第173話 雷撃


 一方、トーノは焦っていた。


『ちくしょう!どうやったら死ぬんだよコイツ!』


 網の隙間からチクチクと槍で突きさす一同。

 本来は触手を先に切ってから攻撃する予定だったが、時間が無いので触手をかいくぐってトーノが槍で突き刺している。


「デカすぎて槍が通らない!」

『正確には通っているが奥まで刺さらないんだよ!』


 ラインが腹話で悲鳴をあげるがトーノも大変である。

 サンメヤズラは巨大すぎる上に触手が元気に蠢いている。

 そこをかいくぐっての攻撃なのでどうしても弱くなる。

 しかもトーノの役割はそれだけではない。


『うわぁぁぁぁ!!!』

『ちぃぃぃ!!!』


 触手に捕まった兵が居たので慌ててその触手を切り払うトーノ!

 兵はそのまま地面に落ちると同時にトーノが慌てて捕まえて外へと逃げる。


『た、助かりましたあ!』

『どういたしまして!』


 半ばやけくそで叫ぶトーノ。

 一事が万事この調子なのだ。


 それ故にほとんど攻撃が通っていない。


『どうすればいい?』


 トーノがそんなことを考えていたその時だった。


バヂヂヂヂヂ!!!


 突然、目の前で何かが光った!


ビッタン!ビッタン!


 触手が今まで以上に大暴れする!

 それを見て慌てて叫ぶトーノ!


『距離を取れ!早くだ!』


 慌てて距離を取る一団。


『くそ!網の一部を解いたか!』

「厄介な!」


 中に居るラインも舌打ちする。

 この上、コイツが暴れ始めたらたまったものではない。

 そんなことを考えていたトーノだが、すぐに違和感にきづく。


『なんだぁ?』


 サンメヤズラは触手をピーンと伸ばして震えている。

 なんというか……足を攣ったようなイメージである。


 そしてトーノは気付いた。

 一番長い触手の上に誰かが乗っている。


 それは竜の兜を被って茶色の着流しを着た晶霊だった。

 紅い体をしていて、触手に槍を突き立てている。


バヂ……バヂ……


 その晶霊の体にまとわりつくように小さな稲妻が走っている。

 それを見てトーノが唸る。


『雷撃か!』


 雷の力を持つ晶霊らしく、サンメヤズラに電撃を加えているようだ。

 その晶霊がトーノに向かって叫ぶ。


『今の内に槍をどんどん刺しなさい!』

『わ、わかりました!行け!お前達!』


 トーノの号令で全員がサンメヤズラへと襲い掛かった!

 程なくして針鼠のようになるサンメヤズラ。


ブルブル……


 まだ震えているのだが、死んでいるのか電撃でそうなっているのかがわからない。

 トーノが電撃を与えている晶霊に声を掛ける。


『槍を刺し尽くしました!』

『よし!』


 そう言ってジャンプして離れる晶霊。


ビッタンビッタン……


 力なく触手を落とすサンメヤズラ。

 誰が見ても完全に絶命したとわかる状態だ。

 だが、トーノは歴戦の古強者。

 決して安心したりはしない。


『念のため、触手は根元から切り取っておけ。それから決して油断するな! 舌で絡めとられると地獄だぞ! 意識を感じられたらすぐにまた槍で刺せ!』

『『『『『は、はい!』』』』』


 慌ててわらわらとサンメヤズラに群がる晶霊兵たち。

 それを見てホッとしたトーノが電撃を加えた晶霊に向いた。


『失礼ですがどなたで……』


 言い終えない内にトーノは気付いた。

 晶霊がいつの間にか居なくなっていたのだ。


『一体どこに……』


 トーノの言葉に答える者は居なかった。


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