第170話 謎の騎馬武者
首の無い巨大な馬に晶霊が一騎跨っていた。
晶霊は明らかに鉄で出来たとわかる鎧を着ており、その鎧の奥にどんな晶霊が居るかはまるでわからない。
鎧は和風の鎧ではあるが所々がおかしいもので、しいて言えば『ゲームで出てくる鎧』といった感じだった。
そんな鎧を着た晶霊が馬の上から辺りを見渡しており、持っている槍の先には晶霊兵が一人串刺しにされていた。
『ば、バカな……鉄の鎧だと?』
トーノが驚いているがそれは仕方のないことで、そもそもこの月海では鉄が少ない。
少ない鉄を何とか利用して武器に使っているのが現状で、上級の晶霊将が鎧を着けていると言っても巨大なウミガメや鎧魚と呼ばれる甲殻を持つ魚の殻を用いてやっとで作れるもので、鉄で出来た鎧など簡単に作れるものではない。
それを見たヨミが真っ先に躍り出る!
騎馬武者も槍に刺さった晶霊を抜いて応戦の構えを取る。
ガキィン!
ヨミの真黒な大剣『無窮須臾』と騎馬武者の持つ槍が激ししくぶつかり合い、火花を散らしまくる!
ガキガキガキガキィン!
何合か打ち合うのだが、ヨミの攻撃を事も無げにいなす騎馬武者。
ガキィン!
最後に盛大に打ち合った後で、間合いを取るヨミ。
ヨミは全員に向けて叫ぶ。
『こいつは俺に任せろ! お前たちはあいつを早くやれ!』
『わかった! お前たちは早く触手を切り取れ!』
『『『『『わかりました!』』』』』
トーノの言葉で触手の切り取りを再び開始する晶霊たち。
ラインは焦りつつも不思議そうにぼやく。
「シュンテンは何をやってるんだ!」
『わからん!』
トーノも不思議そうにするが今はサンメヤズラを倒すことに専念する。
(シュンテンが外から攻撃するはずだったのに!)
先に動きを止めてからシュンテンが長距離から弓矢で撃ち抜く予定だった。
なのにシュンテンはいつまでたっても矢を撃たない。
(何をやってるんだ!)
そう思いながらシュンテンの方を振り向くトーノだが、その顔が凍り付く。
『なんだあいつは……』
トーノが驚くのも無理もない。
シュンテンは何者かと応戦していた。
しかも驚くべきことにヨルノースでも最強の一人であるシュンテンと互角なのだ。
「あれは一体……」
『わからん!』
中に居るラインと腹話で会話するトーノだが、訳が分からなかった。
だが、ラインはぽつりとぼやいた。
「前にヒムカで出会ったクラゲ晶霊と似てるな……」
『そうだな……全然見た目が違うのに似てるな……』
二人はそう言って唸る。
何となくだが、あの化け物じみた強さを持つ連中と似ているのだ。
何がどうと言いうほどでは無いが、何か似た雰囲気を持っている。
「気のせいか、ヨミからも同じ空気を感じる」
『そうだな……ヨミとも似ている』
何がどうではない。
何となく直感で共通点を感じるのだ。
とはいえ、この二人は同時にあることに気付いていた。
「気のせいか……ヨミと似たような所に住んでたみたいな感じだな……」
『恐らくそうだろう……奴の強さには何か秘密がある……その秘密を共有している気がする』
「そうだな……ヨミが住んでたところが異常に強い奴が集まるような……そんな感じだったな」
『あいつは『弱く』感じる時があるからな』
「そうだな」
苦笑する二人。
不思議なことにあれだけの強さを誇るのに、何故かヨミには『弱い』と感じるところがあった。
なんというか『いじめられっ子オーラ』を放っているのだ。
ラインは笑って言った。
「トワにも同じもの感じるんだよね」
『そうだな。案外似た物同士なのかもな』
そう言って二人は笑ったが、すぐに引き締める。
『さて、さっさとこの化け物を倒していじめられっ子ヨミの支援に向かうぞ!』
「そうだな! いじめられっ子は早く助けてあげないとな!」
そう言って二人はサンメヤズラを倒さんと向かって行った。
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