第147話 伯父と甥
一方、人間側の方は言えば……
「ヨミは相変わらずだなぁ……」
「全くですな」
「さ、どうぞ」
「おお、失礼します」
晶霊たちの悶着を見て少し気が和んだのか、互いに酌をするぐらいにはなっていた。
それを見てホッとするウス上皇。
元々柔らかい、優しそうなおじさんの顔をしているので微笑みを浮かべるのが似合う。
「うまく和めたようですな」
「全くです」
反対にそのダンディな顔を苦笑させるツツカワ親王。
ウス上皇はツツカワ親王に竹筒を渡す。
「どうぞ」
「伯父上、ありがとうございます」
そう言って竹筒を受け取るツツカワ親王。
忘れがちだが、この世界の酌はこんな感じである。
液体は全て細竹のストローで飲むのでこうなってしまう。
「良い部下をもったな。私は安心したぞ」
「ありがとうございます」
恐縮するツツカワ親王。
だが、ウス上皇は少しだけ寂しそうに言った。
「お前は……都に戻りたいのか? 」
「・・・・・・・・・・・・・・」
困り顔になるツツカワ親王。
(とうとう来たな……)
今回の遠征の最大の目的である『ウス上皇の動向』を探ることである。
これから起きるであろう戦いは熾烈を極めるだろう。
本来はウス上皇にとってツツカワ親王が所属するエーエン親王側と現東宮であるカンメイとの戦いには関係ない。
(だが、配下が問題だ)
ウス上皇の傍には『ウス四天王』と呼ばれた優れた配下が居たのだが、その内の二人が残っている。
(特にヱキトモ殿とモチナガ殿は厄介だ)
ヱキトモはヨルノース最強の武人の一人でもあり、相棒のシュンテンと共に武名の高い人物だ。
それには理由がある。
(珍しい二重能力の持ち主)
極稀にだが、能力を二つ持って現れる者がいる。
一つでも厄介なのに二つあるのでとてつもなく強くなるのだ。
(対抗できるのはナイシノスだけだろう)
簡単に倒せるような相手ではないので警戒するのだ。
(そして、モチナガ殿は政治では非常に優秀なお方、そしてアクサフ殿は後方支援を得意とされる…………)
政治力が高いタイプで有能なやり手官僚でもあるモチナガはウス上皇の後ろをサポートしていた。
また、アクサフは兵站や、武器の調達、土木工事などの戦争の準備段階で活躍する。
戦闘は不得手だが、こちらの方が脅威である。
特に恐ろしいのは……
(算盤勘定が上手いモチナガ殿は武力を安定させる)
散々タカツカサとコノエが好き勝手やって中抜きしまくっていたのに財政が安定したのもそこにある。
金銭の取り扱いが上手いので、必要なお金をきちんと工面していたのだ。
この辺に関しては現代人でも多々あることだが、頭が良いからと言って算盤勘定が上手いとは限らない。
もっと言うとトップがバカすぎて会社を傾けることは多々あるがその大半は金銭感覚にある。
(四天王の残り二人は居ないとはいえ、武力を行うには十分な二人が居る)
基本、金と兵隊があれば戦争は出来る。
南海に左遷されたとはいえ、決してウス上皇は終わっていないのだ。
「どうした? 少々顔色が悪いぞ?」
「いえ、何でもありません」
慌てて笑顔を見せるツツカワ親王。
すると、ウス上皇はにこやかに笑った。
「私にはわからぬ。私は戻りたくないからな」
「……えっ?」
意外な言葉にきょとんとするツツカワ親王をウス上皇は笑った。
用語説明
お酒
こちらの酒は超薄いのでアルコール度数が1パーセント未満です。
だから未成年が飲むのはOK。
絶対OKです。
法律上は無問題です。
なので決して突っ込まないように。
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