第174話 変なババア


 一方、シュンテンは苦戦していた。


『ぐぉぉぉぉ……』

『中々頑張るねぇ……』


 地面から突き出る鉄の槍の数々を様々な形で避けるシュンテン。


 バシュッ!


 アウルを吹かして盛大に上へと逃げる!

 だが、その程度では終わってくれない。


『そぉれ!』

『ぐぉぉぉぉぉ!』


 風の刃がシュンテンへと襲い掛かる。

 アウルによって弾かれているが、敵の方が優勢なのは明らかだ。


「もっと距離を取れ!」

『わかった!』


 慌てて距離を取ろうとするシュンテンだが、足に違和感を感じた。


 ピシ!


 いつの間にか足にワイヤーが絡んでいた。


『いつの間に!』


 パチン


 慌てて持っていた刀でワイヤーを切るが、その隙を見逃す敵では無かった。


『これで最後だ!』


 ビュオン!


 鉄の槍があり得ない高速で飛んでくる。


『しまった!』


 慌ててアウルで防御するが間に合わないのは明らかだ。


((やられる!))


 二人が覚悟したその時だった。


 ピタリ


 鉄の槍がシュンテンの目の前で止まる。


((……えっ?))


 目の前の光景が信じられない二人。

 それもそのはずである。


 人間の老婆がその鉄の槍を受け止めたのだから。


 老婆は槍を軽く弾いて地面へと落とす。


「ちゃちぃ使い方だね。折角の能力をこんな使い方しか出来ないのかい?」


 そう言ってあくびをする老婆。

 

『な、何なんだあの老婆は!』

「なんてババアだ!」


 シュンテンとヱキトモは口を揃えてビビった。

 老婆にビビるのは相手も一緒で、焦った顔で老婆を見る。


『だ、誰なんだきみは?』

「何だチミはってか?」


 老婆はにやりと笑う。


「そうです。私が変なばばあです」


 そう言って笑いながら急に踊りだした。


「変なばばあ♪ だから変なばばあ♪ 変なばばあ♪ だから変なばばあ♪」

『『・・・・・・・・・・・・・・・・』』

 

 老婆の踊りに微妙な顔で眺める二人。

 それに気づいて老婆はコホンと咳払いをする。


「まあ、あたしのギャグじゃハイセンス過ぎてこっちの人にはわかんないんだね」

『どっちの人ならわかるんだ?』


 至極真っ当なツッコミを入れるシュンテン。


 ヒュゥゥゥゥ


 冷たい風があたりに吹き荒れる。

 一瞬、シュンテンは寒いギャグのせいかと思ったがそうではない。

 老婆の周りに氷が出来始めたからだ。


「むっ?」

『極氷のかいなに抱かれて永遠の眠りにつきなさい』


 謎の晶霊が叫ぶと同時に……


 カキィン


 老婆は氷の棺の中に閉じ込められた。

 謎の晶霊は自信満々で答える。


『さて、これであんただけだな……』

『むう……』


 シュンテンが難しい顔になったその時だった。


「だっふんだ♪」


 パキャァン!


 跡形も無く氷の棺が砕け散る!


『何っ!』

「こんな小手先の技に私が引っかかると思うのかい?」


 そう言って老婆はにやりと笑った。

 すると、老婆の体が輝きだした!


『うお!』

『くっ!』


 慌てて目を塞ぐ二人。

 そして目が見えるようになると目の前の光景が信じられなかった。


 老婆は大きな龍になっていた。

 全長が20mぐらいありそうな龍で手足は生えているものの、蛇のように胴の長い龍だ。


『あんたの『錬金』なんて……あたしの『創造』の下位互換でしか無いんだよ……』


 その龍はにやりと笑ってから吠えた。


『創世魔王龍が一人! 九頭竜アマラ! これよりヨミに加勢する!』


 その龍は大きく口を開けて高らかに宣言した!


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