第168話 ババア再び


 一方、イヨ国では……


カンカン……


 トヨタマ達は杭を打って家づくりをしていた。


カンカン……


 杭を打つ音が辺りに木霊する。

 もっとも杭を打っているの一人では無いので、そこら中で聞こえてくるのだが……一つだけ違う音が聞こえてきた。


ガァン!ガァン!


 渾身の力を入れて杭を打つ者が居る。

 置いてけぼりを食らったアカシである。


「落ち着いてアカシ!打ち過ぎだから!」

『ご、ゴメン!』


 瞬に言われて慌てて止めるアカシ。

 その様子をみたトヨタマが苦笑して近寄る。


『ヨミも悪気があった訳じゃないから』

『わかってるわよ!』


 仏頂面になるアカシ。

 アカシが行こうとしたらヨミが反対したのだ。

 こんな感じである。


『アカシの『加速』は関係ないのでは?』

『加速も実は拡張型の一種だから、アカシは役立たずになる』


 言い方にイラついていたのだ。

 

『そりゃ、同じ拡張型だから仕方ないけどさ! 言い方ってもんがあるでしょ!』

「そうだよねぇ……」


 苦笑する瞬だが、瞬自身もヨミの言葉を正論と感じたので仕方がない。

 話題を変えようと瞬がオトに尋ねる。


「そういや、モミジさん達は何してるの? 全然姿見ないんだけど?」

「あの人はあそこだよ」


 オトが指さした先には小さな建物があった。

 そこには男たちが行列を作っている。


「荒廃した男たちの心を癒してあげるんだって、あそこで希望者とエッチしてあげてるんだって」

「何やってんんだか……」


 呆れる瞬だが、後ろから声がかかる。


「被災地での強姦は馬鹿に出来ないんだぞ?」

「えっ? あっすいません!」


 瞬が後ろを見るとツツカワ親王がにこやかな笑みを浮かべていた。


「失う物が無くなると何やっても良いと考える者も多い。助けた女性をそのまま強姦するという話まであるぐらいだ」

「そんなことが……」


 自身も危なかった思いがあるので身震いする瞬。

 

「色々問題のある人物だが、ああやって荒んだ心を癒してくれるのは決して悪いことではない。彼女のお陰で知らない間に救われている女性もいるのだよ」

「な、なるほど」


 意外な現実を突きつけられて驚く瞬。


 色々問題もあるがエロが無くならない理由はこれである。

 すでに枯れ果てた爺さんならともかく、どこかで吐き出さなければいけないのが性欲である。

 昨今は何かとやかましく権利を主張するが、それによって社会のバランスが歪めば、それは弱い者へと当たることも忘れてはいけない。


 ツツカワがパンパンと手を叩く。


「ああいったのもある種の救済活動ということだ。さ、仕事を続け「ちょっとあんた」……何だ?」


 言葉を何者かに遮られたので振り向くツツカワ。


「ヨミはどこへ行ったか知らないかい?」


 変な老婆が居た。

 やたら綺麗な服を着た老婆がツツカワの後ろでフワフワ浮いている。

 ツツカワがきょとんとする。

 すると老婆は手紙を取り出して見せた。


「あいつに呼ばれて太宰府の方へ行ったら、こっちに来たって聞いてね。荷物は任せてこっちに来たんだよ」

「ふむ……確かにヨミの手紙だな……」


 すると老婆がもう一つの手紙の出した。


「太宰府で世話になったアントって人からも手紙を貰っていてね。これ見せたらヨミに会わせてもらえるって聞いたんだけど?」

「えっ?オヤジ?」


 オトがきょとんとした。


「ああそうだ。荷物をちょっと屋敷に置かせてもらっててねぇ。世話になってるよ。ありがとうさん」

「は、はぁ……」


 不思議そうにするオトだが、老婆の目が急にぎらついた。


「おや? ?」

「えっ? そうですけど?」


 きょとんとする瞬。


「知り合い?」

「ううん。初めて会う」


 どんな人か思い出そうとするが全然思い出せない瞬。

 すると老婆は瞬に近寄って……


むぎゅ


 おもむろに乳を揉んだ。


「へっ?」


 そのままむにむにと瞬の乳を揉む老婆。


「これは本物かい?」

「ちょっ!やめてください!」


 慌てて距離を取る瞬。


「ちゃんとした天然です!」

「ありゃま。じゃあ、やっぱり違う子なんだねぇ……」


 残念そうな老婆は困り顔で瞬の顔を見ている。

 慌ててツツカワが間に入る。


「ヨミなら遠征でトサ国に行ってますよ」

「ありゃ?また入れ違いかい?」


 困り顔になる老婆。


「シラミューレという化け物退治しに行ってます」

「……なんだって!」


 老婆が大きく目を見開いた。


「そりゃ大変だ。すぐに行かないと! ありがとね」


 そう言うと老婆は宙にふわりと上がっていき……


ボワァァ!!


 全身からアウルを噴き出してスーパーサ〇ヤ人のようになる。


「「「「「 えええええええええ!!!! 」」」」」


 全員が目の前の光景に度肝を抜かれる。

 本来、素でアウルを噴き出せるような人間を見たことも無いからだ。

 驚いている全員を尻目に老婆はそのままトサ国へと体を向け……


ドビュゥゥゥウ!!!


 あっという間に飛んでいった。


「「「「「……嘘……」」」」」


 それを見た全員が呆然としてしまった。


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