
「嫌です」
刀和の冷たい言葉にがっくりと肩を落とすモミジであった。
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